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破天荒Sonnar! 7artisans 35mm F/1.2の感想

皆さんこんにちは、うにょーん(giondoll)です。さて今回は安くてコンパクトな事で有名な7artisans 35mm F/1.2のXマウント版を使ってみた感想を書いていきます。

作例の大部分がお人形さんなんで苦手な人はブラウザバック推奨です。

レンズ界の禁忌を犯す

こんなレンズ買ってニチャァしてるオタクには改めて解説する必要は無いでしょうが、Sonnar typeの解放F値はF/1.5が限界とされてきました。過去に禁忌を破った有名なレンズとしてNikon SマウントのNikkor-S C 5cm F/1.4があります。発売当初は好評を納めたもののやはり解放の暴れっぷりや各種収差からNikon SPの登場辺りで陳腐化したと思われ、後続のNikkor  S 50mm F/1.4ではありきたりなDouble Gauss typeになってしまいました。

これより以前にも歴史に消えたF/1.5を越えようとしたSonnarの存在や、成功を収めていたSonnar typeのレンズで最も明るかったのがZeiss Sonnar 5cm F/1.5である事から、長らく「Sonnar typeはF/1.5が限界」とされていました。これ以降トレンドがRFからSLRにシフトした事もあり、バックフォーカスが十分に取れないSonnar typeはこれ以降数十年に渡って第一線から退いてしまいます。
90年代以降コンパクトカメラなどが台頭する事で光学系が小さいSonnar typeの利点を活かし徐々に存在感を取り戻していくものの、DSLRどころかバックフォーカスの短いMILCですら未だ交換レンズの主力は大口径化に有利なDouble Gauss typeが主流です。

過去にSonnar typeの親であるベルデレ博士を擁したZeissであってもSonnar typeの採用例は殆どありません。後輩のDouble Gauss typeであるPlanerが高級レンズの代表格の様に振る舞い、1世紀前はライカ判用レンズとしては廉価版であった筈のTessar typeが高級ズームレンズとしてTessar改めVario-Tessarとして台頭、存在感空気ながらも中望遠レンズのお手本として尊敬される大先輩Ernostar typeと異なり解放が暴れる古い性能不足のレンズとして歴史の闇に消えゆくかと思われました…

が!MILCの普及から爆発的に流行りだした懐古趣味、所謂「オールドレンズブーム」が全てを一転させてしまいます。今までのレンズの代表的価値観であった「高解像度」「美しいボケ」とは一線を画す「癖のある写り」を尊ぶ風潮は主にアマチュア層で一気に市民権を得る事になり、遂にPetzval typeなどの古典的なまでに古いレンズタイプを採用した新品レンズが発売されるまでになりました。その中で、表向きは「コンパクトでオールドレンズライクなお洒落高コスパ中華レンズ」としながら、実態は「Sonnar typeながら解放F/1.2を達成した珍妙レンズ7artisans 35mm F/1.2が誕生したのです。

Amazonページより。ガウスタイプじゃない(歓喜)
構成図がちょっと歪んでるのが気になる。

とはいえAPS-Cなんよな

Sonnar typeの珍妙レンズ、7artisans 35mm F/1.2ですが残念ながらAPS-Cまでの対応でライカ判には対応していません。無論明るさはF/1.2のままですが被写界深度はライカ判と比べりゃ深いです。まぁピント合わせしやすいと捉えますか(無理ある)とはいえ解放ではなかなか暴れてくれます。インターネット闇市Amazonで16000円で買える(2023年2月時点)レンズですから気軽に楽しみましょうや。

こちらは二代目。色々付いてくるらしい。

うにょーんが買った型落ち(デザインが好き)

操作感はどうなの?

よくは無いですね。最低限って感じでコシナ系のレンズの様な質感の良さや精密感、操作感覚の素晴らしさとは比較にすらなりません。また、私は戦前のLeitzレンズなんかで撮影していたので気になりませんでしたが、絞りにクリックが無い事はスチル写真を撮る上で不便に思う人も居るかもしれません。また動画で使うにしても絞りリングにダイレクト感が無いので「ピタッと止まらない」事に違和感を感じるかもしれません。これはフォーカシングリングにも同じことが言えますね。操作感から癖が強いです。

金属マウント。しっかりとした作りだね。


あ、そうそう。意外かもしれませんが金属マウントです。凄いですねこれ。私のX-S10君にはすんなり嵌ってくれましたがハズレ個体もある様です。こんな安物のレンズに高いカメラ壊されるなんて馬鹿馬鹿しいのでキツいと思ったら返品交換を検討しましょう。

デザインは良いけど…

レンズキャップが金属製の高級感ある仕上げとは言え被せというのは賛否両論ありそうですねぇ。個人的にはフィルターとかは使わないので特に問題はありませんでした。
黒の鏡胴に白文字で統一されたレンズは格好は良いですが絶妙に現在の設定を認識しづらいです。基準線も白ってのが厳しいですね。古のZoom Nikkorの様にカラフルにしろとは言いませんが、せめてSマウント黒鏡胴Nikkorのような差し色が欲しかった。まぁ自分で塗れば良いと言えばそうなんですが…刻印じゃなく印刷なのでまっすぐ塗れるか心配なんですよね。妥協案ですがシールでも貼ろうと思います。

とはいえ、格好良いのよね。

電子接点無し

…とはいえ、そんなEXIF情報見ます…?
まぁぶっちゃけ言うとこんだけ癖のある写りするんでF値以外の露出情報と描写見れば大体F値はわかります。
とはいえSNSの投稿なんかに撮影情報をよく併記する人は困るかもしれませんね。うにょーんも今回思い返すと自信が無いって「F/4ぐらい」とかぼかしてますし…

光学はやっぱり

基本的になかなかよく、片ボケなんかも無いです。ただコーティングは期待するべきではありませんね。また、このコーティングの弱さと純正フードが無いことが影響して逆光にすこぶる弱いです。

アンバー系のコーティング


絞り羽は10枚

ま、こんなレンズに現代的な写りを期待するべきではないですよね。感覚という点でいうと開放ではなかなかSonnar type的なやんちゃな写りをします。こういうのはDouble Gauss typeでは味わえませんね。このレンズは所謂絞りが効くタイプでして、F4辺りで周辺にモチーフがあっても困らない程度に、F8辺りでなかなかクッキリと写ります。周辺画質に関してはF/8でやっと安定するといった印象です。鉄道写真の様に画面端に主題を持っていく構図が多い場合は困るかもしれません。まぁお遊びレンズですのでそこまで熱心な記録撮影に用いる事は無いでしょうが。

作例

以下作例です。使用機材はすべて富士フイルムのX-S10です。フィルムシミュレーションを信じているのですべて撮って出しです。

X-S10 SS1/20 F/1.2(開放) ISO800
X-S10 SS1/3 F/1.2(開放) ISO400
X-S10 SS1/6 F/8 ISO400
X-S10 SS1/40 F/4ぐらい ISO800
X-S10 SS1/15 F/8ぐらい ISO2000
X-S10 SS1/6 F/1.2(開放) ISO4000

追記「コンパクトカメラライクな写り」

このレンズ、F/16に絞り切ると逆光の弱さとか回折なんかが相まってフィルムコンパクトカメラみたいな写りしますね。野外で絞り切って使うとなかなか面白いです。さすがはSonnarといった所でしょうか。

X-S10 SS1/50 F/16 ISO800
X-S10 SS1/200 F/16 ISO800
X-S10 SS/125 F/16 ISO800

さいごに

どうやって纏めりゃいいか思いつかないな。テンプレ文でええか…
U2万円で買える
面白レンズです。是非とも体験してみて下さい!

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