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『椅子とめぐる20世紀のデザイン展』

日本橋髙島屋で開催されていた『椅子とめぐる20世紀のデザイン展』へ。
椅子を中心に、食器等も出展されていて、20世紀のデザインを概観できるような展示だった。

第1章 20世紀の始まり アール・ヌーヴォー 1901-1918
第2章 デザイン革命 モダニズム 1919-1938
第3章 デザイン黄金時代 ミッド・センチュリー 1939-1968
第4章 斬新なデザイン ポストモダンへ 1969-2000
と、20世紀を4章に分けた展示構成。
モダニズム、ミッドセンチュリー、ポストモダンの各章には、「時代を象徴する部屋」という、インテリアコーディネートされた空間もあった。その部屋の中も合わせて全部で200点近い出展数とのこと。椅子のひとつひとつにキャプションがついているだけでなく、章解説や関連用語の解説も充実していた。
東京展は終了したけれど、今後3月〜5月にかけて大阪と名古屋の髙島屋にも巡回するらしい。見所たっぷりでおすすめなのでぜひ。

お気に入りの椅子や気になった椅子をゆるっと挙げていく。

全体を通して「生活の中で使う」目線で見ていたと思う。良いなと感じた椅子には、木の色味や質感を生かしたものが多かった。木の椅子はカーブが美しくてすごく好き。直線的であっても、体に触れる部分や角には丸みがあるようなやさしい印象のものが多く、家や暮らしに馴染む気がした。ということで、まずは木の椅子のお気に入りから。

カーザ・カルベットのアームチェア[アントニ・ガウディ,1900]

最初に出迎えてくれたガウディの椅子。すごくなめらかでまろやかで、流れに沿っていつまで見ていても飽きないと思った。チョコレートフォンデュが頭に浮かぶ。

T スツール[ピエール・シャロー,1927]

直線も曲線も本当に美しい。展示の中で一番のお気に入りかも。眺めすぎて満足したのか、好きな角度の写真を撮ってなくて残念。この椅子が似合うお家、かっこよすぎる。

アームチェア[エーリヒ・ディークマン,1926-28]

素朴でシンプル。直線的だけれど、角がまろやかでやさしい印象。気になる存在。

図書館椅子[水之江忠臣,1954]

シンプルかつ座りやすそうで興味をそそられた。図書館は長時間滞在する人や集中したい人が多いだろうから、 ”気にならない”椅子であることが大事なのかも。たとえば”目につくところがない”とか、”座り心地に不満がない”とか。ぜひ座ってみたい。

チェア699(スーパー・レッジェーラ)[ジオ・ポンティ,1951]

三角形の脚が好きでしばらく見つめていた。ふっくらしてきれい。そのやわらかさが、座面とマッチしていると思った。脚に寄った写真しか撮ってない…。

モダニズムあたりの直線的なデザインが好きだから、見た目としては、下の画像のチェア《ヒル・ハウス》や、デ・ステイルの椅子もすごく好きで。本やネットの画像で見ているとそれらに惹かれることが多い。けれど、実物を目の当たりにしてみると、座るにはあんまり落ち着かなそうだな、と感じた。感覚の違いが面白い。

チェア《ヒル・ハウス》[チャールズ・レニー・マッキントッシュ,1902]

ノルディック・モダンの「時代を象徴する部屋」に並んでいた椅子たちも良かった。大きな食卓を中心としたディスプレイが素敵。温かい食卓が目に浮かんで、生活の実感があった。

次からは、木以外で好きだった椅子を。

チェア3110(ドロップ)[アルネ・ヤコブセン,1958]

革。重厚でありつつ重厚すぎないというか、さりげなく、気軽に使えそうな雰囲気が好き。

寝椅子F10 [アンティ・ヌルメスニエミ/ヴォッコ・エスコリン=ヌルメスニエミ,1966]

一目見て可愛い!と思った。夏のビーチと青い海とトロピカルジュースが連想される。ローラーがついているとのことで、使い勝手も良さそうで素敵。海やプール、照りつける太陽が似合いそうだけれど、そのような場に出る習慣は私にはないからちょっと残念。

アームチェア[ミレイユ・リヴィエ/パオロ・パルッコ,1986]

下の画像でクローズアップした背もたれの機械っぽい部分が特に気になった。自転車のチェーンが使われていて、チェーンの巻き取りでシートの高さと背の位置が調節可能とのこと。すごい。キャプションには、座るためというより眺めて楽しむ椅子だと書いてある。座りにくいのかな。ますます気になる。

お気に入りの部分
チューリップ・アームチェア[エーロ・サーリネン,1957]

昔のSFの真っ白い壁の部屋とかに置いてありそう。色も形もとっても可愛い。展示最後の、椅子に座れるコーナーにも置いてあった。背もたれから肘掛けにかけてのカーブがつるつるすべすべで形も良くて、さわっていて気持ちよかった。

その、実際に名作椅子を体感できるコーナーがこちら。全部で6脚もある。もちろんすべて座らせていただいた。

ミース・ファン・デル・ローエ、アイリーン・グレイ、イームズ、フランク・ロイド・ライト。豪華すぎてたのしい。

イームズのプライウッドラウンジチェア(上の写真手前の椅子)の座り心地がとても良かった。背もたれが背中にぴったりフィットして包みこんでくれる。木の柔らかさを感じた。

ラウンジ・チェア(オットマン付き)[チャールズ・イームズ/レイ・イームズ,1956]

上の写真は「時代を象徴する部屋」のものだけれど、座れるコーナーにも置いてあったイームズのラウンジ・チェア。座り心地が完璧。最高。この椅子で読書したい、と思った。

まだまだ載せきれないくらいお気に入りの椅子がたくさんあったけれど、最後にお気に入りの写真を。パイプの家具が大集合していてとても好きな空間だった。「住みたい」と思ったけれど、実際に家に置く家具を考えるときには木を基調にしちゃうかも。でも憧れる。

時代を象徴する部屋Ⅰ バウハウスやフランスで活躍したデザイナーたち の一角

昔の名作家具には、現在も商品として売られているものが多い印象がある。家具は人間の体の近くや生活の中にあるから、同じ人間であるかぎり、心地良いものは時代が変わっても通用して選ばれ続ける、ということなのかな。すぐに移りゆくモードの方にも魅力があるけれど、目まぐるしく変わる世の中だからこそ、長く愛されてきたものや、今も昔も心地良いような“定番”のたしかさにほっとする。好きなデザインの家具を買って、長く大切に使える大人になりたいな。

展覧会公式HP
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/20thcenturychair/index.html


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