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功利主義と数学

功利主義とは、より快感を得られて、
より不快を避けれる
行為をするべきという主義だが、
それを実践するには複雑で
煩雑な計算が必要である。

例えば、行為Aで10の快を得られ、
行為Bで5の快を得られるとしても、
行為Aを延々とし
続ければいいという訳ではない。
何故なら、強い快は強い慣れがあり、
行為Aは何回も繰り返すと、
得られる快が少なくなっていくからだ。
それは$${\dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{4} + \dfrac{1}{8} …}$$といった
等比数列に似ている。

なので、今回は、あらゆる快感を
生じさせる行為は行為をする回数で
等比数列的に生じる快感が
減少すると仮定した上で、
功利主義を実践する時、
どの様な計算が必要なのかを考える。

まずは1人の人物が
1つの次元の行動コストを
持つと仮定して考える。
この時の功利を選ぶ問題は
下記の様に表される。

「個体Aはコスト$${C_A}$$を持ち、
Aはn回目の行為$${a_1}$$で$${\dfrac{S_1}{{P_1}^n}}$$の快感を得る。
Aはn回目の行為$${a_2}$$で$${\dfrac{S_2}{{P_2}^n}}$$の快感を得る。
……Hは快感単位である。
Pは麻痺指数であり、正の実数である。
Sは快感量で実数である。
行為にはコストという正の実数の値があり、
コストxの行為yはy=xCと表される。
行為はそのコストを
個体のコストから引いて行われる。

この時、個体Aのコストを使って
最大の快を得る各行為の選択回数は何か?」

麻痺指数というのは、
行為を繰り返し行う事で
得られる快感量が0に近付く現象が
どれだけ早く進むかを
等比数列で示した値である。

不快は負の快感量として表される。

そして、「Aはn回目の行為$${a_1}$$で
$${\dfrac{S_1}{{P_1}^n}}$$の快感を得る」時、
n回の行為$${a_1}$$で得られる快感量は
$${S_1}$$ $${\dfrac{{P_1}^{n+1}-{P_1}}{{P_1}-1}}$$と表される。

では、変数に色々な数を代入したり、
より具体的にして、実際に計算をしてみる。

「Aさんはコスト10を持ち、
Aはn回目のゲームプレイで
$${\dfrac{5}{1.5^n}H}$$の快感を得る。
ゲームプレイのコストは2。
Aはn回目のカラオケで
$${\dfrac{3}{1.25^n}H}$$の快感を得る。
カラオケのコストは3。

この時、Aさんは何を何回すれば、
最大の快感を得られるか?」
この問題を解くにはまず、
各行為を何回した時、
どれくらいの快感を得て、
どれくらいのコストがかかるかを
表にまとめる必要がある。

まとめたのがこれだ。
ゲームプレイ 1回 3.33H コスト2
       2回 5.55H コスト4
       3回 7.03H コスト6
       4回 8.02H コスト8
       5回 8.68H コスト10

カラオケ   1回 2.4H コスト3
       2回 4.32H コスト6
       3回 5.85H コスト9

この時、ゲームプレイの回数と
カラオケの回数を選択して
コストが10以下で快感(H)が最も大きい
選択を調べればいい。

片方の回数を決めると、
もう片方の回数も決まるので、
片方をどれくらいすると、
もう片方はどれくらいできて、
その快辛はどうなるかを表にまとめ、
最も快辛が多い、
回数の組み合わせが答えとなる。

その組み合わせ表がこれだ。
・ゲームプレイ1回 カラオケ2回
合計コスト8 合計快感量7.65H
・ゲームプレイ2回 カラオケ2回
合計コスト10 合計快感量9.87H
・ゲームプレイ3回 カラオケ1回
合計コスト9 合計快感量8.02H
・ゲームプレイ4回 カラオケ0回
合計コスト8 合計快感量8.02H
・ゲームプレイ5回 カラオケ0回
合計コスト10 合計快感量8.68H

なので、ゲームプレイ2回、カラオケ2回が
最も功利的な選択である。

ここで注目して欲しいのは、
・ゲームプレイ1回 カラオケ2回
合計コスト8 合計快感量7.65H
・ゲームプレイ2回 カラオケ2回
合計コスト10 合計快感量9.87H
この2つの関係である。
この2つは行為の回数が
どちらも前者より後者の方が多いので
必ず合計快感量は後者の方が大きくなる。

この時、後者を上位選択、
前者を下位選択と言い、
ある選択に上位選択が存在する条件は
基準にしている方の行為、
今回ではゲームプレイの方が
その選択よりも多くできる事である。

言い換えると、
行為をする人物のコストの余りが
基準にしている行為の
コスト以上である時である。

・ゲームプレイ1回 カラオケ2回
合計コスト8 合計快感量7.65H
では、コストが2余っていて、
ゲームプレイのコストが2なので、
その条件に当てはまる。

また、この功利計算で特筆するべきなのは
全ての組み合わせを総当たりで
地道に計算するしかないという事だ。
二次方程式みたいに
解の公式がある訳じゃない。
上位選択がある選択を省いたり、
数学的手法を使えば
多少、絞れはするだけだ。

そして、今回は行為の種類は
たった2つで計算したが、
実生活では無数にあるし、
行為の種類が一つ上がっただけで
選択の組み合わせは莫大に増加し、
コストの種類も色々あって、
労力コスト、金銭コスト、時間コストなど
複数の次元のコストを考えると、
膨大な選択肢がある事になる。

次はコストが複数ある場合、
特に2つある場合で考えよう。
先の問題をアレンジする形でこう書く。
「Aさんは労力コスト10と
時間コスト12を持ち、
Aはn回目のゲームプレイで
$${\dfrac{5}{1.5^n}H}$$の快感を得る。
ゲームプレイの労力コストは1、
時間コストは3。
Aはn回目のカラオケで
$${\dfrac{3}{1.25^n}H}$$の快感を得る。
カラオケの労力コストは2、
時間コストは1とする。

この時、Aさんは何を何回すれば、
最大の快感を得られるか?」

今回も同様にゲームプレイの回数から考える。
すると、こうなる。
・ゲームプレイ1回 カラオケ4回
合計労力コスト9 合計時間コスト7 
合計快感10.41
・ゲームプレイ2回 カラオケ4回
合計労力コスト10 合計時間コスト10 
合計快感12.63
・ゲームプレイ3回 カラオケ1回
合計労力コスト5 合計時間コスト10 
合計快感10.41

まず、コストが複数種類あると、
1つの行為の回数を決めた時、
もう1つの行為が何回できるかを
わかるまでに時間がかかる。

「ゲームプレイの回数を1回とした時、
労働コストでは
カラオケの回数は4回が上限、
時間コストでは
カラオケの回数は7回が上限。
よって、カラオケの回数は4回が上限」
という風に、各コストでの
上限の回数を求めて、
最も低い上限の回数が、
その行為の数での
もう片方の行為のできる回数となる。

次に考えられる、問題の拡張としては、
「行為aをn回した時、
($${\dfrac{S}{P^n})H - (\dfrac{S'}{P'^n})H}$$の快感を得られる」
といった、行為に付随する
不快の導入だろう。

行為に付随する不快とは、例えば、
運動は快感と不快が同時に発生しているが、
回数を重ねると、身体の疲労で、
だんだん、不快が
快感を勝る事が挙げられる。

また、食事も食欲が満足する、
なくなるまで食べるという訳ではなく、
満腹による苦痛が食欲を
上回った時であるので、
先の数式で例えられるだろう。

これで問題を作る。
「Aさんはnつのリンゴを食べると、
$${\dfrac{2}{1.5^n}H-\dfrac{0.5}{1.25^n}H}$$の快感を得る。
何つ食べるのが最も多くの快を得られるか」
これはnに1から数を代入してって、
快感量のピークを探せばいい。
代入したのがこれだ。
n=1 0.93,n=2 1.5,n=3 1.83,n=4 2.02,n=5 2.12
n=6 2.17,n=7 2.18,n=8 2.17
一度、値が下がると二度と増えないので、
n=7、りんごを7個、食べるのが
最も幸せだとわかる。

次は行為の種類を増やし、
コストを導入する。
「Aさんは労力10を持っている。
Aさんはnつのリンゴを食べると、
$${\dfrac{2}{1.5^n}H-\dfrac{0.5}{1.25^n}H}$$の快感量を得て、
労力2をを消費する。
Aさんはnつのステーキを食べると、
$${\dfrac{4}{2^n}H-\dfrac{1}{1.125^n}H}$$の快感量を得て、
労力3をを消費する。
何を何つ食べるのが
最も多くの快感を得られるか?」
まずは、それぞれの行為が
何回した時にどれくらいの
快を得られるかを表にする。

りんごn=1 0.93H 2C,n=2 1.5H 4C,
n=3 1.83H 6C,n=4 2.02H 8C,n=5 2.12H 10C
ステーキn=1 1.11H 3C,n=2 1.32H 6C,
n=3 1.11H 9C
(Cは労力コストの単位)

後はコストが10以下で快が
最大になる組み合わせを探せばいい。
組み合わせ表はこうなる。
りんご1つ ステーキ2つ 8C 2.25H
りんご2つ ステーキ2つ 10C 2.82H
りんご3つ ステーキ1つ 9C 2.94H
りんご4つ ステーキ0つ 8C 2.02H
りんご5つ ステーキ0つ 10C 2.12H
なので、りんご3つとステーキ1つが
功利である。

今回はここまで考えたが、
この功利計算はとても深堀ができる。
より拡張し、一般的で
現実に近い問題にしたり、
より効率的な計算方法を求めたり、
色々できる。

「あらゆる快感を
生じさせる行為は行為をする回数で
等比数列的に生じる
快感が減少すると仮定した」
これも仮定に過ぎないので、
本当にそうなのか、一部がそうであり、
そうでない場合が存在するのかと
考察の余地がある。

数学に詳しい方はぜひ、
深堀してもらいたい。
 

 

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