首都ブカレスト散策
2024/2/2
あからさまに距離を置いた私に驚いたのか、その若者は急に親切になった。
彼の荷物は貴重品とヘッドフォンだけ。
その様子を見る限り、どうやら家が無いのは本当らしい。
事情はわからないが、この宿から離れられないみたいだ。
半日の゙散策を終えた印象として、まず治安はそれ程悪くなさそうだ。
それどころか、街人は道を尋ねてもバスで降車場所を聞いても、皆親切に教えてくれる。
それでいて過度に干渉してこない。
無駄に大声を出す人がいない。
信号がある。
横断歩道を渡ると車が止まってくれる。
お釣りをちゃんと貰える。
所謂、“世界標準としての常識”が保たれている様子だ。
エジプトから来たので尚更、そのギャップに驚く。ストレス無く歩いていられる。
その反面、今ひとつ気分が晴れない。
曇天のせいか、はたまた緑の無い冬の木々のせいか。
無機質で巨大、そして重厚な建築物の数々は迫力があり、それを見ることは貴重な経験でもある。
しかし、そこから想像される社会主義国時代の生活を考えると、つい気持ちが重くなってしまう。
宿に戻り、この国について改めて考えていたところ、1人のルーマニア人男性を思い出す。
彼とは昨年6月にラオスで出会い、当時、一緒に旅をしたオオヒラ君と3人共に同部屋だった。
そのマリウスさんはプログラマーとして、主に東南アジアで生活しながら仕事をしているので、ここブカレストにはいないだろう。
しかし、せっかく彼の母国に来ているのだ。
『たとえ会えなくても、挨拶はしておこう』
そんなつもりでメッセージを送った。
すると、直後に返信が届く。
なんと彼は今ルーマニアに帰国していて、しかも首都ブカレストに住んでいる、と…!
既に夜中、日付が変わる頃のやり取りだったが、マリウスさんは快く私を受け入れてくださり、翌日会う事になった。
まさか今、ここで再会できるなんて…!
こんな偶然があるから旅を続けられる
旅をやめられない
部屋のドアを開け
バルコニーで冷たい空気を吸い
ふと空を見上げる
一面を覆っていた雲はいつの間にか散らばり
その隙間には微かに星が輝いていた
2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。