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♡今日のひと言♡草野心平


~「こわれたオルガン」(1968)

草野心平(1903‐1988~福島・詩人)
「かえるの詩人」として知られている。
中国広州の大学に在学中、詩誌「銅鑼(どら)」を創刊。帰国後の昭和3年アナーキスティックな心情を蛙に託した第1詩集「第百階級」を発表した。
独自の生命感・宇宙観をもつ詩に特徴がある。詩集「蛙」「絶景」「日本沙漠」など。23年「定本蛙」で第1回読売文学賞。62年文化勲章。


「ごびらっふの独白」

  るてえる びる もれとりり がいく。
  ぐう であとびん むはありんく るてえる。
  けえる さみんだ げらげれんで。
  くろおむ てやあら ろん るるむ かみ う りりうむ。
  なみかんた りんり。
  なみかんたい りんり もろうふ ける げんけ しらすてえる。
  けるぱ うりりる うりりる びる るてえる。
  きり ろうふ ぷりりん びる けんせりあ。
  じゆろうで いろあ ぼらあむ でる あんぶりりよ。
  ぷう せりを てる。
  りりん てる。
  ぼろびいろ てる。
  ぐう しありる う ぐらびら とれも でる ぐりせりや ろとうる  
  ける あり  たぶりあ。
  ぷう かんせりて る りりかんだ う きんきたんげ。
  ぐうら しありるだ けんた るてえる とれかんだ。
  いい げるせいた。
  でるけ ぷりむ かににん りんり。
  おりぢぐらん う ぐうて たんたけえる。
  びる さりを とうかんてりを。
  いい びりやん げるせえた。
  ばらあら ばらあ。


 (日本語訳)

  幸福といふものはたわいなくっていいものだ。
  おれはいま土のなかの靄のような幸福に包まれてゐる。
  地上の夏の大歓喜の。
  夜ひる眠らない馬力のはてに暗闇のなかの世界がくる。
  みんな孤独で。
  みんなの孤独が通じあふたしかな存在をほのぼの意識し。
  うつらうつらの日をすごすことは幸福である。
  この設計は神に通ずるわれわれの。
  侏羅紀の先祖がやってくれた。
  考へることをしないこと。
  素直なこと。
  夢をみること。
  地上の動物のなかで最も永い歴史をわれわれがもってゐるといふことは
  平凡ではあるが偉大である。
  とおれは思ふ。
  悲劇とか痛憤とかそんな道程のことではない。
  われわれはただたわいない幸福をこそうれしいとする。
  ああ虹が。
  おれの孤独に虹がみえる。
  おれの単簡な脳の組織は。
  言わば即ち天である。