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アーバンデザインセンターとPlateau(プラトー)

■アーバンデザインセンターとPlateau(プラトー)

 国土交通省都市計画課は3D都市モデル(Plateau:プラトー)をリリースしました。すでに数十都市のまちが3D化されており、自由にカスタマイズ可能なプラットフォームちして各地でこの実務的な活用方策が検討されています。
 都市政策立案や各種のシミュレーションに極めて有効であり今後のさらなる活用が期待されます。
 一方、総合的なまちづくりのためのプラットフォームとして「アーバンデザインセンター」が設立されています。海外の主要都市では都市の詳細な模型を活用して、再開発事業等の誘導を図っていますがこれは事業者への指導とともに市民への情報共有・理解促進などの意味合いもあります。
 森ビルはこれに先行して1/1000の模型で都心部13区等の海外の都市にあるような都市のジオラマ(さらに3DVRも作成)を作成しており、各種開発の際に効果的に活用しています。
 我が国のプラトー(PLATEAU)は海外に先行したものであり、この都市政策や市民の合意形成促進のために活用されることを期待します。
 プラトーもアバンデザインセンターも一般的にはあまり知らていませんが不動産業界の方々にも広く知られてはなさそうです。しかし、少なくとも不動産業界はこれらの動きは常に見ておく必要があります。個々の不動産の仲介や建設には直接的には関係無いと思うかも知れませんが不動産の価値は単体では無くエリア全体の価値ですのでそれを高めるためのツールであり、仕掛けですので理解し、可能であれば自ら活用して欲しいものです。

■PTATEAU(プラとー)とは

 Project PLATEAU は、国土交通省(都市局都市政策課)が進める まちづくりのデジタルトランスフォーメーション(UDX)推進事業であり、3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化 のリーディングプロジェクトです。都市活動のプラットフォームデータとして 3D都市モデルを整備し、 そのユースケースを創出。さらにこれをオープンデータとして公開することで、誰もが自由に都市のデータを引き出し、活用できるようになります。
現在、すでに全国56都市で作成されています。
その要点をまとめてみますが詳細は国交省のHPをご覧ください。

 このプラットフォームを多様な視点から活用・事業化するために2021年には、「Business Challenge」と「Hack Challenge」の2つの形態のイベントが開催され、多くの関係者の知恵を集めることのしています。
「PLATEAU Business Challenge 2021」は、PLATEAUを活用したビジネスモデルコンテストです。3D都市モデルという新しいデータセットを活かした新しい機能・商品・サービスのアイデアをカタチにするための方法論を学び、ビジネスのプロトタイプを作り上げます。 https://asciistartup.doorkeeper.jp/events/122248
一方の「PLATEAU Hack Challenge 2021」は、PLATEAUを活用したハッカソンです。3D都市モデルを活かしたアイデアのプロダクト化にチャレンジできます。
 GISによる2次元による表示・解析ツールは約30年前からESRI社のArcGIS(アークジーアイエス)等により対応されてきており、国土交通省においても「地理空間情報」(道路、鉄道等のインフラ、土地利用、都市計画基礎調査データ(建物用途、高さ等)等を)を法整備の下に積極的に取り込んで多様な表示・分析がされてきました。もちろん、カーナビのような民間利用も盛んです、
 当時、業界で最も早く導入して使っていましたが、現在のような簡便で安価なものではなく、また、CPUの能力も低かったため、このような画像処理は大変でした。今では当たり前の鉄道駅の乗り換えアプリなども手作りで大変ですし、一図画(区の数分の一の範囲)だけで印刷するのに数十分もかかりました。しかし、インフラや土地利用を図で表現できたことは大きな革新でした。
 表示だけでも例えば23区のオフィスがどこにどのように分布しているかが一目瞭然です。オフィス仲介事企業等が賃貸オフィスビルの状況を把握していましたが中心部の賃貸オフィスのみであるためオフィス立地の全貌は分かりませんでした。
 また、新規道路の整備がどのように土地利用や人口配置に影響するか等も都市経済モデルを活用して地図に表現できました。
 今ではPCで誰でも使えるようになりました。
 Plateauはさらに3次元データを活用してより多様な分野での表示・分析が可能となりました。しかも、オープンデータとして誰でも使えるプラットフォームであるため、今後、ビジネスチャレンジなどにより活用ビジネスや都市政策立案が可能となると期待されます。
 都市全体では無いですが主要地域では建物のテクスチャーも表現されているため街並み、景観政策にも活用可能です。
 下記にアーバンセンター等について記載します。これはPtateauの利用者・活用分野は多岐にわたりますので、アーバンセンターに限るものではありませんが、まちづくり政策の策定、開発の誘導においてPlateauが非常に有効であるためです。

■まちづくり支援組織とアーバンセンター

 諸外国の大都市にはアーバンセンターという都市整備を推進・誘導する施設があります。そこには都市模型があり、一般市民(外国人も含む)が街並みを鳥瞰することができますし、職員による町の成り立ちやこれからの再開発等の詳細な説明を受けることができます。
 また、再開発を実施する事業者に対する誘導もこれによって行われます。すでに出来上がっている街並みを壊さないこと、調和すること、あるいは、同じものを再現すること等を具体的に指導するためにも使われます。

 我が国には、民営の課題解決型=未来創造型まちづくりのための公・民・学連携のプラットフォームとしての「アーバンデザインセンター(UDC)」(一般社団法人UDCイニシアチブの登録商標)があります(対象自治体全体の都市模型等はありません)。中立的に持続可能なまちづくりを推進するために、行政都市計画や市民まちづくりの枠組みを超え、地域に係る各主体が連携し、都市デザインの専門家が客観的立場から携わる拠点として、2006年に「柏の葉アーバンデザインセンター」が設立して以来、21拠点で展開されています。また、類似のまちづくりを支援する組織も多々あります。

 海外にはベルリン、パリ、ミラノ、ろんどん、上海、シンガポール、クアラルンプール、ハンブルグ等にあります。

<海外のアーバンデザインセンター>

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拡充や海外都市の施設が必要になると思いますので、海外都市の参考としてベルリンの事例を紹介します。

■ドイツのアーバンセンター


【City Models of Berlin:the permanent exhibition "Urban Development - Plans, Models, Projects"】
 ベルリン都市開発・環境局が運営している恒常的な施設であり、都市模型(1/500、1/1000、1/2000のスケールで全市、主要エリアがカバー)が展示されています。デジタル2D、3Dも用意されていますが、全体を一望できる模型で見せることを重視しています。
 DDR(旧東ドイツ)の時代1987年にベルリン市750周年を記念して、市民の為に1/500の市街地の模型が作成されました。1990年のドイツ統合以後、都市計画•開発はベルリンに重点が置かれ、その際、都市開発を進める上で都市模型は必要になり、1991年から都市模型の製作が開始されました。
 市民へのまちづくりへの理解促進のために開放しており、視察には、ベルリン市民のみではなく海外も含めて広く門戸をひらいていて各国の言語でのベルリン公認ガイドが案内しています(日本語は1名)。
 同時に事業者に対しての規制・誘導手段でもあり、都市の再生・再開発における設計コンペティション等において、応札するデベロッパーや建築家等の専門家に対して、ベルリンの全体構造を模型により視覚的に提示することにより、周辺の街並み等に適合した計画を誘導するために活用されています。
 1/500の模型はコンペ参加者(建築家)に貸し出し可能です。日本の様に単に高さ・容積率やデザインの方針のみではなく、具体的にファサードのあり方を規定しているため、アーバンデザインの誘導として機能しています。
 ベルリンでは長い歴史の中ですでに優れた街並みが形成されてきているため、新たな開発にあたってはそれらを壊さない、調和することが重要です。実際に街並みが存在しているだけに説得力があります。日本の都市は行政から「周辺(街並み)との調和が指導・条件」とされますが、調和すべき街並みが無いためどこと、どのように調和していいのか不明です。と言っては元も子もないのですが敢えて誘導するとすれば「今後、街並みを形成するにあたって調査すべきと言われる核となること」でしょう。

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■インフォ・ボックス【InfoBOX】


 1991年のマスタープラン作成後、東西ドイツ統合の象徴的として、ポツダム広場再開発事業が実施されましたが、この事業の理念からインフラのシステムまで、模型・図面、CG等で広く紹介する仮設のビジターセンターです。仮設と言っても事業完成まで存続し、写真にあるようにシンボリックな素晴らしいたてものです。ポツダム広場(Potsdamer Platz )に建設(1995年~2005年)され、ダイムラー・クライスラー社、ソニー、ドイツ鉄道、ドイツテレコムなど広場に関係する企業の共同事業体により運営されました。赤い印象的な施設はベルリン市の「工事現場観光」という新しい観光スタイルを生み出し、国内各地から再開発の参考のために多くが訪問しています。プロジェクトの経緯や完成図・模型等の展示や関連資料の販売等を行い、屋上には周辺を見渡せる展望台があります。
 私が訪問した2013年にはすでに取り壊されていましたが、新たな再開発エリアに同様の趣旨の「フンボルトセンター」が設置されていました。


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【フンボルトセンター】

 ロイセン王宮(フンボルト・フォーラム)は第二次大戦後に共和国宮殿としてガラス張りの近代建築として再建されましたが、残念ながら、それはアスベスト問題で解体されてしました。これをさらにかつての王宮(フンボルト•フォーラム)の姿として2014年より再建工事(完成後は博物館や図書館が設置される予定)が開始され、そのための情報センターとして設営されました。当プロジェクトの経緯や模型等の展示や関連資料の販売等が行われており、多くの市民や観光客が訪れていました。

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■地域の資産化を図るまちづくり支援センターの設置


 国土交通省と東京都では、2016年当時、世界都市・東京などの成り立ちや都市開発の変遷、また未来図を一元的に体感できる場を設けること、日本の都市の魅力を発信し、インバウンド需要の取り込み、都市開発の海外展開につなげるため、また、東京オリンピック開催も念頭に置いて「シティ・フューチャー・ギャラリー(仮称)」を検討していました。これは海外に向けて東京や日本のプロジェクトや都市を紹介する機能が中心で、肝心な都市政策面での支援・誘導機能があまり重視されていないように思えます。建設場所や運営主体等が決まらずペンディングになっているようです。

 かつて、青島都知事時代の臨海副都心開発の見直しが行われましたがその際に建設中のまちづくりを披露する「都市博(世界都市博覧会)」がバブル後でもあり中止されましたが、これは本当に残念でした。何故か、開発にアレルギーなメディアや有識者が挙って反対しましたが、これこそ、必要な取組でした。
 海外の都市の視察においては各施設の担当者から何故、世界の東京にまだ無いのか、と問われ、これから是非良いものを創って欲しいと期待されたものです。

 国内でも関連の類似組織はありますし、主要デベロッパーも大規模開発に当たっては周辺地域も含めて都市模型等も駆使してアピールしています(森ビルは都市模型等により現在でも活用しています)
 まちづくり支援センターは新規開発、再開発等も含めて、地元からの理解はもちろん将来に亘って地域の資産化に有効ですので、早急に適切な運営体制も含めて東京での設営・運営が求められます。

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