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親は親。子は子。

昨日はホワイトデーだった。

私は朝から稽古場に行かねばならず、ドカ弁は高校入試後の採点期間中は学校への立ち入りができないため休みだった。

朝、ちゃっかりを見ると、前髪は土曜日に美容院でカットしたばかりのぱっつん前髪に後ろ髪は清楚な感じのツインテールである。

服は深い紫色のカットソーに赤いチェックのミニスカート、黒い靴下を履いていて、AKB風のファッションを少しジェニー寄りに着崩した雰囲気に仕上げていた。

なんとも不思議な雰囲気でありながら、ちゃっかりはちゃっかりのセンスでより可愛く見える工夫を凝らすことには余念がない。

夕方帰宅したちゃっかりは、おじいちゃんからもらったシュークリーム、いちごタルト、チョコレートケーキを見て、1番可愛いいちごタルトを幸せそうに頬張った。あとの2つは夜のお楽しみらしい。

『ちゃっかり、彼からホワイトデーは何をもらったの?』

なんとなく聞いてみた。

すると。

おそ松さんの考察本を貰ったと嬉しそうに見せてくれた。

渡された表紙に書かれた文字に釘づけになってしまった私。

みんなセクロス!じゃなくてサンクス!

小学生男子は好きな女の子が大好きな『おそ松さん』の考察本をプレゼントしてあげたかったんだろうと思う。

綺麗な本で内容も面白そうである。

この表紙を見る限り、お母さんにはナイショで買ったんだろうと思うが、千円近い本をお小遣いから奮発した彼の気持ちを考えると、きゅんとくる。

『なんですかー!こんな本をプレゼントする男の子は‼︎』と言うお母さんもいるかもしれないが、私は純粋に『かわいい』と感じた。

ちゃっかりがまだ小学生なのにお付き合いしている彼がいるらしいこともはじめは驚いたが、特に過激なことをしているわけでもなく、学校で遊ぶだけの、2人だけのデートもできないカップルである。

両思いだということだけで幸せそうにしているのだから、何も悪いことはしていない。

目くじらを立てて、親がやいやい言い続けるのも違う気がするのでそっと見守っているだけでいいと目だけはかけている。

ここ数日、親の過干渉が原因で悲しい事件が相次いでいるが、親は親、子は子だということ、子は親とは別の人格の持ち主だということを忘れてしまう親はいつの時代もいるのだろう。

私が中学生の頃、とても綺麗な先輩がいて何故か私をよく可愛がってくれたのであるが、先輩のお母さんという人の行動は異常だった。

ずっと先輩を尾行しているらしいことは噂で聞いていたが、私がお家にお邪魔させていただき、帰るときになって先輩が途中まで送ってくれると言ってくれたので一緒に帰り道を歩いていると、電信柱の陰に先輩のお母さんが隠れながら付いてきていることに気がつき、本当に恐ろしかった記憶は今でもはっきり覚えている。

先輩は中学卒業後、家出してしまい、消息はわからなくなった。

我が子に執着しているような、あの殺気立った感じの先輩のお母さんの様子を見てしまった私は、先輩が1日でも早く親から逃げ出そうとしていた気持ちが理解できた。

美しくかっこよかった先輩は、今どうしているのだろうか。

我慢が爆発して悲惨な事件になるより、親から逃げた先輩の判断は正しかったのだろう。幸せでいてくれることを願う。

娘の成長を感じるたび、自分の青春時代をもう一度体験しているような錯覚を覚えるのは、女親子独特のものかもしれない。

『今日はお鍋にしてちょうだい!大根おろしはちゃっかりが手伝うから!』

少し大人びた横顔を見ながら、おかんは昆布だしをとる準備に入る。

娘たちにとっての私の役割は。

『ご飯係り』という立ち位置から見守っているおかんくらいでいい。
それくらいで、ちょうどいい。


#エッセイ #子育て



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