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コピーしてアレンジするゲームデザイン

こんにちはuraconです。破局ダイスについて語るnote第三回は、ゲームデザインについてです。ゲームデザイン!と言っても色んな意味がありますが、ここでは単に「破局ダイスを作ったときこんなことを考えてました!」という程度の意味です。既存の面白いゲームの良い部分を分析して取り入れ、そこにアレンジを加えていくという考え方を実例に沿って紹介します。

受け継がれるゲームデザイン

コピーという言葉をあまり良いイメージを持たれないことがありますが、多くのゲームは既存のゲームの上に積み上がっていきます。

例えばクッキークリッカーというゲームはクリックと放置でクッキーをインフレさせていくゲームです。元々PCのゲームでしたが多くのモバイルゲームに参照され、今ではクリッカー系というジャンルにまでなりました。水槽を眺めるゲームアビスリウムや性格診断ゲームALTER EGOもこれに分類されます。ゲームシステムを踏襲した上で世界観やプラスαの要素などを加え、独自の面白さを確立しています。

他にも筆者が好きなのがパズル&モナークというゲームです。

これは、タイルを配置していき高得点を目指すゲームなのですが、カルカソンヌというボードゲームのシステムを踏襲しています。カルカソンヌは昔から多くのボードゲームファンに親しまれており、世界大会も開催されるほどです。パズル&モナークはこれを元に、UIや時間制限という要素を追加しモバイルで遊びやすいゲームにしています。

他にもドラクエビルダーズ ← マインクラフトやShadowverse ← HearthStone ← ShadowEraのように脈々とシステムが受け継がれている例もあります。このように、既存のゲームを参考にし、その上に何かを積み上げていくという手法は良いゲームを作る第一歩です。

破局ダイスのコピー元

破局ダイスの企画について、現代的な悩みを持っているファンタジー世界の住人という世界観は既に固まっていました(詳細は以前の記事で)。逆にそれ以外は自由に決められるので「世界観を活かせるイイ感じの何か」くらいしかアテが無い状況でした。

企画が難航していた去年の春頃、ダンジョンメーカーにハマりました。

ダンジョンメーカーは魔王となってダンジョンを作り勇者を撃退するゲームです。可愛いドット絵と奥深いやりこみ要素が人気を博し、当時マインクラフトによって不動だった有料アプリランキングを動かした程です。ローグライクという人気ジャンルをモバイルゲームに落とし込んでいる加減が絶妙だったので、これをベースに自分のゲームも考えていくことにしました。

とは言え、ダンジョンメーカーが武器や魔法でキャラ同士が戦うのに対し、破局ダイスはキャラ同士が恋愛するという世界観です。そのままでは取り入れられない部分が多いため、まずは面白さを分解していきます。

ローグライクとは何か?

ダンジョンメーカーの面白さを分解していくにあたり、似たようなゲームを集めてくるところから始めます。まずはSlay the Spireを見てみましょう。

Slay the Spireはデッキを作りながら敵と戦い、ダンジョンの奥を目指すゲームです。Steamで出た当初はbeta版ながらもユーザーから絶大な人気を得ており、先日出たNintendoSwitch版でもその勢いは衰えていません。実はこのゲーム、先に上げたダンジョンメーカーからも参照されており、インタビューでそのことに触れられています。

ゲーム内容について質問させてください。影響を受けたゲームなどはありますか?

GukHwan Kim:『巣作りドラゴン』、『Slay the spire』、そして『ダンジョン守り : 勇者の侵攻』に影響を受けています。

http://www.gamecast-blog.com/archives/65920056.html

たしかにゲームサイクルやUIなど、似ている部分が多いですね。Slay the Spireとそれを参照したダンジョンメーカー。この2つのゲームの同じところと違うところを分析するのは良さそうですね。

他にも、HearthStoneの一人用モードも参考にしました。

HearthStoneはデジタルトレーディングカードゲームの一種で、毎年多額の賞金が出る世界大会が開かれるなど、eSportsのジャンルとしてとても人気なゲームです。メインは対戦ゲームなのですが、同じルールを使った一人用モードも搭載しています。

一人用モードではランダムに配られるカードをピックしてデッキを強くしながらボスを倒していくのですが、これがまたローグライクとしてよくできています。対戦モードと同じルールで遊べ、さらにデッキビルドの楽しさも加えて一人用モードにするのは流石Blizzardですね。

さて、これらのゲームの共通点や相違点を考えながら、ローグライクの面白さを次の要素に分解しました。

①段階的な成長サイクル
プレイヤが成長していく要素が段階的にできている状態です。段階的というのは例えばダンジョンメーカーだと、
小:敵を倒すと駒が増える
中:ボスを倒すとダンジョンが大きくなる
大:ゲームオーバーになると次回からより強力なアイテムが使える
というように、頻繁に起こる小さな成長とあまり起こらない大きな成長が混在していることを指します。他にもHearthStoneだと
小:敵を倒すとカードが増える
大:3回おきに強力なカードが増える
などです。Slay the Spireは上2つを組み合わせたような感じですね。

「敵を倒すと強くなる」というのは多くのゲームでも取り入れられていますが、ボスを倒すと更に強くなる、ゲームオーバーになると強さの上限が上がるというように、成長が段階的になっているのが特徴です。強くてNewGameを取り入れてるローグライクは繰り返し遊べて中毒性がありますね。

②ビルドとシナジー
遊ぶ度にプレイヤが成長していく方向性を変えられる要素です。ダンジョンメーカーだと敵の行動を妨害してジワジワと倒す罠やユニットを増やすのか、とにかく素早く高いダメージを叩き出せるユニットで固めるか、などです。HearthStoneは元々が対戦カードゲームなので特にこの要素が強く、アグロやコントロールなど方向性が多様です。

ゲームの楽しさの一つをゴールに至るまでの道のりが複数あり、それを選ぶ楽しさとするとビルドやシナジーは最も重要な要素です。繰り返し遊べる楽しさ、というのはビルドの種類の多さと言い換えても過言ではないでしょう。

③ランダム
先に上げた成長やビルドがランダムな要素に左右されることを指します。例えばダンジョンメーカー/Slay the Spireでは、ランダムに配置されたマップから次の行動を選択したり、戦闘に勝つ度得られる報酬がランダムにいくつか提示されそれをピックします。

これは、全ての要素をいたずらにランダムにすれば良いわけではなく、あくまで上手くビルドできたときの楽しさが最大限になるよう調整する必要があります。何回試してもほぼシナジーが揃わないのも、毎回確実にお気に入りのビルドが作れるのも良くないです。どうもランダムにピックした3つの中から1つを選ぶというのが鉄板のようです。

ダイスによるバトル

さてローグライクの面白さが列挙できたので、これらを意識しながら破局ダイスを作っていきます。

まずはバトル部分ですが、これはダンジョンメーカーから大きくアレンジしました。というのも、破局ダイスが「見た目が勇者っぽいのに全然勇者らしいことをしない」ことが特徴のゲームなので、攻撃の応酬で体力を削るという典型的な見せ方を変える必要がありました。逆に言えば「段階的な成長」や「ビルドとシナジー」が感じられれば中身の見せ方は何でもいいので、これはTRPGを倣ってダイスで判定するようにしました。

ちょうど企画を考えていた時期に、友達とコーヒーを賭けてダイスを振る遊びが流行っていました。単に出目の数を競うだけの運ゲーなのですが、これが意外と盛り上がったので「誰でも理解できる明らかに公平な勝負のシンボル」としてのダイスの良さを再認識したというのもあります。

「段階的な成長」を実現するため
小:判定をクリアすると経験値が貯まる
中:経験値が貯まるとダイスが増える
というデザインにし、また普通の6面ダイスを集めていくだけでは「ビルドとシナジー」を感じられないので出目に偏りがあるダイスを何種類も出すようにしました。これらはマリオパーティや王への請願というゲームから着想を得ています。

Nintendo Switchならではの魅力が満載! 『スーパー マリオパーティ』のゲームモードやミニゲームの数々を紹介(1/2)より)

偏りのあるダイスは、宝箱などから手に入るお守りのピックと組み合わせるとより強力になります。例えば大納言というダイスは出目が①①①⑥⑥⑥です。これは通常のダイスと期待値は同じなのですがリスクとリターンがよりピーキーになっています。これにヒジキというお守り(1が出る度に出目の合計+1)を組み合わせると、リスクを軽減できます。

ダンジョンの配置

他には、ダンジョンの配置もアレンジしました。ダンジョンメーカーではゲームオーバーになるまでずっとゲームを続けることができ、どこまで行けるかハイスコアを目指すという遊び方ができます。

破局ダイスではゲームオーバーになったらやり直しという点は同じなのですが、100階を超えるとゲームクリアとなります。これは、
* キャラ同士の恋愛を描くというシナリオがあったため、シナリオの終わりを作りたかった
* ハイスコアを目指すよりも色んなキャラの組み合わせを楽しんでほしい
という意図からです。その代わりに、難易度は比較的高めに設定しています。遊びごたえを持たせたかったのと「平穏な日常を過ごしていたのに突如恋人が不機嫌になって破局する」という世界観を表現したかったという意図です。

強くてニューゲーム

プレイアブルキャラのアンロックと成長はほぼそのままコピーしました。ダンジョンメーカーではプレイ毎に魔王を選べ、それらは固有のスキルを持っています。スキルは同じ魔王で遊ぶほど成長していき、また選べる魔王の種類も徐々に増えていきます。

破局ダイスでは複数のキャラ同士の恋愛を描くという世界観だったため、そのままコピーできました。遊ぶごとにキャラごとの固有スキルが徐々にアンロックしていくのは、先の例であげた大成長サイクルに寄与します。

最初は一部のキャラでしか遊べず、徐々に遊べるキャラが増えていくという構造もそのまま取り入れました。これは、ガチャや課金要素などに関係してくる部分だったので、なるべくそのまま持ってきた方がユーザーの納得感にも繋がると思いました。

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以上です。

既存のゲームを分析し踏襲する考え方と、破局ダイスでそれをどう実現したかという話でした。次回は破局ダイスのボードゲーム版を作った話を書く予定です。


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