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ビブレがイオンに変わったよ。

ビブレがイオンに変わったよ。

妹からのラインに少し寂しさを感じた。

変わっていく地元は、地元と呼んでいいのだろうか。

今回はそんなお話。

地元の効用

一人暮らしを始めて一年と半年。料理したりバイトしたり、いろんなことで悩んでは挑戦失敗の輪廻で生きる生活は学びが多い。

僕自身、一人暮らしを始めていろんな感情に出会いいろんな自分を知ることができた。

…その反面、気づけば心身ボロボロになっていたりする。

普段なら家族が教えてくれる自分の違和感に自分で気づかなければならない生活は結構むずいのだ。

っとまぁ、体も心も限界になりそうな時、実家という応急処置を取る。

甘え?

うるせえ俺はお前みたいに強くねえんだばーか

で、いついつ帰るーみたいな連絡を妹にしたとき来たのがこのメール

「そういえばビブレがイオンに変わったよ。」

変わっていく、僕も地元も。

ビブレとはごくごく普通の商業施設だ。

これと言ってうまい飯もなく、ゲームセンターも微妙。あ、プラモデルとカードゲームの品揃えはよかったっけ。

それでも好きだった。

特に何か買うわけでもなく、目的もなく。100円でゲームして、ただ本屋を回って、CDショップを回って。疲れたら一階のミスドで黒糖ポンデリングを食べて、親の買い物について行き、帰る。

ただそれだけの場所。そんなビブレが親会社イオンの看板に変わってしまったらしい。

数ヶ月ぶりに行った元ビブレ、こと現イオン。

ミスドは継承されていたものの、スタバやマクド、くそでかい無印にカフェが併設された大垣書店。

見事きらきらに生まれ変わった僕らのビブレは新規の顧客層を確保し、イオンとしての転生に成功していた。

ビブレだけではない。

実家近くの生鮮館は、その4倍のデカさはあるであろうスーパーに倒され、跡地には学生マンションが。

3連コピペしたに違いないあの家々は更地となって売り出され、あの食堂はいつの間にか薬局になり、地元のあいつは酒と女で忙しい。

少し寂しいなと思ったのも事実。

自分がそこにいた証みたいなものが消えていくのは少しチクチクするのだ。

テセウスの船

ところであなたはテセウスの船という逸話をしっているだろうか。

平たくいうと、テセウスさんの船を修理するにあたって、あれやこれやの部品を変えて、全部品が入れ替わった時それはテセウスさんの船と言えるだろうか?みたいなお話。

地元に戻った時まさにそんな気分になったのだ。

地元はある。あるけど、それを構成する部品は入れ替わっていく。それでも僕は地元を好きでいれるだろうか。

親があの町から引っ越した時、僕はあの町によることはあるのだろうか。

あの人が変わってしまっても僕は愛することができるだろうか。

そんなことを思って地元を散歩しているとあることに気づく。

空気が懐かしいのだ。

ここでいう空気は雰囲気ではなく、物理的な方。airの方。

夏を塗り替えた秋の風。特にうちは秋と言うより冬の一部みたいな鋭さがある。

それを皮膚から、鼻から感じた時、少しだけ安心した。

地元は変わっていたが、やっぱり地元は地元なのだ。

そこに気づけただけでも僕はまだこの町で回復できる。まだここを地元だと愛することができそうだ、と感じた。

たかが建物が消えたりできたりするだけで地元が地元でなくなると感じてしまったのはちょっと浅はかに感じた。

表面を見て変わってしまったと落胆するのは安直すぎるのではないか。

僕らの懐かしいはその程度か…?

変わっていくものにこそ目を向けたい。

懐かしさはもっと深いところ、いや案外浅いところにあるかもしれない。

変わっていくものの中で変わらないものを見つけること。そしてそれを愛すること。

時代の移り変わりが激しすぎる今の時代。

変わっていくものにこそ目を向けたい。そして変わらない何かを愛し続けたい。

テセウスもそんな船が好きだったんじゃないかな。



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