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詩ことばの森(83)「仙人の話」

仙人の話

小学生のころ
仙人にあこがれた
あれは   たしか
芥川龍之介の小説だったか
少年向けの本に
さし絵入りだった
内容はおぼえていないけど
仙人っていいな
と漠然と思ったのだ

自由でいて
すべてを知りつくし
不思議な力をもつ老人

仙人って   どこに行けば会えるのかな
お寺とか神社に行けば会えるのかしら
僕はひとりで出かけては
近所のお堂やお社をずっとながめていた
ながめていてあきなかった
そんな僕のあだ名を
友だちは仙人と言っていた

あれから大人になって
さすがに   仙人をさがしにはいかないけど
ある仕事仲間が   なにを思ったのか
仙人みたいだ   と僕を評したことがあった
そうか   僕はいつのまにか
しらずしらずのうちに
仙人になっていたのかな
なんて思ったりして
ひとり楽しんでいる

(森雪拾)


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