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ウエストランドでライフハック

いよいよ冷え込みが厳しくなって毎日の起床が遅れ続けている。
洗面室には専用のエアコンがないので、朝一番はとにかく寒い。

苦肉の策として、洗面室にBlutoothのスピーカーを設置し、
ラジオや動画の音声を流しながら身支度をすることにした。

身支度のためだけに起きるのではメリットがないので
娯楽という餌で自分を釣って
ベッドからおびき出そうという作戦である。

パウダールーム・プレイリストの条件はいわゆる作業用、
「ながら聴き」ができるコンテンツであること。
内容を真剣に聞いたりトークをしっかり楽しみたいものでは
身支度がはかどらない。
かといってどうでもいいものでは自分を騙せないので
少なくとも自分が満足できる面白さは備えている必要がある。

結果、何を再生するかを選ぶのに時間がかかりすぎて
前よりも起きるのが遅くなるという始末だった。

そこでたどり着いたのが、ウエストランドの「ぶちラジ!」である。
ウエストランドが自主的に配信しているこのトーク番組は
2011年から週一で更新を続けるネットラジオ。
なにせ12年分のストックがたっぷりあるから当分は悩まずにすむ。

OPのジングルは、「人の幸せって憎いじゃないですか」という河本のコメントを電気グルーヴの石野卓球がサンプリングしたもので、これがまず癖になる。
おまけに井口の声は大きく、滑舌もテンポもよいので、
歯を磨いたり水を流したりしていても聴きやすい。
このキラーコンテンツを見つけたときは石油を掘り当てた気分だった。

聴き始めてみると、これが予想外の、ためになるラジオだった。
というか、ためになることしかない。
中でもレギュラーコーナーの一つである「ののしり先生」は金言の宝庫だ。
ののしり先生こと井口が、リスナー(通称ソルジャー)から送られてきた
自虐的なダメエピソードに対して「即興でののしることで、
その失敗をチャラにしてあげよう」というコーナーであるが、
下手な自己啓発系の精神論よりもはるかに実用的で
何より元気が出る。

たとえば2019年12月26日の回に寄せられた、あるソルジャーの投稿。

「将来を考えられません。まわりは自分の進みたい道を決めているにもかかわらず
自分だけ何も決めていないどころか、明日さえも不安定です。(中略)
この生活に満足してしまい、もう働きたくないです、絶対に。
ののしり先生、私に楽な就職先を紹介するか、一生遊べる金をください」

それに対する井口の回答がこちら。

「とりあえず色々やってみるしかないんだよ。
とにかくまず一歩を踏み出してみて、何かやってみて、
合わないなと思ったら変えていきゃいいんだから。
何もやってなかったら、何もわかんないんだよ。
何もやってないから、向いているものも苦手なものも、何もわかってないんだよ」

一瞬で目が覚めた。
同じようなことは、どこかで誰かに言われた気もするけれど、
ここまでストライクに響いてきたことはない。
特に「合わないなと思ったら変えていきゃいい」を言えるのがすごい。
一気にハードルが下がってすぐにでも始める気になってしまう。

あるいは2022年5月5日の回での投稿。

「弟に仕事を紹介してもらった者です。(中略)自分で仕事を決められない上に、北海道から大阪に転勤する弟に着いて行って、仕事までもらう、
意志薄弱な僕を罵って、自分の意志である【働かない】を貫き、
同居する弟のすねをかじる勇気をください」

井口の回答はこう。

「お前は意志はないけど、行動力はあっぱれだよ。何とかなるよ。
自分で仕事を決められないっていうやつは、動かないもん。
でもお前は北海道から大阪に行ってるわけでしょ? 
そういう行動力があるんだから、それをもっと生かしていくというか、
誇っていけよ」

弱っているときだったら泣いちゃうかもしれない。
これが慰めならきれいごとにも聞こえるかもしれないが、
「クズへの説教」という体裁の反動で響きまくる。

とりあえず何でもやってみるのも、まず自分ができていることを肯定するのも、
井口自身が実践してきたことだからこそ説得力があるのだろう。
漫才の毒舌に人間らしさが滲み出ているのと同じで、
自分が本当に思ったり感じていることをベースにしているので
言葉に真実味があって信じられる。

ぶちラジを聴いていると、井口の喋りに対する河本の合いの手や間合いが
ウエストランドの漫才にそのまま重なってくる。
こうしたやり取りの蓄積が、あの漫才を育んだなあと思うと、
明日も頑張って起きるしかない。





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