連載小説【フリーランス】#4:風の強い日
「電話で予約した原ですが」
「少々お待ちください」
事務所のデスクでインターフォンのコールを受けた幸代が、エントランスまで出迎えに行くと、紺のスーツにビジネスリュックを背負った正和が立っていた。
「原さんですね、お待ちしておりました。このたびは当スペースをご予約いただき
ありがとうございます」
幸代が今も働く「CLOSET」は、イベントスペースとはいっても、限りなくマンションの一室に近い物件だ。ワンフロアに三部屋と給湯室、シャワールームとトイレのついた間取りはミニ