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本日のウニ:タコノマクラ⑥初期〜中期原腸胚

受精後24時間経ったタコノマクラの胚です。ここでも前回の胞胚から一気に時間が経ってしまっていますが、1日中見張っているわけにはいかないので少し間が空いています。植物局側、つまり体の後方から原腸が少しだけ陥入し始めています。また、これに先立って将来骨片を作る一次間充織細胞が胞胚腔内にたくさん移入し歩き回っています。バフンウニの胚に比べて中が非常に見やすいですね。さらに、お気付きの読者はだいぶ”玄人”ですが、体の表面に色素細胞が見られると思います。これはタコノマクラやカシパン類の胚に見られる特徴で、二次間充織細胞由来の色素細胞がすでに外胚葉領域に侵入しています。通常の正形ウニの胚では原腸がかなり陥入してその先端から二次間充織細胞が移入してくるのですが、不正形ウニの胚では原腸陥入前から二次間充織細胞は外胚葉領域を走っていって分化してしまいます。そのため、この写真のように原腸陥入していないにも関わらず色素細胞が見られる状況になっています。

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3時間ほどさらに経過して中期原腸胚です。原口から一層の細胞層が陥入しているのがクリアに見て取れますね。それと同時に、動物局側、つまり写真の上側前方の外胚葉が肥厚しているのがわかると思います。この領域はanterior neuroectoderm, 前端部神経外胚葉といって、将来ウニ幼生の脳を作る領域になります。中期原腸胚の時点では神経細胞の分化は見られませんが、将来神経になる細胞とならない細胞(増殖を続けるか非神経細胞の運命をたどる)かを区別するDeltaというタンパク質が発現する時期です。Deltaはその受容体であるNotchと共同でLateral-inhibition, 側方抑制というシステムにより、Deltaを発現している神経細胞のとなりが神経細胞にならないという仕組みを発動する分子になります。この影響で、anterior neuroectoderm内のセロトニン神経はかならず飛び飛びで存在しています。

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