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職業病デビュー。

突然だが、首が今、すっっっごく痛い。

動かすどころか自分の頭の重さすら耐え難い。冬物マフラーをひっぱりだしてぐるぐると首に巻き、即席コルセットにしてやり過ごしている。

思い当たる節は多々ある。先日引っ越しをしたのだけれど、ワケあって業者さんではなく自分で結構な量の重たい段ボール(主に書籍)を持って階段を上がり下がり、何度も繰り返した。
翌朝、心配だった腰も腕も痛くなくて安心したが、もしかしてあの時の疲労が今になって首に到達したのかも……年を重ねると筋肉痛は遅れて来るっていうし、というのが予想①。

予想②は、マットレスか枕。実は首の痛みは今に始まったことではなくもう1ヶ月程たびたび痛い。特に起床後の首まわりの痛みが尋常ではない。「寝違えたのかな?」と思ったが、いや、こんな毎日寝違えるか?しかも向きは関係なく、首から肩にかけての全体がガッチガチなのだ。寝る前にマッサージやストレッチをしてみたけれど、ぜんぜん効果なしで痛みは徐々に増すばかりで今日、まさにそのピークを迎えている。

上向けなくてうがいできない。
下向けなくてごはん食べられない。
後方確認できなくて運転できない。
重いもの持つとその緊張が首に伝わり激痛となり牛乳パックすら、持てない。そんな調子でちょっと動くたびに「ギャッ」と雄たけびをあげている私。
体のどこかが痛い状態って、ほんとにすべてにおいて難儀である。



「ひとことで言うと、ひどい寝違えか、ひどい肩こりですね」

整形外科に行って診てもらったところ、そのような診断が下された。すでに首をまっすぐにできなくてピサの斜塔のようになっている私の頭部を医師が後ろからぐっと持ち上げて、ゆっくりと上へ下へ、左へ右へと、首の筋肉をほぐしていく。
「痛い痛い痛い!!!!」と思わず叫んでしまうが
「はい、痛いけど我慢して~」と平然と言いながら、なおも医師は私の首をいじり続ける。医師いわく、痛いからと言って固まったままでは悪循環で、多少痛くても、無理のない程度にはリハビリの意味で首を動かさないといけならしい。
「枕が原因かと思って変えようと思ったんですが…」と相談すると、「いや、使い慣れた枕なら今は変えないほうがいいですね」と言われた。
レントゲンを撮ってみてもらうと、私の首の状態は昨今よく耳にする「ストレートネック」の状態。特に、私はなで肩なのでストレートネックや肩こりになりやすい骨格なのだそうだ。

はて、私って、なで肩だったのか。

と今更それを知る。横からみた頸椎と胸椎の写り具合で、本来なら見えないはずの部分が写っている私の状態はつまり「なで肩」と認定されるそうだ。もしかして、たびたびブラの紐がずり落ちるのはそのせいだったのかと長年の不便が思わぬところで解明されて少し得した気分になる。
治療にはならないが痛み止めとして飲み薬と湿布を処方されて帰宅した。

数時間後、飲み薬か湿布かどちらの効果かわからないが痛みはだいぶマシになり、痛みが遠のくと自然と首も動かせるようになった。動かせない原因が痛みのせいだったなんて、考えてみるとなんだか不思議なものである。
そして、ようやく冷静さを取り戻しふと理解した。

これ、職業病ってやつじゃないのか?

ストレートネックの原因は現代人ならではの、「スマホの見過ぎでうつむきがちになること」がひとつにあげられているが、私は日頃、さほど携帯を長時間眺めない。
ただし、である。私は日頃、めちゃくちゃうつむいている。そう、漫画や絵を描いているときと、こうしてパソコンの作業をしている時間である。
座り作業なので負担がないように、絵を描くときも机にかぶさっては描かず、台をつかって画面を斜めに立てて制作するように気をつかっていた。
ところがこの頃、冒頭述べた引っ越しの関係で作業机がまだ整っておらず仮の机で、しかも地べたに座椅子で制作していた。
原因はそれだ。
特に昨日までは締め切りが続き、夜寝る間際まで書いていた。

ああ。
今まで私は、「ものを書く(描く)仕事なのに腰痛も肩こりもないのはきっと、自分の作業量が皆さんに比べてまだまだ全然足りてないからなのだろうなあ」とか思っていたけれど、何気なくでも日頃気をつけていた対策が、ちゃんと機能していたことが実証されたのである。

ならば早く部屋を片付けてちゃんとした机と椅子で書かなければと思いつつ、調子にのってまた重いものを持ち痛みがぶり返すのが怖いので、ひとまずは今、部屋の中でいちばん首に負担のない高さバランスの鏡台にパソコンを置いてこの文章をしたためております。


(記事のトップ画像は、長野にある地獄谷野猿公苑にて撮影/宇佐江みつこ)



今週もお読みいただきありがとうございました。
本当は少し違う内容を書こうと思っていたのですが、想定外の首の痛みでてんやわんやしたので、先にその顛末を書くことにしました。
30代も後半になると体のあちこちに変化や発見があり大変だけれどちょっと楽しくもあると思う今日この頃。
今回書こうと思っていたことも、また近日書かせていただければと思います。

◆次回予告◆
『美大時代の日記帳⑬』

それではまた、次の月曜に。


*宇佐江みつこの日常小話。その他はこちら。↓







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