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コミュニティとDAOの未来 vol.2

Unyte Intern 田伏です。
前回に続き、第6回となる今回も「コミュニティとDAOの未来」について考察していきます。代表的なコミュニティとして、地域コミュニティやボランティア団体、企業内コミュニティに必要な要素や陥りやすいポイントをみて、具体例を確認していきます。

<こんな方に読んでいただけると嬉しいです>
・コミュニティを運営する予定があるが何をやればいいかわからない
・運営しているコミュニティをより活性化したい
・DAOを活用したコミュニティ構築に興味があるが、コミュニティについてあまり知らない
<3回分読んでいただけるとこうなれます>
・陥りやすいポイントを回避できる
・コミュニティ活性化に必要な要素を把握できる
・具体例の引き出しが増える

vol.2となる今回は、地域コミュニティ、ボランティア団体、企業内コミュニティについて、展開する上での必要な要素や回避すべきポイントをみた後、実際の事例で確認します。盛り沢山になっているので、是非最後までチェックしてください!


各コミュニティの特徴と陥りやすいポイントから、どのような要素が活性化につながるかを考察し、具体的な事例で確認していきます。

地域コミュニティ

 地域をもっと住みやすくしたいという想いを持ったメンバーで構成されるものです。地域のための自主的な活動だけでなく、日常生活でのふれあいや共同作業を通した信頼関係も育まれます。基本参加費はかかりません。地域の町内会、婦人会、子ども会、お祭り実行委員などが該当します。
 東京一極集中から地方分散の流れが出来つつあリますが、依然として地域の創生や活発化はホットトピックの常連です。特に地域コミュニティの喫緊の課題として、地域人口減少に伴うコミュニティの縮小や高齢化が挙げられます。これらを踏まえ、地域コミュニティ運営で陥りやすいポイントに以下の2つが考えられます。

陥りやすいポイント

1.参加者を地域住民に限定してしまう
 コミュニティの参加者をその地域住民に限定してしまうことで、潜在的な参加者のパイが小さくなってしまいます。特に少子高齢化が進んでいる地域だと、コミュニティ自体の活気や熱気の低下に繋がりかねません。

2.伝統を重視しすぎてしまう
 古き良きを重んじることは大切ですが、新たに呼び込みたい世代にとって魅力的に映らない取り組みになっている可能性があります。また昔と同じ伝え方で伝統的な取り組みを発信してしまうと、メンバーになりたいと思っている潜在的な参加者に魅力が届かないことも予想されます。

これらの課題に対しての解決策として、以下の2つが考えられます。

活性化に必要な要素

1.関係人口を増加させる仕組みを作る
 
オンライン上のプラットフォームを通して、地域住民だけでなく、そこから離れた場所にいる人も巻き込むことができます。具体的な事例を2つ紹介します。
 1-1. ネオ山古志村

 新潟県長岡市に位置し、14の集落からなる山古志村の住民の方々が立ち上げた、地域コミュニティです。200年もの歴史を持つ錦鯉産業で有名な長岡市公認で、ネオ山古志村では錦鯉をモチーフにしたデジタルアートをNFTで販売しています。

Nishikigoi NFTの1つであるCarp and Seasons(ホームページから出典)

このNFT購入者をデジタル村民と呼び、「村民」をオンライン上に拡張した新たな概念を生み出しました。リアル村民800人+デジタル村民10000人の新しいクニづくりを掲げており、1600人を超えるデジタル村民のうち約3割が実際に山古志地域を訪れています。このように、NFTを用いたプロジェクトを通して、住民800人だった集落の関係人口が増え、日本中から注目されています。

 1-2. common 

 東急不動産が運営している地域扶助アプリであるcommonを活用し、現在100以上の地域でコミュニティが展開されています。

機能一覧(ホームページから出典)


街での出来事や話題を共有する「地域SNS」のような側面に加え、日々の暮らしの中での困り事をご近所マッチングにより地域住民同士で解決したり、不用品や余ったもののシェアを行ったりする「コミュニティ内での助け合い」を通して、より良い街をみんなで作っていくというアプリです。住民だけで1から立ち上げなくても、このようなプラットフォームを活用することで、よりたくさんの人を巻き込んだコミュニティを形成することもできます。

2.若い人のニーズを捉えたコンセプトや取り組みを行う
 
伝統や特産品に対して、今までとは違ったスポットライトの当て方や切り取り方をすることで、今まで気づかなかった魅力や新たな発見があるかもしれません。具体的な事例を3つ紹介します。

 2-1. 戦国城跡巡り事業-可児市の乱-

 可児市の住民が主導となり行政、企業、NPOがサポートしているものです。明智光秀生誕の地としても知られており、美濃金山城や薬王寺、大小さまざまな古墳など歴史的価値の高い文化財が数多く存在する可児市において、2016年から月に1,2回開催されているイベントです。

イベントの様子(ホームページから出典)

叩かれても痛くないオリジナルのスポンジ刀を使い、簡単なルールで老若男女国籍問わず遊べるアクティビティを通して、子どもにとっては可児市の歴史に興味を持つきっかけとなり、大人にとってもより深い歴史への興味や地域への愛着が湧く機会となります。このイベントを通してチャンバラに興味を持った方に対して、住民がワークショップを行い、市のPR動画作成ワークショップや甲冑作り、城跡の整備などの運営に携われるよう促しています。

 2-2. 東町川コミュニティ

 Ramps株式会社と北海道上川郡東川町が町内企業初となるオフィシャルパートナーシップを提携し、展開している地域コミュニティサービスです。サブスクに登録すると、東川町の日常価値を体験できるイベントやツアーなどに随時参加できます。また、メンバーが地域に訪れた際に泊まることができる宿泊施設を、先日オープンしたforestgate daikanyamaも手がけた隈研吾さんが設計(2025年完成予定)されており、コミュニティメンバーや東川町の住民が出会い、集い、語り合い、共に何かを作り合える場所として提供されます。

 2-3. SASSEN

 地域コミュニティの活性化とは少し離れますが、伝統や昔の遊びの新たな捉え方の事例として、北九州市八幡東区にある風林火山武術道場で生まれたチャンラバを用いたSASSENが挙げられます。「怪我をさせず、楽しく武術を学ぶ」を信念とする道場の護身術から派生して生まれたもので、センサー類が内蔵された⻑さ約70cmの発泡ポリエチレン製の刀「SASSEN 刀」を相手(の頭部以外)に先に当てた方が勝ちとなります。

親子でプレイする様子(ホームページから出典)

SASSEN刀は衝撃を検知すると赤色に変化し、当たったかどうかの判定はスマートフォン(タブレット)が自動で行い、同時であっても誤差0.025秒まで正確に判定します。競技人口も150人(2020年度)から9000人(2023年度)まで増加し、年齢性別関係なくできる生涯スポーツとして普及しています。秋葉原では、月に1度大会が開催されています。

以上のように、地域コミュニティには、地域住民だけでなく企業と自治体が主導して展開する形態があり、その地域にしかない文化財や特色を新たな角度で捉えて、テクノロジーを掛け合わせることで、コミュニティや地域をより活性化することができます。

ボランティア団体

 営利を目的とせず、社会的なミッションに共感した人で構成されます。災害復旧やイベントサポートだけでなく、街の清掃や児童館ボランティアなど様々な内容にわたり、(多くは無償で)自主的に貢献活動を行います。

陥りやすいポイント

人が集まらない
 
ボランティアの募集を出しても、活動内容に適した参加者が集まらなかったり、そもそも応募の数が少ないといったことが起こりやすいです。この原因を深ぼると、2つの理由が推測されます。

 1. 心理的ハードルを感じて応募できない
  やってみたいという気持ちはあるが、活動内容が難しそうで自分にできるかわからない、という理由で応募を断念するケースがあります。内容に依りますが、初めての方へのフォローを明記していないことで、潜在的な参加者を逃してしまっているかもしれません。

 2. 活動指針が不明瞭である
 参加者がボランティア団体に求める代表的なものとして「自己充足」「ある特定の物事への貢献」があります。
  A.「自己充足」を求めている方:何か活動をすること自体が目標
  B.「ある特定の物事への貢献」を求めている方:自身の関心のある物事に対して寄与/貢献することが目標
 団体や活動単位で、どちらの方を対象にしているかがぼやけてしまうと、両者が混ざってしまい、参加者が気持ちよく活動できないことがあります。例えば、「川掃除ボランティア」を例に考えると、Aは休日や時間のある時に何か活動したいという目的であるのに対し、Bは環境問題に関心があり自然環境の改善に貢献したいという明確な目的があると捉えられます。両者が活動をしていく中で、「綺麗になった」という基準1つとっても、AとBで個人差以外の部分で異なる可能性は十分に考えられます。Bからすると「あそこにまだゴミが残っているし、話ばかりでもっと真剣に取り組んでほしい」とAに思ってしまう(時には伝える)場面も増えるかもしれませんし、Aからすると「細かい!もっと楽しく作業したいのに」とお互いにとって心地の良い場所とは言いづらくなり、結果として活動全体の活気や熱量が低下してしまいかねません。

これらの課題に対しての解決策として、以下の2つが考えられます。

活性化に必要な要素

1.研修などの説明/練習機会を設ける
 災害ボランティアや特殊な活動内容の場合、練習機会としてセミナーを開催することで、応募前の「自分にできるかな」という不安を払拭します。また複雑な活動内容ではない場合でも、活動についての説明会や大まかな概要を共有する動画や場を設けることで、お互いがスムーズに当日の活動に専念できます。具体例として、「ぼ活!」が挙げられます。

ぼ活!は、日本財団ボランティアセンターが運営するボランティアサポートプラットフォームです。掲載されている募集内容も、災害ボランティアから海のゴミ拾い、スポーツ大会の運営など多岐に渡ります。さらに大きな特徴として、ボランティアに向けた(事前)セミナーが月に5~10個ほど開催されています。ボランティアの募集は参加が決まりその準備として、またいつかやりたい活動の勉強としてなどさまざまな理由で参加できるものになっていて、初めてのボランティアで感じる心理的ハードルを下げる取り組みになっています。

12/13に開催されたマラソンボランティアについてのセミナー告知
(ホームページから出典)

またボランティアに役立つ記事も豊富にあり、ボランティア好きや新たな趣味として始める方が集まるプラットフォームになっています。地域の中で募集をかけたり自身で説明会を開くだけでなく、すでに人が集まりセミナーも開催している場所に掲載することで、ボランティアに向けた不安を払拭し、地域外から参加者を募ることができます。

2.コミュニティの方針を明確にする
 
参加者がコミュニティに求めるものが統一されるよう、コミュニティが提供する場としての目的を明確にします。具体的には「自己充足」or「特定の物事への貢献」どちらをメインに提供できるか、参加者に明確に伝わるように活動指針を再定義することで、メンバー間のコミュニケーションも滑らかになり、コミュニティ全体の熱量を高く保つことができるようになることがあります。具体例として、特定非営利活動法人 川崎町の資源を生かす会の「川崎ー仙台薪ストーブの会」が挙げられます。

 2007年に発足した団体で、萌芽更新率が著しく低下し早急に皆伐して萌芽更新を促すことが必要な、樹齢60年を超えた木を中心に、皆伐し萌芽更新を促すことで、雑木林を昔からの持続可能な形でバイオマス利用するための土壌を整える活動を月に3度行なっています。

活動中の写真(ホームページから出典)

注目すべきは、メンバーの1時間の活動に対して1つ配布される「きもち」という地域通貨です。これは薪1束と交換できることから、1きもち = 400円ほどの通貨価値がありますが、平成30年に「きもちは貨幣との交換には使用しない」と総会決定事項に明記されています。将来のためにきもちを貯蓄しておくメンバーがいたり、「きもち金持ち」のような表現も用いられており、環境改善に寄与するという「特定の物事への貢献」に矛盾することなく「自己充足」が実現できる設計が機能しています。従来「きもち」と書かれた10cmほどの角材がきもちとして流通していましたが、現在はデータ化されています。

以上のように、参加者が応募しやすい環境づくりを第一に考え、各ボランティア団体が独立して情報発信をすることもできますが、時にはプラットフォームを利用してみたり、コミュニティ内でのみ使用できるポイントを発行することで、よりメンバーが熱量を持って活動に取り組むことができる仕組みを設計することで、コミュニティ全体の活性化につながります。

企業内コミュニティ

 共通の趣味や関心を持つ、社内のメンバーで構成されます。年代や部署の垣根を超えて活発にコミュニケーションをとれる機会になり、近頃では社内サークルや部活の設立を支援する会社の取り組みも見られます。

陥りやすいポイント

1.参加/利用までの手続きがわかりにくい
 参加や制度を利用する際の申請手続きがわかりづらいと、コミュニティに参加/立ち上げるメリットよりも面倒臭さが勝ってしまい、「また今度の休みにやろう」で後回しになりかねません。

2.やりたい活動/勉強ができない
 参加した当初やりたかった活動や、知りたかった情報が手に入らず、熱量が下がって辞めてしまう場合があります。運営側が企画し準備することはもちろん大切ですが、参加者が求めるものとずれてしまうと本末転倒です。

3.がっつりまとまった時間を取られる
 
開催時間を長くしてしまうと、せっかくコミュニティに対してモチベーションが高いメンバーも参加のハードルを感じてしまいます。また仕事の内容に関係のある活動を業務後に開催すると、仕事の延長感が出てしまい余計に参加率が下がってしまいかねません。

これらの課題に対しての解決策として、以下の2つが考えられます。

活性化に必要な要素

1.明確なマニュアルを作成する
 
何をすれば良いか、各ステップが明確なマニュアルを作成します。例えば○人以上での申請で部活として認定し活動費が支給される場合、必要な書類は何枚でどこに提出するのか、いくらまで支給されるのか、わかりやすくまとめた説明が求められます。

2.アンケートなどでフィードバックを回す
 
ある程度運営が企画のベースを考えつつも1回ずつアンケートをとり、メンバーがどのような情報を求めているのか、やりたい活動はどういったものなのか、解像度を上げることでリピート率の向上が見込めます。

3.参加しやすい時間設定にする
 お昼休みや30~60minほどの単発など、隙間時間やサクッと参加できる時間設定にすることで、リフレッシュにもなり、参加のハードルが下がります。また同僚や上司、部下を誘っての参加もしやすくなるかもしれません。

企業内コミュニティの成功事例として、パナソニックの「バスオンラインサロン」が挙げられます。(以下紹介記事)

今や600人を超える大所帯となっているバスオンラインサロンの発起人で代表を務められている濵田さんはここまでを振り返り、コミュニティが成長した要因を大きく3つ挙げられています。

1. 関係性のある方には直接告知のメールを送ったこと
 コミュニティ開設前に、3ヶ月で6回の社内セミナーに加え、関係性にある方には告知メールを送ったことで、コミュニティ発足時には100人もの方が参加を表明していたそうです。他の方が抵抗を感じるであろう「直接メール」をたくさん送ることが大きく寄与したと分析されています。

2. 業務内容に近いテーマに絞ったこと
 パナソニック独自のシステムバスの機能はどのように開発されたのか、から始めて、バスルームの特注品の導入事例を現場担当者に説明してもらったり、コミュニティ内で発信された情報を見たあとすぐに使えるぐらい、仕事に直結した情報発信を心がけているそうです。開発者や営業職、グループの販売会社メンバーなど、参加者の属性は多岐に渡ります。またセミナーのテーマは、コミュニティ内でのアンケートをもとにニーズに沿ったものを設定しています。

3. お昼休みの30分などに開催し、対談方式で見やすいセミナーを心がける
 お昼休みに開催することで、時短勤務の方でも参加しやすいようになり、業務後や休日よりも参加するハードルが下がるよう工夫されています。また業務内容に近い情報が得られるということがわかっているからこそ、業務のスキマ時間に開催しても参加しやすいのではないかと分析されています。

バスオンラインサロンは企業内コミュニティの中でも珍しい成功例ですが、メンバー第一で内容や開催時間を考え参加しやすい環境を整えることで、部署や年齢の垣根を越えたコミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。

まとめ

 第6回となる今回のvol.2では、コミュニティの中でも特に地域コミュニティ、ボランティア団体、企業内コミュニティに絞って、活性化するにはどのような要素が必要なのか考え、具体例で確認しました。また共通して活発なコミュニティではイベントが月に1度は開催されている傾向にある印象でした。ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


 最終回となるvol.3では、コミュニティ × DAOはなぜ話題に上がるのか、お互いの長所がどのように交わるかを考えていきます。次回も是非チェックしてください!
( 不正確な部分のご指摘やご質問があれば、Unyte Intern 田伏にご連絡いただけると嬉しいです!)



 


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