マガジンのカバー画像

童話、童謡、伝説、海外小説等

46
童話、童謡、伝説、海外小説等を元に創作の短編小説を書いています。
運営しているクリエイター

記事一覧

「継承」(元にした作品:サキ『スレドニ・ヴァシュター』)

「かみさま、かみさま、どうか僕のお願いを・・」  祠の中で寝ていた楠雄は子どもの声を聞い…

裏木戸 夕暮
1か月前

「夢」(元にした故事成語:『胡蝶の夢』)

 店主は掌に古びた本を持っていた。随分と日焼けしており、擦れて背文字は読めない。 「多分…

裏木戸 夕暮
1か月前
4

「百分の壱物語」(元にした作品:百物語の伝承)#Book Shorts

小夜子は枕元の電灯を消そうとしてやめた。 元々小夜子は、寝室を真っ暗にして眠るのが好きだ…

裏木戸 夕暮
1か月前
5

「百字物語」(元にした作品:百物語の伝承)

 役所から届いた封筒を面倒なので放っておいたら、会社帰りにワゴン車に押し込められて拉致さ…

裏木戸 夕暮
2か月前
3

「恋しくて」(元にした作品:万葉集 紫草のにほへる妹を憎くあらば 人妻ゆゑに我恋…

(ああ、今日も可愛い)  通勤路、和樹は毎朝ため息をつく。 (向こうも俺を見てる・・よな?…

裏木戸 夕暮
3か月前
4

「あの角を曲がって」(元にした作品:エドモン・ロスタン『シラノ・ド・ベルジュラッ…

 ベッドの傍のテーブルに封筒と500円玉。僕は500円玉をポケットに入れ 「じゃあおばあちゃん…

裏木戸 夕暮
6か月前
1

「ともだち100人いるかしら」(原作:童謡『一年生になったら』)

(大人の理屈っていうか、もう迷信だと思うんだわ。友達が多くて元気で明るい子イコール良い子ってのが) (それな) (本気で100人いたらめんどくせーな。3日に1回は誰かの誕生日じゃん) (多分昔はさー、連絡手段が乏しくて。口コミや噂が情報源だったりコネとかも大事で。だから友達つうか人脈って意味じゃねーの) (今の時代、情報ならネットでいいし)   (別に友達ゼロでもやってけるよな。いてもいいけど量より質だろ。数いても邪魔) (うちの親もさぁ、ママ友とか言ってキャアキャ

「百年」(原作:童謡『大きな古時計』作詞:保富康午)

 片付けをしていると古い作文が出てきた。  読み返した涼子は後悔に襲われた。  拙い字で残…

裏木戸 夕暮
7か月前

コトバアソビ集「ご大層な誤配送」(原作:作者不詳『とりかへばや物語』)

 山田真琴は自分のことが好きではない。  地味な外見と地味な性格と、並程度の頭と不器用さ…

裏木戸 夕暮
9か月前
2

「うさぎのぽんぽ」(原作:童謡『小山の子兎』)

   随分遠くで子守唄が聴こえる。  頭上からは怒鳴り声が拳のように振り下ろされ、体の何処…

裏木戸 夕暮
10か月前
1

「懐胎」(原作:マザー・グース『What are little boys made of,made of?』)

 岩本天音の葬儀には大勢が参列した。  棺には花と共に様々な感情が手向けられた。同情、思…

裏木戸 夕暮
11か月前

「放蕩息子の帰還」(原作:民話『浦島太郎』)

「た、太郎・・・?本当に太郎かい?」 「あーおかん、ただいまー。よっこらしょと」  10代…

3

「俺は迷子じゃねぇ」(童謡『いぬのおまわりさん』の二次創作)

「うっせぇ!死ねやクソババア」     この台詞を吐いた三年前の俺は、中学生で絶賛反抗期だ…

2

「最後の1分」(O・ヘンリー『最後のひと葉』の二次創作)

「へっへっへ、俺の勝ち」  チンチロリンとサイコロを振る老人と死神。  負けた死神がチッと舌打ちをする。 「憎ったらしい爺さんだ。今日はこれで終いだ、俺ぁ仕事に戻るよ」 「おおっと、お支払いを忘れずに」 「はいよ」  死神はクイっとやけっぱちに大きな鎌を宙に振るう。 「これでまた1分だな。毎度〜、また来いよ〜」  爺さんはニタニタと笑いながら死神を見送った。  冥界に戻った死神に同僚が声を掛ける。 「なんだ、またあの爺さんと 賭けてたのか」 「全く喰えないジジイだ。いっぺん