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仏ロマン主義文学の入口~ヴィクトル・ユーゴー


18世紀末から19世紀前半にかけ、ヨーロッパを中心として「ロマン主義」という芸術の流れが生まれます。

それは、ルネサンス以降の理性偏重、合理主義などに対して感受性や主観に重きをおいた一連の運動であり、形式を重んじる古典主義に対立するものでした。

ロマン派はルソーの個人主義や初期ゲーテらの「シュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)」を継承しており、恋愛賛美、民族意識の昂ぶり、中世への憧憬といった特徴を持ちます。

その熱狂的な感情の高揚は、近代の国民国家形成を促進し、さまざまな芸術分野に及びました。

音楽ではベートーヴェンが古典派からロマン派への橋渡しをし、その後にシューベルト、ショパン、ワーグナーなどが活躍しました。

文学ではドイツのグリム、イギリスのバイロン、ロシアのプーシキン、そしてフランスではユーゴー(1802-1885)がロマン派として著名です。

ユーゴーは古典主義の演劇を批判し,ロマン主義の文学運動に理論的な支柱を与えました。

さらに1830年には,ロマン派戯曲の典型である「エルナニ」を上演し、その後にロマン派が栄える契機をつくりました。

ユーゴーの代表作は、日本で舞台や映画でも広く愛されている大河小説「レ・ミゼラブル」(1862)です。

相次ぐ革命や戦争によって国民が貧困に陥り、権力に虐げられていた時代を背景に、圧政からの自由と解放がドラマチックに歌い上げられています。 ⇒「レ・ミゼラブル」に続く

この後、19世紀中頃になると、文学の系譜はロマン主義に対立するかたちで「写実主義」(リアリズム)が主流となります。さらに、自然科学の客観性と厳密性を取り入れた「自然主義」へと発展していきます。
⇒自然主義の入口・フローベール「ボヴァリー夫人」に続く


人生最大の幸福は
愛されているという確信である。
自分のために愛されている、
否、もっと正確には、
こんな自分なのに愛されている
という確信である。

The greatest happiness of life
is the conviction that we are loved
– loved for ourselves, or rather,
loved in spite of ourselves.

ヴィクトル・ユーゴー(1802- 1885~フランス・詩人、小説家、政治家)
ロマン派大河小説「レ・ミゼラブル」の著者として知られる。七月王政時代からフランス第二共和政時代にかけては政治家としても活躍。他に「ノートルダム・ド・パリ」など。



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