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異なる意見や信念、信条、価値観を持つ者同士が共存できる社会に

富山県平和大使協議会 鴨野守代表によるスピーチ(全文)

2023年8月1日 富山市提訴後の記者会見

富山県平和大使協議会は、国連NGO(非政府組織)として世界平和のための諸活動を展開しているUPF(天宙平和連合)インターナショナルの日本支部であるUPF-Japanの富山支部として、2007年4月から富山市に事務所を置いて活動を展開してきました。

その活動の特徴は、長く「富山オープンカレッジ」を開催してきたことです。講演内容は生活・文化・歴史・教育・健康・宗教・芸術文化・政治・国際と幅広いテーマを扱い、地元の有識者が講師として協力してくださいました。第58回「オープンカレッジ」は令和3年5月、梶栗正義・UPF‐Japan議長が富山市スカイホールで講演。富山市教育委員会、富山新聞社が後援となり、170人が参加。その中には、藤井裕久・富山市長をはじめ、国会議員、地方議員14人が出席しました。第59回オープンカレッジは令和4年5月、富山県民会館で開催され、富山市教育委員会、富山新聞社が後援につきました。

私が同協議会の担当となりました2017年以降は、UPFが推奨しているアジアの平和を希求した「ピースロード」などの国際平和活動に注力してまいりました。

これは、2021年夏に開催された「ピースロード」で、新田知事が開会のあいさつをしてくださったものです。これが実現した背景には、県内10市の市長全員がピースロード実行委員になって下さり、富山県や県内の10市、北日本新聞社などが後援についてくださるなどの環境があったからです。そして、コロナ禍で日本中が大騒ぎをしている中、『「命を懸けて、生命を守る!」そんな人たちを全力で応援したい。』との開催趣旨に各界関係者が共感していただけたためと理解しております。

私たちの取り組みはささやかなものでありました。それでも地域社会にとって少しでも明るい話題を提供し、地域の人々が希望をもって生活できるように、と努力してまいりました。2021年は、議員を招いての市政報告会、県政報告会、懇親会やセミナー、講演会など数十の行事を開催してまいりました。私が担当してきましたこの6年間、苦情は一切ありませんでした。

しかし、昨年7月8日安倍晋三元首相暗殺事件以降、風景は一変してしまいました。それはまさに悪夢でした。

「事件の元凶」は宗教法人世界平和統一家庭連合にあるとばかり、マスコミが書きたてて、明確な根拠も証拠も提示しないままに、「反社会的団体」「反日団体」のレッテルを貼ったのです。

私の目には、侮蔑の感情を隠そうともせず、日夜容赦なく流されるニュース番組や新聞報道は、私たちを標的にする「空襲」のように感じました。家庭連合及び関係団体の会員は心身共に打ちのめされ、その家族や親せきなども不安といら立ちを禁じ得ませんでした。

裏付けのない、針小棒大な「被害」があったかのような報道に続いて、そのような評判の悪い団体と、「ズブズブの関係にあった」政治家が全国各地にいてけしからん、とマスコミが一斉に報道すると、驚き恐れおののいた政治家の人たちは、私たちとの関係をなかったことにしよう、私たちは何も知らず、だまされたのであるとの姿勢を露(あらわ)にしました。そのような過去を消し去りたい一心で、それまで良好なお付き合いのあった富山市の市長、市議会議員から退会届、辞任届が相次いで出され、議会からは「関係断絶」の決議までが可決されました。

さらに、この決議を受けて、富山市と同教育委員会からは、平和大使協議会の講演会及び関連のピースロードのイベントなど8つに上る「後援」取り消し通知がきました。県内で、こうした動きがあったのは富山市だけです。県内の他の自治体、他の団体、他の議員の方からこうした動きはありませんでした。

普段、少数派の意見や多様な意見を重視すべきと唱えるマスコミもまた、そうした動きに疑問を持たず、返って私たちの団体とのかかわりを厳しく追及する一方でした。地元富山で、そのような報道に異論をはさむ言論を見つけることは困難とも言えました。

果たして富山市や富山県内で活動する小さなグループを徹底的に排除する市長と、これに同調する市議会が目指す「幸せ日本一・富山」とはどのような社会なのでしょうか。そこに、私たちがいてはいけないというのでしょうか。

昨年7月8日、安倍元首相暗殺事件を契機として、1700を超える全国地方自治体で、家庭連合に対する決議が採択されたのは20数か所と聞いております。実際は審議のうえ、否決した自治体がほとんどなのです。

富山市長そして富山市議会が表明し、決議した「関係断絶」という選択が今も正しいと心から信じておられるのでしょうか。

富山市議会が大騒ぎをしていた昨年8月20日、米子市の伊木 隆司市長はご自身のFacebookで、次のような見解を発表されました。ご紹介させていただきます。

「私は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の米子市内の施設で開催された集会に、過去、2回、来賓として出席し、あいさつを行っています。

市長という立場は、私の支援者であろうとなかろうと、思想信条がどうであろうと、市民であれば話も聞くし、市政報告を求められれば行うこともありますし、それを私の政治姿勢としています。

悪質な商法が問題ということであれば、消費者契約法に基づいて、適切に司法の手続が行われるべきですし、そこに至らない相談が必要ということであれば、米子市役所内に消費生活相談室がありますので、そこでしっかり相談対応いたします。

また、仮に過去に犯罪歴があったとしても、社会復帰を支援する更正保護活動については、行政としても力を入れているところですので、過去の犯罪歴だけで差別することもありません。

教団側に過去、悪質商法のトラブルがあったことは認識していますが、現時点で国政や警察の側で何等かの措置が取られてない以上、米子市民の皆様の集会に出席することに問題はないと考えています。

そして、市長である以上は、これからもそうした基本的な政治姿勢は堅持していきたいと思っています」

富山県の人口100万人の4割を占める富山市の議会が、家庭連合及び関係団体との関係を断絶するとの、信じがたい決議は、私たちにこの富山市から、この富山県から出て行け、というのでしょうか。この富山県で、家庭連合及び関係団体が皆様にどのような甚大なる被害を与えたというのでしょうか。

「メディアがそう報じているから」

「弁護士グループがそのような会見をしたから」

皆様は、そうした報道や一方的な発表だけで富山市民、富山県民である私たちを断罪されるでしょうか。それを正当化できる、いかなる権利が皆様にあるのでしょうか。

私たちは、富山市と喧嘩をするためにこの訴訟を起こしたのではありません。もう一度、関係を修復したいと願うからです。

私は常々、政治家の皆様に申してきました。

「政治の『政』と言う漢字は、正しい父と書きます。父の役割は、家族を守るための正しい価値判断をすること。富山市民、富山県民の幸福のため正しい判断、行動をしてください」と。

先の富山市長選で、何度か藤井市長の講話をお聞きしました。大変、心にしみいるお話をされました。ご家族を心から愛し、郷土に誇りを持っておられる方です。生まれ育ったこの故郷を、もっと住みよい幸せな町にしたいとの強い想いで、市長に就任されたと理解しております。私たちもまた、同じ思いで市長選や県議選、県知事選などを応援させていただき、また普段の活動も、そうした気持ちで進めてきたのです。そのどこがいけないというのでしょうか。

私自身はこの一年間の騒動の渦中にありながら、社会に潜む新興宗教に対する差別感情、侮蔑感情を肌身に強く感じました。

今年2月に発売された月刊誌『状況』(※)に、幸福の科学学園高校を卒業した女性が、宗教2世問題を論じた記事の中で、こんなくだりが出てきます。

「社会には『馬鹿にして良い宗教』(新興宗教、カルト)と『馬鹿にしない方が良い宗教』(伝統宗教)があり、馬鹿にして良いものとされた宗教は、報道に対して自ら信頼を回復する手立てを持たない」

まさにマスコミによるリンチです。マスコミが性的少数者の人権を守れ、と叫ぶのであれば、同様に少数派の新興宗教信者の人権擁護のためにも、その先頭に立ってもらいたいものです。

今から40年以上も前、1981年国連総会で採択された「宗教又は信念に基づく不寛容又は差別の撤回に関する宣言」に拠れば、「何人も、いかなる国、機関、集団又は個人からも、宗教又はその他の信念を理由とする差別を受けることはない」と断言しています。

宗教又は信念に基づく差別は、人間の尊厳に対する侮辱であり、国際連合の原則を否定するものです。これを扇動する宗教ヘイトは違法である、と自分は徳永弁護士から学びました。

この度の提訴が、新興宗教に対する差別や偏見をなくす一助となるだけでなく、信仰や宗教を持つ人たちが尊重される日本社会となる契機にしてもらいたい。また、異なる意見や信念、信条を持つ人たちが差別されることなく、異なる価値観を持つ者同士が仲良く快適に共存できる社会になるための新たな一歩を刻む裁判となることを強く願っております。

ご清聴ありがとうございました。

※『状況』2023年冬号 
望月遥加「〝宗教二世問題〟の死角――当事者の視点から」

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