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コーヒー焙煎ROVO開発記 v188 安全 U.I. 法律

 今回はコード的な話とU.I.、そして業務用としての側面を書いてみます。飲料としてのコーヒー視点とはかけ離れてるけど、相変わらずごちゃごちゃ書いていきますー。太字部分だけでも読んで下さいよ。

安全装置コーディング

 さて、安全装置を組み込み終わった。ただでさえ状況分岐の多いコードに割り込みを数パターン練り込んで状態が倍増して2日もかかってしまった。うむ、予想の4倍かかる組み込み開発の誤目測法則が順調に発動してるね。 
 前回の動画撮影中に発生した失火問題であるがリカバリーしつつ考えたのは、やっと分岐をワンラインに収めたのにここから更に分岐して状態管理が増えるなあ、熱移動のタイムラグが問題になるだろうなあ、ということであった。しかしまあ半日もあれば割り込み条件を追加する場所や用意するフラグ、いくつかの関数で実装できるだろうと甘く考えていたがそんなことはなかった。単に元のコードの可読性の低さかもしれないけど。

 v188で安全装置の実装を進めてわかったことは、安全装置の設置にも機材のアナログ的理解が相当必要なことだ。センサーの位置や太さで反応が全く違い、安全装置を設置するのに熱というものがどういうふうに伝播するのかを理解する必要がある。

 我ながらのスパゲティコードを解読してどうにか副センサーを安全装置として実装したはいいけれど、センサーのタイプや位置で全く挙動が違う。1センチも離れると700℃位平気で違ってくるし、裸センサーと5ミリシースでは500℃まで上がるのが2秒と10秒くらい違う。特に必要なのは温度低下時の挙動で、いかに素早く失火状態を検知するか。その部分こそが一番センサー性能に依存する部分だった。

 実際の検知能力は以下の通りとなる。
 着火時800℃。イワタニの立ち消え防止センサーが失火後10秒前後で閉鎖。炎の斜め2センチほどの上部に固定した裸Kセンサーが200℃まで10秒、100℃まで15秒、5ミリシースが200℃まで45秒、100℃まで1分半という安全装置には中々衝撃的な数値となった。
 弱火にした時のセンサー温度で400℃以下なので、遮断温度を300℃とかにすると短縮できるのだが、着火のフィードバックに遅延が起きるし、動作のスウィートスポットも狭く、風などの温度低下にも弱い。設定方法も確実に炎に触れるようにセンサーを固定することが必要で、しかもそれは900℃の炎の中にセンサーを常時突っ込んでおくことになるので相当な素材への負担となる。炎の中に入れたセンサーは800℃程度で安定するが、1センチも外せば流入する外気に冷やされて100℃に下がりもする。
 イワタニの立ち消えセンサーの設計についてさすが良く出来てると関心する。

 ということでセンサーは2ミリ程度のシースに入った1000℃程度対応のセンサーを使用する必要がある。耐久性の高そうなまともなものは安くても8000円はするので、コスト的には4000~7000円程度の立消え安全装置のないコンロを用意するよりも、8000円のBoを使ったほうが火力も上がるし操作もシンプルにできるし差額が少ないという結果になった。

 そんなこんなプログラムコード実装の方は気の遠くなるような状態分岐数を縫い合わせてどうにか完了し、安全装置を設定する場合としない場合の2系統のUIにまとめることが出来たのだが、実験を重ねてみて環境に依存することがわかった。せっかく作ったので…とは思ったのだが、しばらくは立ち消え安全装置付きコンロでの稼働に絞って開発していく。ゆっくりとブラッシュアップをしていこうとは思っている。

U.I.コーディング

 安全装置とは別に毎バージョン改良している項目がある。ユーザーインターフェイスだ。すなわち機械と人間をつなぐ”界面”である。焙煎モニターZENの場合はドラム内の環境温度を人の視覚に伝達し、表示を進行させるする部分だ。ROVOの場合は温度を変えるための発熱装置にイレギュラーの指示を与える機能が追加される。

ZENの場合

 ユーザーが接するインターフェイス。
 初見でも迷わずストレスなく使えることを目標に。
 焙煎モニターZENは測定開始と1ハゼ時のマーキングのみなのでボタンは一つだけ、基本的には視覚的に情報を受け取りやすいかどうか、必要な情報が一番に掴めるかを考えて設計した。
 全部の情報を同じ大きさで並べると物理的には見やすいが、必要度の低い情報が常に押し付けられるのも気になるものだ。
 例えば温度表示が毎秒更新されるたびに黒く短くフラッシュするのだけれど、計測のリズム感をつかんでもらうために必要なところだけそのように毎秒の状態であるということがわかるように配置した。
 小さな数字の上下の記録なんかは重要度がとても低いが参考にはなるという重みで配置している。リアルタイムで必要な情報の視認性を上げ、遅れていい情報は切り捨ててもいいくらいの考えだ。
 また、慣れてくると読み取る必要がない情報というのもあり、そういうものは邪魔にならないように配置している。人間の同時処理には限界があるし、必要な割り込みと不必要な干渉は切り分けなければならない。頑張っているので助けてくださいとがなり立てる政治屋の就職活動のようなものだ。ちがうか。

 ZENの時はZENを発売前に一番使用して情報のウエイトを一番感じてきた自分の責任でもあったし、実際ZEN1.0の画面は本当に必要なものだけのシンプルなものだ。重要でない情報が重要ではない位置に配置されていることに気づいてもらえるとありがたいのだが、実際はどう感じているのだろうかとも思う。ZENをお使いの諸兄にはU.I.についての面でぜひ感想が頂きたい所。幸せになれてるんですかね?

ROVOの場合

 ROVOについても情報の重要度による表示ウエイトを練り込んでいるつもりだが、増えまくった物理ボタンとの連携もあってあまりに多情報になったので洗練まで試行錯誤中だ。

 今はグラフ表示の50℃以下を切り捨てている以外ほとんどZEN1.4と同じ配置だが、例えばプロファイル通りにストレートに焙煎する場合と焙煎中に操作介入する前提ではボタンの使い方が大きく違うし、今回の安全装置を使う場合もボタンの重要度が変わってくる。慣れる前と慣れてからでも見え方が違う。

 アクティブな項目はジャンルごとに連携して配置しているつもりでも、操作に慣れるまでは情報が多すぎると思えなくもない。
 最終的には見るべき情報も絞られてきて…というか見なくていいようにするマシンであって、殆どの操作が緊急用という側面もある。
 一応マニュアル焙煎にも対応する目標もあり、独自プロファイルを作るために必要な機能は直感的に配置したい。受け身ではいられない。

という感じで複雑にならざるをえない動的焙煎補助マシンROVOのU.I.はどうなっていくのやら。 

 ZENでの 温度 + 時間 + ドット のみの表示で 縦横線さえ排除した「DIVEモード」を使っている人はいるのだろうか。

で、だ。

 今、5枚目のテスト基板を発注してから到着待ちなんですけど、今後どれくらい作ればいいのか知りたいのですよ。
 自分の分はまあ出来ているというか、ロースターとして活動していく時にメイン機材にするつもりなので予備で数個は作るのですが、開発を表に出して以来、「いいね!」や「頑張ってください」と応援は頂いているものの、「欲しい」という方がいないので 見て楽しんでる感じ? という雰囲気も無きにしもというか。
 つまり細部の作り込みをどうするかは自分向けで十分ならそろそろ開発終了ということになるし、希望があれば自分で使う以外の部分で細部を詰めなきゃならないし、数が多ければそれなりの制作方法の変更が必要なのです。まあ部品の大量発注でパーツの仕入れ価格が変わってくるほどの需要はないニッチすぎるジャンルと思うんですが、制作方法を最適化する手順の一つなのです。
 ということでBASEの方に予約ページ(と言う名のニセクラファン)を作っておきます。よかったら予約しておいてください。ZEN1.3の時と同様で発送前まではキャンセル可能です。出品バージョンはたくさんありますが、中身はすべて同じです。クラファンのフリをした予約なので早く予約したほうが安いだけで内容には一切の差はありません。
 ただし、ガスを使う機材を制御するという点で一般的な家電ではありませんので、下の項目を読んで下さい。

法的部分

 譲渡対象は以下の条件に基づいて仕事で使う方に限らせていただきます。理由詳細は以下の通り。

対象者

ガス事業法(昭和二十九年三月三十一日法律第五十一号)」から指定されるガス器具使用対象としての「液化石油ガス法第二条第二項に規定する一般消費者等」から、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和四十二年法律第百四十九号)「第二条2 この法律において「一般消費者等」とは、液化石油ガスを燃料(自動車用のものを除く。以下この項において同じ。)として生活の用に供する一般消費者及び液化石油ガスの消費の態様が一般消費者が燃料として生活の用に供する場合に類似している者であつて政令で定めるものをいう。」とのことで、一般向けに販売するものではありません。業務用で、事業者間取り引きです。
 まあ、「主として液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関 する法律施行令(昭和43年政令第14号)第2条第1号」によるとガスを仕事で使う人というのは
(1)飲食物の調理(船舶その他経済産業省令で定める施設内におけるものを除く。)のための燃料として業務の用に供する者なんだそうです。焙煎研究が業務に当たるかどうかはその人次第かと思いますのでこちらでは判断しません。

制限

 また、今回開発中の器具が法の制限をかけられるものかどうかという部分については、「昭和四十三年政令第十四号 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行令」「液化石油ガスの消費量の総和が十四キロワット(ガスオーブンを有するものにあつては、二十一キロワット)以下のものであつて、こんろバーナー一個当たりの液化石油ガスの消費量が五・八キロワット以下のもの」ということで先日の記事で並べましたがBoで4.1kwなので抵触しないと考えています。
 また、ガスコンロ本体ではないのですが、「昭和四十三年通商産業省令第二十三号 液化石油ガス器具等の技術上の基準等に関する省令」に「調整器」の項目がありまして、これには「入り口圧力の下限値」などとあるように、調整弁を内蔵した配管部分を指すものであって、今回の装置が制限を受けるものではないと思われます。
 いずれにしましても事故等安全対策につきまして画一的な設定で運用に確実性を担保できるまでは立消え安全装置などのガスコンロ側で対処されているものを対象にした機器として開発していきます。

品質

 こちらの指定する機材との連携を前提としていただきます。これまでの開発記に書いた通りに誰でもシンプルに使えることを目的に作っていますが、それなりに機材への理解が必要になります。サポートに関してもこちらで把握できる範囲でないと足がかりがなくなるので組み合わせは限定させていただきます。

ということで今のところ業務用でお考えください。
 まあ小型焙煎機でのガス火による再現性と効率化を求めるロースターがどれだけいるのかわかりませんから、本当に勢いだけですので、とりあえず出してみると言うわけです。欲しいという人がいれば、なんですよね。

 使用にあたって気をつける点や、実際の運用方法などはこのnoteや動画などで出していきますので、使いたいという方はチェック願います。


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