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おもひでぽろぽろ②つながる準備[母が認知症になりました。]

普段、年末年始はほとんど帰省しない。
①「寒いのが嫌」②「列車が混んでいるのが嫌」③「お金がかかる」④「父は私を見ると理由もなく怒鳴る(成人してからは殴られなくなったが)」⑤「自分の友達がまったくいない」⑥「実家はすでに快適に宿泊できる環境ではない」⑦「Wi-Fiがつながらない」など。

以上が「帰省をしない理由」だ。④は父が亡くなったので問題なしになったが、あとの6つの理由が重なると結構しんどい。

ところが、だ! 2022年の大晦日に帰省することになった。
弟からの依頼だ。こんなことは滅多にない。
「家族(弟、弟の嫁、三姉妹の計5人)で宇奈月温泉に一泊旅行に行くから、その間、母親の面倒をみてほしい」というのが弟の頼みだ。

母はこの時点で、自分で食事もできるし、トイレにも行ける。歩くことも着替えることも問題なし。ただただ、記憶がなくなっていくようだ。初めてのことだから、「認知症になったぞ!」と言われてもすぐにはピンと来ない。

弟の話では2022年12月頃、急に認知症の症状が出た、らしい。
弟のことは憶えているが、弟の嫁のことは忘れてしまったようだ。

弟夫婦は結婚して約28年。昨日今日嫁に来たわけじゃない。居住の棟は分かれていても同居している。弟は漁師だが、嫁は結婚前からずっとお勤めを続けながらも母の様子を見てくれていた。認知症になってからは家の風呂にも入れてくれていたのに、すっかり忘れられて「あんた誰け?」と言われたらショックだろう。私の方が申し訳なくなる。

弟もおっさんにしてはちゃんと母の面倒をみている方だし、ぶっきらぼうだがやさしいタイプだと思う。離れて暮らす私は彼らに感謝しかない。私とは相性は良くない人たちだがめちゃくちゃ感謝している。

そんな彼らがささやかにも一泊温泉旅行に出かけている間、母をみていてほしいと言う。別に介助も必要ないが、一人にできないから私に頼んだということだろう。

理由もなく帰省する気はさらさらないが、頼ってくれるなら喜んで帰ろう。弟の頼みを受けて準備を始めたのであった。

心配事はただ一つ。
「実家はWi-Fiがつながらない」

正確にいうとauのアンテナが立っていないだけなのだ。帰省時にはストレスを感じたことは多々ある。とにかく、認知症の母と年末年始を過ごすために準備しなければいけない。

帰省準備の大きなテーマは以下の4つ。
その1:Wi-Fiを何とかしよう!
その2:新幹線(往復)の予約
その3:バスク風チーズケーキを用意せよ!
その4:作ったミートローフを食べさせたい!

なぜ、まず最初にWi-Fiがつながるか必死になって調べるかというと、もうすっかりスマホやインターネットに毒されてしまった現代人だからである。スマホとネットなしで半日さえ過ごせなくなっている。ああ、嘆かわしい。

元TBSアナウンサーの久米宏さんの言葉を思い出す。
「日本人はね、もう後戻りできないんですよ」

ええ、ええ、おっしゃる通りなんです。恥じながらも、現状では「持っていないと暮らせない」のですよ。
その3日間、どこかに出かけられるわけでもないし、テレビがおもしろいわけでもない。誰が年始の挨拶に来るわけでもない。自分の部屋も、自分の本棚も残っているわけでもない。
スマホなしで、認知症の母と2人きり……。

言っておきます。母は大好きですよ。でも、認知症の母とは会話が成り立つかどうか正直なところ不安です。この時点で、私の顔も名前も忘れている可能性もあります。怖いです、非常に。

さて、まず行ったのがauのお店。実家の住所を伝え、auの電波状況を見てもらう。
結果は無電波。何も飛んでないことを改めて確認。「NO au」である。それでも個人的にはauが嫌いではないので契約は続行。

そういえば、父の葬儀で帰省した際、実家にいた姪っ子たちは平気でスマホを操作していた。
弟にLINEで聞いてみたら弟一家は全員DoCoMoだという。別に、部屋によって電波のつながり具合が変化することもないらしい。

ということは、日頃使っているルーターをDoCoMoにすればいいのかな。
信頼のできる仕事仲間であるカメラマンS氏に相談したらすぐに解決した。
「レンタルWi-Fiというのがあって、1日いくらでルーターを貸してくれるはず。でも、年末年始はレンタルする客で混み合って、ルーターが出払う可能性があるから早めに借りて1ヵ月レンタルにした方が安心だよ」というアドバイスをくれる。これが大正解。

秋葉原にあるレンタルWi-Fiショップで薦められたSoftBankの強力なルーターを借りて、一気に心配事が減る。

結果的には後日、この強力なルーターのお陰で年末年始を快適に過ごせたので、S氏とレンタルWi-Fiショップのおねえさん、そしてSoftBankに大いに感謝したのである。

ごめんね、auちゃん(笑)。

(次回に続く)

母が認知症になりました。離れて暮らしているので、介護を任せている後ろめたさが常にあります。心配、驚き、寂しさ、悲しさ、後悔、後ろめたさ。決断と感謝と孤独。一人暮らし還暦クリエイターによる☞脱力記録です。不定期で綴っていきます。

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