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冬のパリでオニオングラタンスープ

1度目の旅行は、たいてい、主だった建造物や美術館を見て終わってしまう。とくに、パリのように見どころ満載の街では。
ショッピングやグルメ、とくに何もないけれどなんとなくお気に入りの通りを見つけて歩いてみる、とかそういったことまでには、時間も意識もまわらない。

地理や移動手段などの勝手が少しでもわかったあとの、2度目以降の街歩きがなんとも楽しい。1度目に訪れたときの高揚感は何にも代えがたいけれども、2度目からこそがその街のよさを知るときなのかもしれない、とも思う。

2度目のパリは冬に行った。12月のクリスマス前くらいの時期に夫と2人でパリに着いた。主に街歩きを目的としていたけれども、実際は、寒くて寒くて、街歩きどころじゃなかった。

パリの街はカフェにしろ、洋服店や雑貨店にしろ、暖房の効きが日本よりも弱いような気がする。店員さんが、アウターとマフラーを身に着けたまま接客をしているところを見ると、それは、その通りなのだと思う。

震えながら散歩して、限界がきてカフェや雑貨店に入っても、芯まで冷えた身体は温まらずに、変わらず震え続けた。
靴下を2枚重ねて履いても日に日に、私の足のしもやけが大きくなっていって、ブーツがきつくなった。
それでも、私は、旅程の最後の方に予定していた、クリニャンクールの蚤の市に行くことを楽しみにしていた。当時、アクセサリー作りに夢中になっていた私は、目的のお店でアンティークビーズを買いだめすることを密かに重大ミッションとしていた。

マレ地区のセレクトショップMerci(メルシー)

そこで、買い物をする資金を残すために、惹かれるものを見つけても、ウィンドウショッピングで我慢、何も買わないようにしていた。

HOTEL DU NORDでランチ
街歩きのお供におやつを買って
アメリの流の食べ方でクレームブリュレを

寒い寒いと言いながらもワインが美味しいお店で食事をしたり、チョコレートを買って食べながら散歩したり、それなりに楽しめていた。

La grande CREMERIE 雰囲気のよい店内でした
クリスマスディナーはここでお惣菜を買って

クリスマス当日は多くのレストランが営業していなかった。
コンドミニアム式のホテルに滞在していたので、お惣菜とワインを買って部屋で食べた。それも、なんだか楽しかった。暮らすように旅する、をやってみたような気になったからだ。

さて、ついにクリニャンクール蚤の市へ。想像以上に大規模で、ひろーい敷地に驚いた。
家具やアートや雑貨がたくさん。本気で見ようと思ったら、1日かかっても終われない。胸を高鳴らせながら、散策していって、ついにお目当てのアンティークビーズ屋さん!と思ったら……、

お店が開いていなかった。

場所を間違えたのか?何度も確認したけれど、確実にここだ。

店主が早めの冬休みをとっているのか、商売をたたんでしまったのか、当日、閉店していた理由はわからない。ここに焦点をあててきたのに、ショック!!別のビーズ屋さんも見たが買う気にはなれなかった。

そして、とにかく、寒い、寒すぎる。
耐えかねて、蚤の市からいったん離れて、レストランに入った。
何かとにかく温かいものを。ホットコーヒーでもない!ココアでも足りない、もっともっと温まりたい!!

メニューにオニオングラタンスープを見つけて注文した。

熱々のスープが冷え切った身体に浸透していく感じ。スープの温かさがこんなにも身に染みたことはない。
私と夫は夢中でスープを口に運んだ。寒さも、無念も一気にふきとんだ。

la droguerie(ラ・ドログリー)

後日、la droguerie という手芸屋さんを見に行った。当時は渋谷の西武百貨店にもこのお店が入っていたから、よく見に行っていた。
パリで見られて感動。渋谷店よりも規模が大きい。
ところが、品ぞろえに圧倒されて、なんとなく集中できずに、結局何も買わなかった。
とにかくまた、身体が冷え切っていた(本当に、こればっかり!)

Au Pied de Cochon  24時間営業!
オニオングラタンスープ 写真が暗くなってしまって残念!
食後のコーヒーについてきた、可愛らしいブタさんたち

またお店に入って、私達は迷わずオニオングラタンスープを注文した。前回の、身体にしみいった感覚が忘れられなかった。完全にハマったのである。

このレストラン、1947年創業でなんと24時間営業しているお店だとか。
あとから写真を見て振り返ると、このときサーモンやステーキ、エスカルゴなんかを食べたはずなんだけれども、オニオングラタンスープしか覚えていなかった。


その後、突然、私の買い物熱に火が付いた。
黒のスキニーパンツを買い(買ってから8年は履いた。大活躍!)、ファストファッションのお店でベルトを買い、露店で革のトートバックを買った。
とくに、パリで買わなくてもよさそうなものばかり(苦笑)

結果、買い物では、不完全燃焼だったけれども、強烈にオニオングラタンスープを味わった旅だった。これだけの寒さを感じなければ、ここまで記憶に残らなかっただろう。
オニオングラタンスープがしみた冬のパリ。

最近、ぐっと寒くなってきた。オニオングラタンスープを作ろうか。

ベルサイユ宮殿の庭を見学してるときも、寒くてホットワインを飲んだのを思い出した(笑)


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