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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2023 Winter Selection (1月16日~2月26日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

2023年スタート、今年もよろしくお願いいたします。コロナ禍からの復興をめざす街並み、そこに暮らす私たちの営みとその心象風景を、少しでも素敵な音楽で彩ることができたらという希いと思いをこめて、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間分を新たに選曲しました。
月〜日を通してのTwilight-timeの特集は、僕が選んだ2022年のベスト・トラック900曲(曲目リストはベスト・アルバム60作とともにこちらに掲載されています)をシャッフル・プレイ放送で。そのうちの大半は、Spotifyプレイリスト「2022 Best Tracks 900 selected by Toru Hashimoto (SUBURBIA)」で聴くことができますので、その中でも特に昨年よくセレクトした選りすぐりの100曲を集めたダイジェスト・プレイリスト「2022 Best Tracks 100/900 selected by Toru Hashimoto (SUBURBIA)」と併せ、フレンドリーな日常のBGMとしてお楽しみいただけたら嬉しいです。
その他の時間帯は、昨秋から今冬にかけてのニュー・アライヴァルを、いつものように惜しげもなく投入していますが、何と言ってもモスト・フェイヴァリットはLittle Simzの『NO THANK YOU』、そしてSZAの『SOS』でしょう。こんな素晴らしいアルバムが大ヒットして、とても高い評価を得ているイギリスとアメリカがうらやましくなります。その2トップを始め、今回のセレクションでとりわけ活躍してくれた20作のジャケットを掲載しておきますので、ぜひその中身にも触れていただけたらと思います。
そして最後に、嬉しいお知らせをひとつ。去年から制作を進めてきた、僕のコンパイラー生活30周年を記念したコンピの第1弾『Blessing ~ SUBURBIA meets P-VINE "Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme"』の、すべての収録希望曲のアプルーヴァルが遂に揃い、いよいよ2/22にリリースが決定しました。過去30年間に監修・選曲を手がけてきた約350枚のオフィシャル・コンピレイションのうち、P-VINEで発表された27タイトルからベスト・オブ・ベストと言うべき珠玉の名作を選りすぐった会心のセレクションです。ライナー・ブックレットには、この30年を振り返った大充実のロング・インタヴュー(構成/waltzanova)も掲載されていますので、選曲ともども楽しみにしていてください!

V.A.『Blessing ~ SUBURBIA meets P-VINE "Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme"』
Little Simz『NO THANK YOU』
SZA『SOS』
Oshun『vol. ii』
Erika Denae J『Rx Melodies』
Alice Boman『The Space Between』
Kaho Matsui『No More Losses』
Nate Mercereau『Ojai Orange Grove Concert』
Work Money Death『Thought, Action, Reaction, Interaction』
Harry James『Harried』
Mthunzi Mvubu『The 1st Gospel』
Rachael & Vilray『I Love A Love Song!』
The Foreign Landers『Travelers Rest』
Lara Louise『Alone Together』
Rozi Plain『Prize』
Bill Callahan『YTI​⅃​A​Ǝ​Я』
Vulfpeck『Schvitz』
Chase Ceglie『Chaseland』
Luedji Luna『Bom Mesmo é Estar Debaixo D'Água (Deluxe)』
Dos Más Uno『Las Canciones Más Lindas del Mundo』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
特集 月曜日16:00~18:00
特集 火曜日16:00~18:00
特集 水曜日16:00~18:00
特集 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

2023年も自分の中のシティ・ポップ・ブームはまだまだ続きそう。邦楽でも洋楽でも、なぜかははっきりわかりませんが、やはりシティ・ポップやシティ・ソウルと呼ばれるものの中に、好みが多いです。というわけで昨年12月にリリースされたPREPの日本限定EPは、やはり選ばずにいられませんでした。5曲中3曲を、木曜・土曜・日曜の12時〜16時の中で1曲ずつ選曲しています。旧譜でも新譜でも、今年も自分ならではの好みのシティ・ポップに出会いたいですね。

PREP『Back To You』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

前作『before - いままでのむこうがわ』からちょうど1年、Calm初の完全ビートレスとなる新作がリリースされました。2023年最初、冬真っ只中のウィンター・セレクションではありますが、トップ・リコメンドで選曲したのはその名も「Late Summer Night」。静かに湧き上がるような幻想的なイントロから、超クールなメイン・フレーズが飛び出る瞬間は何度聴いても胸に熱いものがこみ上げます。夏季にもう一度選ぶことになるとは思いますが、流れにフィットした「Quiet Music Under the Moon」「Arigato Arigato」と共に、より鮮度の高いこのタイミングで耳にしていただけたら嬉しいです。

Calm『Quiet Music Under the Moon - つきのおと』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

気持ちを新たにほぼ新作のみで構成した今年最初のセレクション。どこまでも澄み渡った冬の空を思い浮かべて24枚をピックアップ。2023年も心地よい空間づくりを大切に、素晴らしい作品をお届けできたらと思っていますので、リスナーの皆さん、よろしくお願いいたします。

Lucas Santtana『O Paraíso』
Raul Midón『Eclectic Adventurist』
Karolina『All Rivers』
Gwilym Gold『Blue Garden』
FaltyDL『A Nurse To My Patience』
Kwaku Asante『Wanderlust』
Ingredient『Ingredient』
Kai Kwasi『Jalilah』
Flwr Chyld『Luv N Chaos』
Paul van Kessel『High or Low』
Hemai『Leisure Trip』
John Keek『Do You Love John Keek?』
Tony Njoku『Our New Bloom』
James Tillman『Magic City Thrill』
Pássaro『Antes De Existir O Mundo』
Song Yi Jeon & Vinicius Gomes『Home』
Duval Timothy『Meeting With A Judas Tree』
Hanakiv feat. Alabaster DePlume「No Words Left」
Photay with Carlos Niño『More Offerings』
Martin Roth『Mono No Aware』
Hamish Lang『Seasons』
Danny Scott Lane『Home Decor』
Vanessa Wagner『Mirrored』
Arve Henriksen & Kjetil Husebø『Sequential Stream』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

令和の年号が制定されて5年が経ちました。かつてなく不安定な世界情勢が続きますが「他人を思いやりつつ自分ができる仕事を精一杯する」こと。これは3年くらい前に自ら課した抱負です。2023年スタートの時期、初心を忘れず実行したいと思います。

選曲の嗜好にあまり変化はありませんが、近年はより音楽の「ジャンルレス化」「非ジャンル化」が進んでいるように思います。これはとてもよい傾向で、そもそもジャンルやカテゴリーというのはレコード店(あるいは配信する側)の都合であって、我々リスナーには全く関係のないこと。むしろ日本人は几帳面でカテゴリー分けしたくなる国民性ですから、つい聴く前から「このバンドは◯◯だね」と思考停止した固定観念に縛られてしまう。これはよくありません。云うまでもありませんがこの思考停止こそが、人生すべての事象に繋がっていくのです。

北欧スウェーデンをベースに活動しているピアノ・トリオMUSICMUSICMUSIC(以下、MMM)。スタイルとしてはジャズなのですが、ユーモアあふれるパフォーマンス、ユニークな演奏スタイルに定評があるグループです。MMMのユニークさ親密さはテクニックに裏づけられたもので、この姿勢が北欧のジャズ・シーンを牽引しジャズの「ボーダーレス化」を進めているような気がしますが、大陸産の集団で踊るグループとそれを模倣したダンス・ミュージックが席巻している極東の国を想うとき、ピアノ・トリオを愛する若い国民、というのは羨ましいかぎり。MMMにはジャズの可能性のみならず聴き手をくすぐる「何か」があるのでしょう。しずかに湖面を滑る舟のような佳曲「Curt」を聴きつつ、その「何か」を探っていただければ嬉しいです。

本年もご贔屓に。

MUSICMUSICMUSIC『Good Look』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



高木慶太 Keita Takagi

三寒四温。冬の選曲もこの塩梅が上手くいく。寒と温が逆転するとやはり少し緊張感が勝ってしまうし、暖が過ぎれば子守唄になってしまう。マフラーや手袋ひとつ分の温もりが寒さを愛でようという気持ちにさせてくれる。

Beach Fossils『The Other Side Of Life: Piano Ballads』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

現行AOR、milesのデビュー・アルバム。
アナログ盤リリースされて知りましたが、アルバムのクオリティーが素晴らしい。
西海岸サウンド〜ヨット・ロック好きには堪りません。
もっと早く知っていたら昨年の年間ベストに間違いなく入れてました。
皆様にもこのアルバムのように素晴らしい出会いがあり、ミュージック・ライフが充実することを願っております。
今年もよろしくお願いいたします!

miles『Riding The Wave』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

今回、紹介させていただくのは、東にロシア、南にウクライナと国境を接するベラルーシの首都ミンスクを拠点に活動するソユーズのサード・アルバム『Force Of The Wind』です。作編曲家/シンガーのアレックス・チュマクを中心にしたユニットで、3枚目となる本作では、これまでも垣間見せていたブラジル音楽への憧憬をより鮮明に作品に反映させています。その美しいアレンジは文化が弾圧されていた軍事独裁政権下のブラジル音楽とその時代の空気感を再現しているかのようです。2023 Winter Selectionでは、本作からロシア・モスクワの気鋭アーティスト、ケイト・NVがゲスト参加した「I Knew It」をセレクト。ロシアとウクライナの戦争が長期化しておりますが、この戦争が1日も早く終わることを祈りながら、2023年最初のセレクションを選曲させていただきました。興味のある方はぜひ聴いてみてください。

СОЮЗ (SOYUZ)『Force Of The Wind』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

年間ベストにあぶれた作品を中心に選びましたというほど2022年の新作に心打たれることもなく、温故知新状態がまだ続いておりまして、というのも新作が手元に届くのが遅いのもあります。そんなことにイライラしても仕方ないので、それも出逢いのひとつだと、20年以上前の作品でしばらく聴いていなかった、および買った当時はそうでもなかった作品を聴き直したり。そんな2023年のスタートですが、今まで以上に歴史も国境もこえた違和感のない2023年のカフェ・ミュージック空間になると自負しております。当時12インチ・レコード・ショップに友人が勤めていたのもあり、いろいろジャンルをこえて、特にエレクトロニックな楽曲に幅を広げていた1997年。そんな12インチの中でも久々に聴いて全身電気が走ったLustralのデビュー・シングル「Everytime」のPromo盤B面“A Man Called Adam's Balearic Remix”。ミニマルなシンセなネオアコ、チェリー・レッドなチルウェイヴ。完全に2023年の作品にしか聴こえないのであります。
と同時にサバービア2000もふりかえりながら久々Joan Bibiloniの名盤『Joana Lluna』をじっくり聴いてると、今は「Ciutat」の高速ジャズ・ファンクが新鮮に感じましたので、ふっとMandukaの「Qué Dirá el Santo Padre」とEllen McIlwaineの「Born Under A Bad Sign」が蘇り収録しました。2019年リリースの天才と思うSSW、Julien Changのアルバムからも吟味しつつ、ニュー・リリースに期待しながらセレクトし、やっと入手できた年間ベストにも収録した中東ヨルダンの歌姫Farah Sirajの奇跡のブラジリアン・アフリカン・ジャズ・アルバム『Nomad』からは中東ボサノヴァを。もちろんカフェ・アプレミディCDシリーズの感覚で選曲してます。お楽しみください。今年もよろしくお願いします。

Lustral「Everytime」
Manduka『Manduka』
Julien Chang『Jules』
Farah Siraj『Nomad』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

モンゴル出身でドイツのミュンヘン在住のジャズ・シンガー、Enjiことエンクヤルガル・エルケムバヤルのセカンド・アルバム『Ursgal』から「Gandii Mod」を2023 Winter Selectionの一曲にセレクトしました。ウランバートルに生まれ、労働者階級の家族のもと、ユルト(遊牧民族の円形型移動テント)で育ったという彼女が作り出す音楽は、まさにモンゴルの雄大な大地を思わせる、大らかでどこまでも伸びやかな世界観を表現しています。モンゴルの伝統的民謡オルティンドーにジャズとフォークを独自に融合させた、その唯一無二のサウンドは、初めて聴いたはずなのに、不思議とどこか懐かしい風景を心に描きます。ギター、ダブル・ベースを軸としたシンプルな編成は、彼女の力強くもイノセントな美しさを湛えた歌声を、最大限に引き立てています。凛と澄んだ冬の空気にもよく馴染む、味わい深くも洗練されたジャズ・アルバムです。余談ですが、モンゴルは数年前、個人的に旅をして大好きになった国のひとつなので、そういう意味でも、この作品には思い入れが強いのかもしれません。

Enji『Ursgal』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

2023年が明けて、いよいよウィズコロナの生活が日常化しそうですね。
今年は昨年以上にたくさんのDJ体験やライヴが観られることが楽しみで仕方ありません。
そしてこの「usen for Cafe Apres-midi」の選曲も、季節に寄り添った新鮮な楽曲を相変わらず思いを込めて選んでいきますので、どうぞご贔屓ください。
さて今回の特におすすめは、橋本さんも年間ベストに選出していた、昨年末に驚嘆の5枚のアルバムを同時公開したSault。
3枚のアルバムから1曲ずつピックアップしました(他にも入れたい曲はたくさんあるので、次回、次々回に選曲します!)。
ファンク、ソウル、ラテン・グルーヴ、ジャズetc.が交錯するシンプル、パワフル、メロウでリアルなUKコレクティヴの素晴らしい楽曲たちをぜひ聴いてみてください。

Sault『11』
Sault『Untitled (God)』
Sault『Earth』
Duval Timothy『Meeting With A Judas Tree』
Sandra Bernardo『Es el Momento』
СОЮЗ (SOYUZ)『Force Of The Wind』
Monsieur MÂLÂ「'Til Daylight」
Benny Sings「The World」

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

2023年第1弾となるウィンター・セレクションでは、現在進行形の街の風景に似合う新しいカフェ選曲の方向性を自分なりに模索しつつ、ベースはやはり素直に自分の心に響いた曲を中心に集めてお贈りしようと思います。そんな中から、今回ぜひとも紹介したいのが、Freedustの「Take Me There」。哀愁漂うメロディーと浮遊感あふれるヴォーカルが交錯しながら、午前中の「usen for Cafe Apres-midi」が流れる空間の空気感にフィットする、緩めのグルーヴが何とも心地よい曲です。

Freedust『Take Me There』

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

行き場を失い彷徨う冬の吐息のようにアンニュイな歌声を聴かせるフィラデルフィアのR&BシンガーJasmine Cassell。「Things Change」「Speechless」「Touch」など彼女自身によるソングライティングも素晴らしく、メロウでマイルドなサウンドが彼女の歌を優しく包み込む。

Jasmine Cassell『Enim』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

2023年の扉が開き、新たな年がスタートしました。しかし昨年末に愛するミュージシャンの一人、テリー・ホールがお亡くなりになり大変ショックを受け、それをまだ少し引きずっております。それほど彼の残した作品は自分の人生で重要な意味があるものばかりで、その中でも特にスペシャルズのファースト・アルバムは思い入れのある作品です。中学1年のときにFMラジオでかかっていた「Gangsters」を聴いて感動し、雑誌「ミュージック・ライフ」でアルバムの発売日を確認して、近所の愛曲楽器というレコード屋に予約をして購入したことは、今でも鮮明に覚えています。後に「Gangsters」は日本盤のみのボーナス・トラックだと知るのですが、自分にとってはA面3曲目に「Gangsters」が入っている構成が身に染みているので、CDでこのアルバム聴くとちょっと違和感があります。ちなみに「Gangsters」はプリンス・バスターの「Al Capone」という曲を下敷きにした作品ですが、冒頭の車のブレーキ音もちゃんとオマージュされているんですね。そして昨年末は、フェルトやプライマル・スクリームの鍵盤奏者として活躍したマーティン・ダフィも55歳という若さでお亡くなりになりました。以前このコメント欄でデニス・ボーヴェルと回転寿司に行ったことを書きましたが、実はそのときにマーティン・ダフィも一緒にいたのです。1991年のエドウィン・コリンズ初来日でのことですが、マーティンとデニス・ボーヴェルはそのときのツアー・メンバーで、自分は彼らのお世話を任されていたので、一緒にお寿司屋さんにも行きました。そのときのマーティン・ダフィの印象ですが、とにかくシャイでおとなしく、とても好青年でした。そのときに大好きなバンドであるフェルトのメンバーであり、自分には憧れの存在であった彼が同い年と知って、とても驚いたことを覚えています。
さて2023年の幕開けは、昨年のベスト・セレクションでも取り上げたBarrieの「Unholy Appetite」をピックアップしてスタート。自分に課したルールで、コロナ禍以降は同じ作品を重複して取り上げないというルールがあるのですが、毎回年明けの冬選曲はベスト・セレクションを選ぶ前に作成しているので、今回もBarrieの「Unholy Appetite」以外に、Brothertigerの「Be True」やCal In Redの「Can I Call You Tonight? / Quarterback」なども、2022年のベスト・セレクションに入っていた作品ですのであしからず。そのBarrieの作品に続けたのは、Alana Schachtelのソロ・プロジェクトLipsticismのニュー・アルバム『Two Mirrors Facing Each Other』からの先行シングル第2弾「Transform」。この煌めき感あふれる作品は年明けにふさわしい希望に満ちた明るい楽曲ですね。続くマレイシア出身のアーティストLost Spacesの「Daydream」も多幸感がある素敵な作品です。ディナータイム選曲前半は他に、大好きなアーティストのハッチ―の新曲「Twin」や、結成して20年以上経ち、もはやヴェテランの域に達しているフランスのバンド、フェニックスの新作「Winter Solstice」、ピーター・フックのベース・ラインを彷彿とさせるニューヨークの男女デュオ・ユニットPhantom Handshakesの「Stuck In A Fantasy」もセレクトしています。
ディナータイム後半は、映画を愛する自分にピッタリのタイトルが付けられた、ニューヨークのアーティスト、River Westinの「Cinema」を冒頭に配置し、これまたニューヨークはブルックリンの女性アーティスト、Work Wifeの昨年末にリリースされたニュー・アルバム『Quitting Season』収録曲「Too Young To Understand」につなげました。この曲はジャケット通りのしんしんと降る雪のように清らかな作品ですが、アルバム最後の「Brian Eno」という作品も素晴らしく、こちらは次回の選曲に収録予定なのでお楽しみに。そしてやはり自分の選曲ではおなじみとなった、東京で結成され現在はカリフォルニアを拠点に活動する男女デュオ、Honeywhipの新曲「Tag Along」や、スウェーデンはストックホルムのバンド、Robert Church & The Holy Communityの「Black Cloud」、こちらもおなじみのアーティスト、カナダはトロントのJaguar Sunがオクラホマの男性デュオ、Husbandsとコラボレイした「First Time Caller」などもセレクト。終盤にピックアップしたカリフォルニア州中部フレズノのアーティスト、Bummer Dazeの「Reflections」なども爽やかなインディー・ポップで素敵ですね。
ミッドナイトからの選曲は、先に述べたBrothertigerの「Be True」とCal In Redの「Can I Call You Tonight? / Quarterback」を続けてピックアップしてスタート。その後にベルギーのアーティスト、The Haunted Youthのデビュー・アルバム『Dawn Of The Freak』収録曲「Stranger」や、ニューヨークはブルックリンのラテン系シンガーQuelle Roxの「Birdy’s」、イギリスの男女デュオ・ユニットHarperの今後リリースされる新作EP『Spider』からの先行シングル第2弾「Swanface」、アメリカのロードアイランド州プロヴィデンス出身のアーティスト、Blue MenaがUKのエレクトロニック・バンド、ブロードキャストの作品をカヴァーした「Tears In The Typing Pool」などをセレクト。Blue Menaのこの作品は、2011年に肺炎による合併症のため42歳という若さで亡くなったブロードキャストのヴォーカリスト、トリッシュ・キーナンに捧げられています。
ミッドナイト後半は、アメリカとイギリスの音楽プロデューサーによるコラボレイション・ユニット、53 Thievesの「LYD」、ロサンゼルスで活動する女性アーティスト、A.O. Gerberの昨年10月にリリースされたニュー・アルバム『Meet Me At The Gloaming』収録の「Walk In The Dark」、これまたロサンゼルスを拠点に活動するシンガー・ソングライターのSam Valdezの「Backseat」、リトアニア人と南アフリカ人による男性デュオ・ユニット、Caraml(最近ユニット名をCaramelから変更)の「We're Fine」と浮遊感のあるダンス・ナンバーを続けてセレクト。ミネアポリス出身のアーティスト、Castle Theaterのニュー・アルバム『Ostrich』収録の「Bumblebees」も似たようなテイストで、ゆったりとしたグルーヴが心地よいですね。他にカンザス州を拠点に活動するベッドルーム・ポップ・アクト Jordanaの新作EP『I’m Doing Well, Thanks For Asking』からの先行シングル「SYT」や、カリフォルニア州ヴェニスで活動するAlex Siegelの「Fairweather Friends」も素敵な作品です。

さて、皆さんは年末年始は何をして過ごされましたか? 自分は相変わらず自宅にいるときは映画三昧の時間を過ごしていましたが、購入したのに開封もせずにいたブルーレイをいろいろと観たりしていました。海外盤ブルーレイでは『シベールの日曜日』に続きパトリシア・ゴッジが主演した『かもめの城』、サリー・フィールドがアカデミー賞主演女優賞を獲得した『プレイス・イン・ザ・ハート』、前回のコメントで少し触れたアラン・パーカー監督のデビュー作『ダウンタウン物語』などを観たのですが、どの作品も日本盤DVDとは比べものにならない高画質で感動しました。中でも特に『ダウンタウン物語』の映像の綺麗さは特筆ものです。貴重なTV録画の吹き替え版もいろいろと観たのですが、特にクロード・ルルーシュの『愛と哀しみのボレロ』には感動しました。1985年11月2日にフジテレビ『ゴールデン洋画劇場』で放送された初回放送を見せていただいたので、映像のカットはありますが、存在する吹き替えの最長版を観ることができました。プレミア価格で取り引きされている正規盤ブルーレイ及びDVDには吹き替えは入っていないので、大変貴重なものだと思います。映画の素晴らしさは言わずもがなですが、やはりクライマックスのモーリス・ラヴェル作曲のボレロが圧巻ですね。こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、この曲を聴いている感覚は、自分にとってはマイク・オールドフィールドの「Tubular Bells」と同じです。そしてモーリス・ベジャール振り付けのジョルジュ・ドンによる踊りも鳥肌ものですが、この「ベジャールによるボレロの振り付け」は、日本で初めてパフォーマンスとしての知的財産権を獲得しており、許可なくこの振り付けで踊ることはできません。そのジョルジュ・ドンによる神がかり的な踊りはぜひ映画をご覧になっていただき確認してほしいのですが、フランスの天才ダンサー、シルヴィ・ギエムが2015年の12月31日に自身の引退ステージとして、ここ日本で大晦日の年越しカウントダウンで踊った『ボレロ』の姿がYouTubeにアップされていますので、そちらもぜひご覧になってください。まさに「言葉を失う」とはこのことだと思います。

Lipsticism「Transform」
Lost Spaces「Daydream」
Hatchie『Giving The World Away』
Phantom Handshakes『A Passport To Remain』
River Westin「Cinema」
Work Wife『Quitting Season』
Honeywhip「Tag Along」
Jaguar Sun + Husbands「First Time Caller」
The Haunted Youth『Dawn Of The Freak』
Quelle Rox「Birdy’s」
Harper「Swanface」
Blue Mena「Knocked Out」
A.O. Gerber『Meet Me At The Gloaming』
Sam Valdez『Crush』
Castle Theater『Ostrich』
Jordana『I'm Doing Well, Thanks For Asking』

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

本年もどうぞよろしくお願いいたします。昨年同様に、今年もどんな素晴らしい音楽に出会えるのかと、楽しみな気持ちでいっぱいです。そして、「usen for Cafe Apres-midi」をお聴きの皆さんの心が安らいだり、気持ちが温かくなるような選曲ができればと思います。さて新年一発目の選曲ですが、ちょうどこの1月にリリースされたバー・ブエノスアイレスの新作『bar buenos aires - Invierno』と、クワイエット・コーナーの新作『Core Port × Quiet Corner – Landscape 02』が寒い季節にぴったりのハートウォーミングな内容だったので、その中から僕の選曲タイムにも合いそうな、洗練されたサロン・ジャズや、心地よいジャズ・ヴォーカルをいくつかピックアップしています。その中でも特におすすめなのが、アメリカのトロンボーン奏者/ヴォーカリストのナタリー・クレスマンと、ブラジルのギタリストのイアン・ファキーニとのデュオ曲「Already There」です。これが歌も演奏も本当に洒落た曲なのですが、こういうのがカフェや飲食店のBGMで流れていたら、どんなに幸せだろうと思わず想像してしまいます。今年はこういった2023年版カフェ・アプレミディ的な曲をひとつでも多くお届けしたいですね。

Natalie Cressman & Ian Faquini 『Auburn Whisper』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

ベースレスの変則カルテットによるビル・フリゼールの新作『Four』の中の1曲、2020年に亡くなった名プロデューサー、ハル・ウィルナーに捧げられた「Waltz For Hal Willner」があまりに好きすぎて、何度も繰り返し聴いていたら、なんだかビル・フリゼールがほぼ全編で参加していたハル・ウィルナーのプロデュースによるチャールズ・ミンガス・トリビュート・アルバム『Weird Nightmare (Meditations On Mingus)』と『Four』の親和性みたいなもの(というか連綿とつながるもの)を感じて、ついついそんな80s〜90sのNY周辺のジャズやコンテンポラリー系を郷愁を味わいながらしみじみ聴きこんでしまいました。
2023 Winter Selectionは、そんなどこか音楽的な知的好奇心をそっとくすぐる、冬の澄んだ空気のように風通しのよい楽器の響きがゆったりと心地よく感じられるような、ほどよく音の間を活かした楽曲を意識して編んでみました。

Omar Sosa & Tiganá Santana「Bloco Novo」
Andy Shauf『Norm』
Ernest Hood『Back To The Woodlands』
Paul Prier「Hard To Be Myself When I'm With U」
Laura Misch「Lagoon (Earth Variation For Saxophone And Voice) 」
Bobbie Lovesong『On The Wind』
Bill Frisell『Four』
Stu Pender『Duet』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

2023年のWinter Selection、オープニング・クラシックはグレン・グールドが弾くシェーンベルクの『5つのピアノ曲』より「第5番 Walzer」です。シェーンベルクというと、ほぼ必ず「十二音技法」といった話題になるので、難解でとっつきにくいというイメージですし、実際20代の頃に聴いたときはピンと来ませんでした(ほとんど記憶がありません・笑)。しかし、昨年末に坂本龍一さんの配信ライヴがあり(これも感動的でしたね)、それをきっかけにグールドのシェーンベルクを聴いてみたところ、以前とはまったく違う聴こえ方で僕の耳に響いたのでした。同じものが20年くらいの時を経て、魅力を感じるものへと変化している。これって音楽のみならず小説、映画などにもある体験ですが、センス・オブ・ワンダーというか、人生の不思議さを感じますよね。シェーンベルクのピアノ曲はひとことで言えば、“音のモダン・アート”という趣です。必ずしも万人受けするものとは思いませんが、これをきっかけに少しでも興味や関心を持っていただけたら、セレクター冥利に尽きますね。『6つのピアノ曲』や『ピアノ組曲』も「Walzer」と共通する趣があってお薦めです。

そこからガラリと雰囲気が変わって、ジョイスの「Feminina」へ。昨年、発掘音源がリリースされた1977年のクラウス・オガーマン編曲版です。11分の長尺ですが、躍動感や喜びに満ちたサウンドが、新しい年のセレクションにふさわしいのではないかと思います。そしてSZA、リトル・シムズなど、充実した女性アーティストの新作アルバムからも選曲しました。

さて、今回のセレクションは「usen for Cafe Apres-midi」の選曲仲間でもある富永珠梨さんが選曲を手がけた『レディメイド未来の音楽シリーズ CDブック篇 #10 ブランケットの下で』にインスパイアされたところが多分にあります。このコンピレイション、彼女がライフワークにしている「Under The Blanket」という私家盤のコンセプトをシリーズ監修の小西康陽さんが気に入って実現した作品なのですが、インティメイトでウォーム、そしてノスタルジックな雰囲気がとても素敵です。彼女の名前の由来ともなったという(!)ジュリー・ロンドンの名作アルバムからの曲に続け、ヴァレンタイン時期ということもあってリタ・ライスの「My Funny Valentine」につなげてみました。
普段よりもフォーキーな曲やオールドタイミーなジャズなどを多めに選び、冬の雰囲気を感じさせながらも心温まるという部分は外さないようにしたつもりです。特に最後の1時間はwaltzanova流ブランケット・ミュージック〜クワイエット・ミュージックという感じになっています。ちょっと静かな時間になりすぎたかな? と納品の段階では思っていたのですが、先日家のソファで聴いてみたら、思いのほか心地よく響いたので、このセレクションに愛着が増しました。ぜひ水曜の午後、穏やかな気持ちで聴いていただけると嬉しいです。

Glenn Gould『The Glenn Gould Collection Vol. 16; Glenn Gould Plays Schönberg』
Joyce Moreno『Natureza』
SZA『SOS』
Little Simz『NO THANK YOU』
Julie London『Julie… At Home』
Rita Reys With The Pim Jacobs Combo『Relax With Rita & Pim』
Louis Cole『Quality Over Opinion』
Gal Costa『Cantar』
Beth Orton『Weather Alive』
Makaya McCraven『In These Times』
Sachal Vasandani & Romain Collin『Still Life』
Duval Timothy『Meeting With A Judas Tree』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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