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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2023 Early Summer Selection
(5月29日~7月9日)


橋本徹(SUBURBIA)を始めとする

「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が

それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る

「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら

D-03 usen for Cafe Apres-midi

http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

リンダ・ルイス、アーマッド・ジャマル、坂本龍一。尊敬する音楽家が相次いで亡くなり、追悼の思いを胸に抱きながら、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間分を新たに選曲しました。
月〜日を通してのTwilight-timeの特集は、僕のコンパイラー人生30周年記念コンピ3タイトル、CDリリースされたばかりの『Merci ~ Cafe Apres-midi Revue』と『Gratitude ~ Free Soul Treasure』、そしてまもなくアナログ盤がリリースされる『Blessing ~ Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme』を主役に、これまでに監修・選曲を手がけた350枚におよぶコンピレイションの収録曲をシャッフル・プレイ放送で。それぞれのライナー・ブックレットに掲載された、橋本徹(SUBURBIA)コンパイラー人生30周年記念対談 with 山本勇樹(Quiet Corner)橋本徹(SUBURBIA)コンパイラー人生30周年記念公開インタヴュー@タワーレコード渋谷店橋本徹(SUBURBIA)コンパイラー人生30周年記念インタヴューと共に、ぜひお楽しみいただけたら嬉しいです。
その他の時間帯は、いつものようにニュー・アライヴァルのお気に入りを惜しげもなくエントリー。とりわけセレクションで重要な役割を果たしてくれた44作(4曲以上をセレクトしたEPも含む)のジャケットを、アーティストABC順に掲載しておきますので、それらの中身の素晴らしさにも、よかったら触れてみてください。
タワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE」キャンペーン・ポスターに寄せたコメントとも重なりますが、本当に大切なこととそうでないことの違いが見えづらい時代、僕らのハッピー&ブルーに寄り添ってくれる音楽のある風景に“感謝”しながら、毎日をすごしていきたいと思います。それでは、生きている時間を“祝福”しながら、ライフ・ゴーズ・オン!

V.A.『Merci ~ SUBURBIA meets INPARTMAINT "Cafe Apres-midi Revue"』
V.A.『Gratitude ~ SUBURBIA meets ULTRA-VYBE "Free Soul Treasure"』
V.A.『Blessing ~ SUBURBIA meets P-VINE "Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme"』
Alfa Mist『Variables』
Anohni『My Back Was A Bridge For You To Cross』
Arlo Parks『My Soft Machine』
aupinard『aupitape 1:ortensia』
Avalon Emerson『& The Charm』
Billie Marten『Drop Cherries』
Bokani Dyer『Radio Sechaba』
Brandee Younger『Brand New Life』
Chico Pinheiro & Romero Lubambo『Two Brothers』
Claire Davis『Get It Right』
Domenico Lancellotti『Sramba.』
Eloise『Drunk On A Flight』
Emma Frank『Interiors』
Erlend Øye『Winter Companion』
Ganavya & Munir Hossn『Sister, Idea』
Giorgio Tuma『We Love Gilberto』
Gogo Penguin『Everything Is Going To Be OK』
Gretchen Parlato & Lionel Loueke『Lean In』
Judit Neddermann『Lar』
Kareen Guiock-Thuram『Nina』
Kauai45『Nice & Steady』
King Krule『Space Heavy』
Matt Maltese『Driving Just To Drive』
Matthewdavid『Mycelium Music』
Maxine Funke『River Said』
The National『First Two Pages Of Frankenstein』
Nico Paulo『Nico Paulo』
Nico Segal『Tell The Ghost Welcome Home』
A NiN『A NiN』
North Americans『Long Cool World』
Oilly Wallace『Flowers Of Your Youth』
Olivia Dean『Messy』
Olivia Khoury『Portraits』
Oracle Sisters『Hydranism』
Paolo Fresu & Omar Sosa『Food』
Salami Rose Joe Louis『Akousmatikous』
Sílvia Pérez Cruz『Toda La Vida, Un Día』
Smokey Robinson『Gasms』
Speakers Corner Quartet『Further Out Than The Edge』
Tiny Habits『Tiny Things』
Zippy Fox『Waking Up In Paris』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00

Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00

Brunch-time 月曜日10:00~12:00

Brunch-time 火曜日10:00~12:00

Brunch-time 水曜日10:00~12:00

Brunch-time 木曜日10:00~12:00

特集 月曜日16:00~18:00

特集 火曜日16:00~18:00

特集 水曜日16:00~18:00

特集 木曜日16:00~18:00

特集 金曜日16:00~18:00

特集 土曜日16:00~18:00

特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

初夏の蒸し暑い雨の日でも、心地よくさせてくれる音楽を探していました。そして出会えたのがニューヨーク生まれの日系アメリカ人、Kingo Hallaの『Empty Hands』というアルバム。ここでは雨音にも溶け込みそうな雨のシーズン用の音楽としてピックアップしましたが、もうとにかく温かくて柔らかいヴィンテージ感に溢れたサウンドもスウィートな歌声も気持ちよすぎて全シーズンおすすめです。これは本当に素晴らしい発見でした。

Kingo Halla『Empty Hands』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00

Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00

Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00

Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

坂本龍一、アジムスのイヴァン・コンチ、そしてアーマッド・ジャマル。相次いで星になった偉大な音楽家を、特に深夜の選曲で追悼しました。作業~納品を終え、さらなる訃報が飛び込んできたのはリンダ・ルイスとヒタ・リー。貴方たちの音楽は永遠。僕は星になるまで、プレイし続けるでしょう。

The Ahmad Jamal Trio『The Awakening』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

オープニングのタイトル曲から初夏の風を受けて疾走するデンマークのサックス奏者、Oilly Wallaceのサード・アルバムが到着。前作のクワイエットなギター・デュオ作からガラリと変わって、随所にAORやボッサ・フィーリングをちりばめた、風通しのよいエヴァーグリーンな輝きを放つ作品に仕上がっています。

Oilly Wallace『Flowers Of Your Youth』

Shannon Lay『Covers Vol.1』

Feist『Multitudes』

Danny Kuttner『Purple』

Nico Paulo『Nico Paulo』

Cheo feat. maye「Maybe Baby」

Tori『Descese』

ARAR『Arar』

Lewis Franco feat. The Joe Alterman『On The Sidelines』

mohs.『Mirage』

Devon Gilfillian『Love You Anyway』

Daniel Caesar『NEVER ENOUGH』

Mac Ayres『Comfortable Enough』

Matt Corby『Everything's Fine』

Eddie Chacon『Sundown』

Reel People『Love2』

Caixa Cubo『Agôra』

Aaron Taylor『HAVE A NICE DAY!』

Brandee Younger『Brand New Life』

Mark de Clive-Lowe, Shigeto & Melanie Charles『Hotel San Claudio』

Atrin Madani『Where Are We Now?』

Neil Cowley『Battery Life』

Furns『VII』

Lucinda Chua『YIAN』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00




中上修作 Shusaku Nakagami

当然のことながら、2023年にリリースされた作品のほとんどはコロナ渦にレコーディングされた音源です。「喉元過ぎれば……」という格言が示すように、わたしも含めて風向きが変わった3月あたりから約2年間の常識(非常識?)を忘却しているのではないか、過去のものにしているのでないかということ。もちろんマスクから解放されるのは喜ばしいことなのですが、この爪痕は次のリスクに立ち向かうための防御創にすぎないことを忘れてはいけないと思います。



山本恵理はニューヨークで活動中のピアニスト/コンポーザー。本作は2022年11月にリリースされた彼女のセカンド・アルバムですが、『A Woman With A Purple Wig』という一風変わったタイトルから「美白にこだわりすぎた結果、顔面総防御の姿で子供椅子付きの自転車で爆走する女」を揶揄する曲かなと思ったのですが、どうやらもっと意味深な経験から生まれた曲(タイトル)なのだそう。ここで彼女がロックダウン中のニューヨークで経験した壮絶なエピソードを紹介しましょう(引用元:ディスク・ユニオンHPより)。



「ロックダウンから数ヶ月後のある日、電動スクーターに乗ってダウンタウンへ行き、屋外セッションに参加する他のミュージシャンを待っていました。そこに突然、大柄な男が私に近づきヘルメットをひったくり、空中に放り投げて言いました。『このクソ中国人が! 私の人生と世界を台無しにした!』と言いました。それから彼は、小さなキーボードが入った、私のバックパックを踏みつけたのです。私は強いニューヨーカーです。幸いなことに、私の楽器は無事だったので、その後セッションに参加しました。私はそれまでそのような経験をしたことがありませんでした。私にとってニューヨークは、いつでも世界中の人々を歓迎してくれる場所でした。もちろん、私は日本人ですが、自分をあえてアジア人だと自覚したことは一度もありませんでした。私はとても怖くなりました。それから2年間、徒歩での外出は極力控え、どうしても徒歩で外出しなければならない時は、身を隠すために購入した紫色のかつら、大きなサングラス、マスク、帽子を被り、自分がアジア人だとわからないように気をつけました」



欧米でアジア人バッシングに遭いながら、気丈に作品へと仕立て上げた彼女の勇気と作家魂には頭がさがる思いですが、何よりピアノ・トリオで演じられる作品の素晴らしいこと! タイトル曲では彼女のヴォーカルを聴かせてくれますが、私小説的にはならず寧ろ変身している自身を楽しんでいるかのような錯覚すらおぼえてしまう「一枚上手」なアルバムと感じました。



最後に。同じニューヨークで活躍されていた、偉大なる作曲家/ピアニストであり勇気ある活動家であったR.S.氏を心より追悼いたします。

Eri Yamamoto Trio『A Woman With A Purple Wig』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



高木慶太 Keita Takagi

ジャズの誕生には、かつてニューオーリンズに住んでいたクレオールと呼ばれるフレンチ・カリビアンたちが大きな役割を果たしたといわれている。この伝聞にインスパイアされて現代のクレオールたちを中心に構成したのが冒頭の時間帯である。グアドループ、マルティニーク、レユニオン、フランス領ギアナ。彼の地の音楽はどうしてこうもエキゾティックにしてエレガントなのだろうか。

David Walters『Soul Tropical』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

先日お亡くなりになった坂本龍一の作品の中でもアプレミディの印象が特にあるMorelenbaum²/Sakamoto『CASA』をセレクト致しました。
内容がアントニオ・カルロス・ジョビンのカヴァー・アルバムで、録音スタジオまでジョビンと同じ場所で録ったという念の入れようもさることながら、リリースが2001年で僕が初めてアプレミディのお店に行った年でもあり、ブラジル音楽が特に熱かった頃という印象があります。
その年、僕は1年だけ愛知県東部の田原に住んでいて、北海道にしか住んだことがなかったゆえ、気温の高さはもちろん、土地柄や食文化などにカルチャー・ショックな日々だったのですが、このアルバムを聴いて、一服の清涼剤のような、クーラーが効いたカフェでよく冷えたスムージーをいただいた(アプレミディでよく飲んでいた)ような、一杯の幸福感のような気持ちになりました。
ちなみに愛知県はブラジル人の住民の数が日本一だそうで、見かける機会もよくありました。
地元根室ではロシア人くらいにしか会わず、新鮮な気分になりました。
職場にいた上戸彩似の気さくな同僚が僕の中のイパネマの娘ならぬ、田原の娘。
せっかく仲よくなったのに、若すぎた僕は、些細なことが気になり疎遠になってしまいました。
その理由は聴いている音楽の趣味が合わない、それだけでした。
心が狭い男はいけない、当時の僕に説教してやりたいです。
そんな2001年の暑すぎた夏の気持ちを思い出させてくれる一枚です。

Morelenbaum²/Sakamoto『CASA』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

2023 Early Summer Selectionからは、イギリスのシンガー・ソングライター、エロイーズをご紹介。2017年にInstagramへ投稿したブルーノ・メジャー「Second Time」のカヴァーにより脚光を浴びた彼女。サウス・ロンドンのアーティスト、コナー・アルバートをプロデューサーに迎え、今春、待望のデビュー・アルバム『Drunk On A Flight』をリリースしてくれました。アルバムは今回のセレクションで選曲させていただいた、まさにブルーノ・メジャー・テイストの「Drunk On A Flight」含む12曲を収録、全編通して素晴らしい作品に仕上がっていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

Eloise『Drunk On A Flight』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

新曲ラッシュで、処理しきれない。まさに贅沢な時間。

心地よかったり、癒されたり、繊細なピアノ・タッチや眠りにつきそうなほどのソフト・ヴォーカルを歳と一緒に追い続けていくんだろうなと片足を突っ込んでいたところに、長年一緒にラジオ番組を作り続けているラジオ・ディレクター からLINEが。

「これ好きじゃないですか?」

と映像が送られてきました。

それは架空の「Top Of The Pops」のチャート・ショウもどきのスタート。

これだけでも期待しますが、なんと、グラウンド・ビートやブレイクビーツ? トリップホップ? ニンジャ・チューンのような、それでいて庶民的な空気感。

毎年夏に必ずセレクトしているNo-Manの「Days In The Trees (Mahler)」に連なるべき名曲。
それはGeorge Clanton、ジョージ・クリントンではなくジョージ・クラントン。

「知らん……」

全英チャート10位止まりのようなインディー〜メジャーの狭間なメロディーも歌声も爽やか。ドラムやサンプリングは完全90年代初期サウンド。

調べれば、Vaporwaveシーンで知られるESPRIT 空想の本名でした。

穏やかな人生半世紀をそろそろ迎えて、じっくり選曲に腰を据えてというところに、こんな温故知新な精神がパンクなサウンド。アドレナリン出すぎです。

久々に片っ端から作品を購入しました。特に2018年リリースのセカンド・アルバム『Slide』は、My Bloody Valentine『Loveless』ぐらいの衝撃的なアルバム。
そんな作品に出合ってしまったので、いうまでもなくテンション上がりめの初夏選曲。とはいえ、温故知新も現在過去の融合もジョージ・クラントンのVaporwave感覚も取得したので、懐かしい90年代の音楽の復活と新作の入れ乱れた楽しすぎる金曜の夜になりました。

この夏はエネルギッシュに過ごしたくなりました。

もっともっと音楽を楽しんでいきましょう!

No-Man『Days In The Trees』

George Clanton「I Been Young」

Dinner-time 金曜日22:00~24:00

Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

スペインはカタルーニャのSSW、Guillem Roma(ギエム・ローマ)が2023年にリリースしたアルバム『Postureo Real』から「Todo y Nada」を初夏の1曲にピックアップしました。トロピカル・フレイヴァーただよう、底抜けにポジティヴなメロディーと、穏やかでフレンドリーなギエムの歌声は、待ちきれない夏の空気にぴったり。キューバやメキシコに移り住み、ラテン・アメリカの音楽や芸術を吸収し、自らの作品へと昇華させた彼のサウンドは、独創的かつ実験的でありながら、誰もが笑顔になってしまう軽やかなポップスに仕上がっています。休日の昼下がり、きりりと冷えたモヒートと、このアルバムがあれば、もう言うことなしです。

Guillem Roma『Postureo Real』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

今年が始まると同時に、多くの偉大なミュージシャンの訃報に胸が打たれました。

特に小学生の頃にリアルタイムで聴いて、未来からやってきた音楽のような強烈なインパクトを受けたYMOの元メンバー、高橋幸宏さんと坂本龍一さんのことが頭から離れません。

改めてお二人から受けた影響は計り知れないと思いました。

敬意を込めて一曲ずつ選曲に織り込みました(幸宏さんとは数回食事をご一緒し、音楽の話を直接聞くことができて、かけがえのない時を過ごせて幸せでした)。



そしてティーンエイジのころからずっと気にしているEverything But The Girlの新譜が今聴けるとは予想もしていなかったですが、感慨深いものがありました。アンビエント的な作品の「Lost」が特にお気に入りです。これからも素敵な作品が聴けることを望みます。



敬愛するミュージシャンは旅立ってしまいましたが、ジョビンや坂本さんが残した言葉を胸に刻んで。
「Ars longa, vita brevis. 芸術は長く、人生は短し」

これからも彼らの作品をずっと聴き続けることでしょう。

Nico Segal『Tell The Ghost Welcome Home』

Everything But The Girl『Fuse』

Body Corp『Unusual For Us』

Hollie Kenniff『We All Have Places That We Miss』

Lagartijeando『La Tercera Vision』

Camões, Bernardo Pinheiro, BENO, Birds Of Rhythm『A Noite D​á​, Mas Tira (Remixes)』

Adrian Younge & Ali Shaheed Muhammad『Lonnie Liston Smith JID017』

Eddie Chacon『Sundown』

Salami Rose Joe Louis『Akousmatikous』

石川紅奈『Kurena』

高橋幸宏『Once A Fool,…  - 遥かなる想い -』

坂本龍一『音楽図鑑』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

「もうすぐ夏ですね」。そんなポジティヴな街の雰囲気に合わせた今回の初夏選曲では、ここ最近ワールドワイドでリヴァイヴァルが熱いメロウでグルーヴィーな現代ポップを中心に90年代のFMを彷彿させるセレクションをお届けします。そんな中から紹介するのは、タイトルそのものが、ずばり今シーズンを表しているAshrockの「Early Summer」。フィーチャリング・ヴォーカルのMoonchildのAmber Navranの心地よい美声と、往年の本物の音楽好きのサウンドが溢れるAshrockのエヴァーグリーンなアレンジが最高な1曲です。

Ashrock「Early Summer」

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

くぐもった空に、まだ涼しい初夏の風がたなびくように、その歌声にはいつもどこか憂いが残る。2020年にビル・ウィザース「Just The Two Of Us」の美しいカヴァーでマイルドな歌声を聴かせてくれた、LAをベースに活動するKauai45ことJustin Huynhのメロウな新作「Risk」。切ないハーモニーを包むFKJことVincent Fentonによるベースも心なしか涙色に映る。

Kauai45『Nice & Steady』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

初夏です。芸能人に全く疎いわたくしですが、ファーストサマーウイカさんという方は、本名が初夏(ういか)で、英語のアーリー・サマーをアレンジしてファーストサマーという言葉を作り、ファーストサマーウイカという芸名にしたのだと最近知りました。なんともネオアコ的な響きの素敵なネーミングですね。恥ずかしながら初夏を「ういか」と読むのもおっさんになってから知ったのですが、これも素敵な名前だと思います。そして彼女はファッション・デザイナーでVANの創設者である石津謙介氏の曾姪孫(自分の兄弟姉妹のひ孫)というのにも驚きましが、平沢進の大ファンだということで彼女に対する見方がガラッと変わってしまいました(笑)。

さて、それでは今回の選曲をご紹介しますと、まずディナータイム前半はカリフォルニアのアーティスト、キャメロン・カーンの音楽プロジェクトである.comと、フロリダはマイアミ出身のアーティストFrancesca Londonoのコラボ作「Wistful」を冒頭に配してスタート。続いてニューヨークを拠点に活動するB.Milesの「The Year I Felt Cool」や、オーストラリアはメルボルン出身のAaron Joseph Russoの「Calzone」、カナダのケベック州モントリオールのアーティスト、Ormistonの「Distortion Of Reality」などをセレクトしていますが、どの作品も穏やかな風を感じる素敵な作品ですね。そしてこの時間帯のお気に入りは、アコースティックな肌触りが心地よいカリフォルニアの女性アーティスト、Kelzがアレックス・シーゲルをゲストに迎えてリリースした「Sometimes」や、ニューヨークで活動するアジア系男女デュオ、Bubble Tea And Cigarettesの「French Movie」です。もちろんいまやヴェテラン・アーティストのナイト・ジュエルやファイストの新作も、それぞれ期待を裏切らない素晴らしい作品で最近の愛聴ソングであります。

ディナータイム後半は、コロンビア生まれでヴァージニア州育ちのシンガー・ソングライターKali Uchisのサード・アルバム『Red Moon In Venus』からピックアップしたとびきりメロウなスムース・ダンス・ナンバー「Endlessly」でスタート。続いてマサチューセッツ州ボストンで活動する女性アーティストLayziの「Idk」、2020年のベスト・セレクションでセレクトした「4 American Dollars」が自分の中でいまだにエヴァーグリーンな輝きを放つU.S. Girlsのニュー・アルバム『Bless This Mess』収録の「Tux (Your Body Fills Me, Boo)」、ニューヨークで活動する女性アーティストCaroline Roseの3年ぶりとなる最新作『The Art Of Forgetting』収録の「Everywhere I Go I Bring The Rain」、ニュージーランドはクライストチャーチを拠点に活動するFazerdazeの「Flood Into」と、良質な女性アーティストの作品を立て続けにセレクト。他に選曲した作品では、最近特にお気に入りのアーティストである、フィンランドはヘルシンキの男女デュオ、Pearly Dropsの4月にリリースされたニュー・アルバム『A Little Disaster』収録の「Kiss Away The Pearly Drops」が、やはり頭ひとつ抜けた輝きを放っています。

ミッドナイトからの選曲は、ワシントン州のカーネイション市を拠点にしているインディー・レーベル、Hush Hush Recordより5月5日にリリースされた、シアトル出身の男女デュオNAVVIの最新EP『V』収録の「Clemency」を冒頭に配し、ドイツはベルリン在住の男女デュオstrongboiの柔らかなグルーヴに包まれた「Flame」、いまやシーンの中堅を担い、インディー・ポップの良心といった感のあるBeach Fossilsの「Don't Fade Away」、ロンドンで活動するマルチ・プレイヤーであり、エレクトロ・シンセ・ポップの才媛との呼び声もあるジョージアの最新アルバム『Euphoric』収録の「It's Euphoric」など、この時間帯も話題のニューカマーを贅沢にセレクト。ジョージアの最新作でプロデューサーを務めたロスタムが以前プロデュースした、クレイロもデモ音源ではありますが、今のところ最新の作品である「For Now」をセレクト。自分の選曲ではもうお馴染みのフランスのレーベル、Nice GuysよりリリースされたPebblなる女性アーティストの「Space Travel」や、ロンドンを拠点に活動するSean PhillipsとMartin Aggroweによる音楽プロジェクト、Private Agendaの「Presence」もお気に入りの作品です。

そしてミッドナイト後半は、ニュージャージー出身のLindsey Radiceの音楽プロジェクト、Pynkieがロシア生まれの女性アーティスト、April Juneをゲストに迎えてリリースした最新作「Scared」から、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアで活動する3人組、Pine Baronsの「Frantic Francis」につなげてスタートしましたが、このPine Baronsの作品は以前選曲に取り入れたあるアーティストの作品にそっくりなんですね。しかし頭の中でメロディーが鳴っているのですが、今はその作品が何なのか全く思い出せません(笑)。他にはちょっとダビーなテイストを放つオクラホマ州で活動する男性デュオ・ユニット、Love Seatsの「Night At The Bar」や、ほんのりとしたサイケデリック感が心地よい、黒人アーティストLos Viiの「Macchina」、ロサンゼルスを拠点に活動するシンガー・ソングライターAlaska Reidの「Back to This」、ロサンゼルスの歌姫Weyes Bloodの「Twin Flame」などをセレクトしています。

さて今回の映画のお話ですが、先日ジャン・コクトーの『オルフェ』の貴重なTV放送吹き替えの一部がYouTubeに上がっているのを発見しました。これはとても貴重なものですが、実は以前ノーカット版がYouTubeに上がっていたのです。しかし残念ながら今は削除されているようですね。この『オルフェ』という作品は言わずもがな、有名なジャン・マレーが横たわるシーンがスミスの大名曲シングル「This Charming Man」のジャケットに使用されていることでも有名です。自分が高校生の頃、この最高に素敵なシングルの、最高にかっこいいジャケットの映画がどうしても観たくてモヤモヤしていたときに、名古屋は今池にあるミニ・シアター「シネマテーク」でリヴァイヴァル上映されることを知り、とても興奮して前売り券まで購入して観に行った思い出のある作品です。そのときはフランス語に英語字幕という形態だったので、内容はさっぱりわかりませんでしたが(笑)、ジャケットのシーンがスクリーンに映し出されたときの感動は今でも忘れません(しかし実際は映画には存在しない別カットなんですが……)。今では国内盤DVD(数種類出ていますがどれも画像は酷く、字幕も酷い)と、高画質の海外盤ブルーレイを購入してしっかりとその作品に向き合うことができますが、前述した吹き替え音声を収録した高画質ブルーレイなんてものが発売されるといいですね。さらにもうひとつトリヴィアを付け加えると、日本語吹き替え版は3社のTV局が(正確にはフジテレビが1種類、TBSが2種類)それぞれ異なった声優を使って制作し、3種類もの吹き替え版が存在するそうです。

.com & Francesca Londono「wistful」

B.Miles「The Year I Felt Cool」

Aaron Joseph Russo「Calzone」

Ormiston「Distortion Of Reality」

Kelz feat. Alex Siegel「Sometimes」

Nite Jewel「This Time」

Kali Uchis『Red Moon In Venus』

Layzi「Idk」

U.S. Girls『Bless This Mess』

Caroline Rose『The Art Of Forgetting』

Fazerdaze「Flood Into」

Pearly Drops『A Little Disaster』

NAVVI『V』

Strongboi『Strongboi』

Georgia『Euphoric』

Clairo「For Now」

Pebbl「Space Travel」

Private Agenda「Presence」

Pynkie feat. April June「Scared」

Pine Barons「Frantic Francis」

Love Seats「Night At The Bar」

Los Vii「Macchina」

Alaska Reid「Back To This」

Weyes Blood『And In The Darkness, Hearts Aglow』

Dinner-time 日曜日22:00~24:00

Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

つい先日、橋本徹さんのコンパイラー人生30周年を記念してリリースされる、コンピレイションCD『Merci ~ Cafe Apres-midi Revue』のライナー・ブックレット掲載用に、橋本さんと対談したところです(こちらはHMVのウェブサイトにも掲載されます)。最初、対談の相手が僕なんかでいいのかなと、恐縮してしまいましたが、話も盛り上がって、とても濃いエピソードばかりで充実した内容になったのではないかと思います。以前にもこちらでコメントしましたが、実は僕も今年はリスナー人生30周年ということで、改めて、橋本さんの活動と共に音楽ライフをすごしてきたんだなと、感慨深い気持ちになりました。そう、30年前の初夏の日も、部活帰りに買ったばかりのフリー・ソウルのCDをウォークマンに入れて聴いていたのです。そんな甘酸っぱい青春時代を思い出しながら、皆さんの日々にも幸福な光が差すようにと、このアーリー・サマーの選曲を手掛けました。ヘイリー・ブリネルによるドナルド・フェイゲンの名曲「Walk Between Raindrops」のスウィンギーなカヴァーが、瑞々しい光あふれる季節を素敵に演出してくれそうです。

Hailey Brinnel『Beautiful Tomorrow』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

“人生を狂わされた”なんてあまり無思慮に使いたくはないけれど、ただそんなことって、心を打たれたちょっとした出会いのひとつひとつ──曲でも、本でも、映画でも、絵画でも──が、知らないうちに少しずつ積もり積もって、なんだか本人も気づかないうちに運命の舵が大きくきられてしまっていた、なんて感じじゃないかと思ったりもしますが、1980年に多くの地域のレコード店の店頭を席巻していたであろう、YMOのいわゆる“Live at Greek Theatre”の1979年の映像(の中でシンセサイザーを操る坂本龍一さんの姿)を観たときほど、後々“人生を狂わされた”と確信できたデカいものはなかったのです。もうそれからは手に入る坂本関連、すべて買った。「OMIYAGE」「YMO Book」はもちろん、登場する雑誌でも坂本さんが紹介しているものはすべてチェックした(なんなら村上春樹さんをそこから知ったり)。NHK-FMの「サウンドストリート」はすべてカセットに録った(なんならフィフス・アヴェニュー・バンドは長門芳郎さんゲスト回で知ったり)。そしてなにより、ポップ・ミュージックにたずさわる側にいながらも、現代音楽から民俗音楽、さらにはアート、思想・哲学が相反せずつながる音楽の芸術性の奥深さへ導いてくれたことに、ただただ感謝しかないのです。

今回のセレクションで冒頭に置いたのは、坂本龍一さんの楽曲のスコアを書き写すことから新しい作曲の手法を導き出し、アコースティック・ギターの独奏による初のソロ作品を発表した、ミュンヘンのエレクトロニック系ミュージシャンであるJonathan Bockelmannの「Whitepoint」。その繊細で自由な音の連なりは、坂本さんも愛したであろう若葉を濡らす今の季節の雨音を思わせるようです。

──“自然(ピュシス)をできるだけありのままに記述する言葉(ロゴス)、より解像度の高い表現を求めることをあきらめないこと。そのためにこそ音楽や科学や美術や哲学がある。文化と思想の多様性がある”と記されていた生物学者・福岡伸一さんと坂本さんの対談本の中で、生命の循環、そして寿(ことほぐ)命について語られていたことが、坂本さんの逝去に触れて大きく揺らいだ気持ちに、なにかやわらかな安らぎのようなものを与えられた気がして、少しだけ救いとなったのです──。

Jonathan Bockelmann『Childish Mind』

Giorgio Tuma『We Love Gilberto』

Jana Horn『The Window Is The Dream』

Shir Frum『Party Pooper』

Kingo Halla『Empty Hands』

Tim Bernardes『Lagniappe Session』

Maria Luiza Jobim「Boca de Açaí」

Maxine Funke『River Said』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

今回のセレクションは、坂本龍一さん追悼という色彩がとても強くなっています。普段ならアーリー・サマーという季節感を意識して選曲しているのですが、今回はそういう気持ちにあまりなれませんでした。職業選曲家としては失格なのでしょうが、長いセレクター人生なのだから、そうでない形の選曲もありだなと今回は気持ちを切り替えました。長い連載小説の中でちょっと変わった回になっているという風に思っていただければ幸いです。



坂本さんの訃報を聞いたのは 4月2日(亡くなったのは3月28日)。もちろん、それまでに彼の病状は伝わっていたのでいつかはこの日が来ると思っていましたが、実際にそのニュースを知ると激しいショックに襲われ、僕はふたつのことを思っていました。ひとつは人はいつか死ぬのだという当たり前ながら冷徹な事実です。僕が物心ついてから、坂本龍一という音楽家は常に自分にとって当たり前の人として存在していて、その人がいなくなるということが信じられませんでした。もうひとつは、坂本さんが僕に本当に大きな影響を与えていたということです。ある意味、彼は僕にとっての“グル=導師”のような存在だったと言えるのかもしれません。要は音楽だけでなく、現代思想の紹介者としてやものごとに対する価値観といったところで影響を受けていたということです。中流階級の家に生まれ、学生運動に身を投じ、リベラルな考え方を体現していた人でした。「commmons: schola」というシリーズや『耳の記憶』というコンピレイションで、バッハやドビュッシー、ラヴェルといったクラシック作家の作品を耳だけでなく、文字で説明してくれていたことにもとても刺激を受けました。ちょうどUSEN選曲を始めて、自分の個性について考えていた頃です。新しい音楽に対する興味や関心は常にありましたが、過去の素晴らしいものに対するリスペクトも同時に存在していたので、「昔の音楽にもいいものはたくさんあるんじゃない?」という気持ちはそれなりに強く、それがクラシックを中心とした音楽に対する興味、関心に向かいました。



さて、僕が「usen for Cafe Apres-midi」チャンネルでよく使った坂本さんの曲をいくつか紹介します。まずは「Psychedelic Afternoon」。デヴィッド・バーンによる、ヒッピー讃歌という感じのユーモアあふれる歌詞も素敵なボッサ・ナンバーで、この曲が入っている『sweet revenge』はリアルタイムで初めて聴いた坂本さんのアルバムだったということもあり、かなり偏愛しています。次は「Neuronian Network」。ほとんどニューエイジと言ってもいいテイストで、1979年にこのサウンドをやっていたことに驚かされますが、アコースティック・ピアノを使っていることがこの曲のマジックを生んでいると思います。ジャキス・モレレンバウムとの素晴らしいジョビン・トリビュート・アルバム『CASA』を通過して生まれたのであろう「Ngo」にも触れたいですね。これはニューバランスの CMに使われた曲なのですが、すごくジョビニズムを感じさせる曲になっていて、僕はややテンポの速いシングル・ヴァージョンをUSENではいつも使っています。あと、今回発見したのは2009年作『out of noise』からの「hibari」。ポスト・クラシカル的なニュアンスを感じさせる曲で、僕はこのアルバムをリアルタイムでは聴いていなかったのですが、今回耳にしてドビュッシーの「Reflets dans l'eau(水に映る影)」の次に置くのが相応しいなと思いました。そして最後に選んだ「fullmoon」。坂本さんが昨年から「新潮」で連載していて、6月に単行本になるインタヴュー集のタイトルは「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」でしたが、それは坂本さんが音楽を担当した映画『The Sheltering Sky』の台詞なんですよね。それもサンプリングされている曲で、当時から坂本さんは残りの人生というものについていろいろと考えていたんだろうなと想像させられます。最近読み返した坂本さんの本の中で、「親しい人を亡くしたときに、いかに自分がその人のことを知らないかということをいつも感じる」と書かれていましたが、本当にそのことについても考えさせられました。坂本龍一さん、心からご冥福をお祈りします。

Pascal Rogé『Debussy: Piano Works』

坂本龍一『sweet revenge』

Morelenbaum²/Sakamoto『CASA』

坂本龍一『async』

Bobby Caldwell『Cat In The Hat』

The Ahmad Jamal Trio『The Awakening』

Cécile McLorin Salvant『Mélusine』

Benny Sings『Young Hearts』

9th Wonder『Zion Vlll』

Yazmin Lacey『Voice Notes』

Brandee Younger『Brand New Life』

Eddie Chacon『Sundown』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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