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たいした理由もないのに、なんか気分が落ちています



こんばんは〜

今日はクリニックの2周年記念イベントがあって、ものすごく楽しかったよ〜
遊びに来てくれた方、ありがとうございました〜



さて、今日は最近よく患者さんからされるこんな相談に答えていこうとおもいまーす。


特に理由があるわけじゃないのに、なんか気分が落ちてしまいます。原因が思い当たらないから、どうしたらいいかわからないんですよね。


あるよねー。

原因がわかれば対処もしやすいけど、理由が思い当たらないと何に対処していいかもわからないからこまるよね。


そんなときに、自分に何が起こっているのかを整理するためのストレス心理学的な枠組みのことについてちょっとシェアしようかとおもいます。

(最近、またストレスのことについて勉強するのがすげー楽しくて、ストレス理論の歴史とかをいろいろ見てるんだけど、まあ面白いんだよね。「ストレスとは何か」っていうのはけっこう哲学的な問いで、奥が深いな〜とおもうよ)


自分が何にやられているのかわからないときに「ストレッサー区分モデル」というのを考える。

いろんな分け方があるんだけど、心理的なストレスとなりうる出来事(ストレッサー)は大きく次の3つに分けることができる。


①「カタストロフ」/catastrophy
これは、震災とか戦争のような、今生きている社会がゆるがされるような大事件のこと。今回のコロナウイルスのような騒ぎも含まれるかもしれない。
画面全ての敵に全員200以上ダメージを与えるようなイオナズンやギガデインのような感じだろうか。


②「ライフイベント」/life events
例えば大切な家族やパートナーが亡くなったり、失業したり、借金をしたりといった個人の人生における大きな変化がこれにあたる。
一発でしとめられることはないかもしれないけど、着実に2桁台のダメージを食らわせてくる、メラミやヒャダルコのような感じかな。連続で食らうとかなりきつい。

③「デイリーハッスル」/daily hassles
ドラクエの特技に味方全員の体力を回復する「ハッスルダンス」っていうのがあるんだけど

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それは「活動的な行動、がんばり」という意味でのHustleで
ここのハッスル(Hassle)は、面倒な状況、という意味。
日常生活で出会う、小粒でちょっとしたストレッサーのこと。


電車で隣に座った人の香水がきつかった、SNSで好きじゃない感じの口調の投稿をみてしまった、たんすの角に足をぶつけたとか、流しが汚いとかそんな感じのやつね。


デイリーハッスルは、一つひとつは大してダメージにならない。
1歩歩くと1ダメージだけ食らう「毒の沼地」みたいな感じだろうか。
でも、だからこそやっかいなのは自分でも気づかないうちにダメージが蓄積してしまうことだ。

①カタストロフや②ライフイベントは、自分でもストレスを自覚しやすいんだけど、③はかなり意識していないと気づかないし、気づかないものには対処できない。だから、一つ一つのダメージは1とか2とかでも、慢性的に食い続けていて気がついたらHPが瀕死、みたいなことがわりとあるんだね。

ストレス理論で有名なラザルスさんとフォルクマンさんは、むしろこういった誰もが頻繁に経験する些細なデイリーハッスルの積み重ねが、心身の健康状態に最も影響すると言っている。

とくに、小さなことにダメージを受けやすい繊細さがある人ほど、自分が何に傷ついているのかを細かく知ることが必要だ。



冒頭の「特に理由があるわけじゃないのに、なんか気分が落ちてしまう」という相談。この「特に理由があるわけじゃない」場合っていうのは、デイリーハッスルが原因になっているケースがあるかもしれないね、ということをよくお話ししている。

自分でも気づかないところで1ダメージずつやられているという可能性があるわけね。
だとしたら、有効になるのが「小さなダメージ(デイリーハッスル)にちゃんと気づいて、記録していくこと。


対人関係においても、ちょっとあの言い方気になるなぁとか、あの態度ちょっと嫌だったかもな、とかって思うことあるよね。僕はこれを「小骨」って呼んでるんだけど、こういう小骨を無かったことにせず、「あ、今小骨ささってんな」っていうのを自覚して、できれば記録していく。(少なくとも、記憶しておく。)


とくに身近で重要な対人関係においては、こういう「小骨」レベルのことがいちばん言いづらかったりするんだよね。お互いイイ関係でいたいからこそ、致命的なことは言えても、ちょっとひっかかったくらいのことは「言うまでもないかな〜」と飲み込んでしまうことが多い。


その人とどのくらい正直度の高い関係でいたいかによるんだけど、なるべく「言えないことがない正直な関係」でいたいとするならば、お互いの「小骨」の有無を確認する機会というのを定期的にもうけたほうがいいなとおもうよ。
(というか、普通に誰かと接していたらそうした小骨がいっこも無いことのほうが珍しいんじゃないかともおもうのよね)

なので、関係のメンテナンスの一手段として、お互いの小骨の有無を確認しあう「小骨デー」みたいなのが、1ヶ月に1回くらいあるのもいいかもね。



あと、もうひとつ。2つめの区分である「ライフイベント」についても知っておいてもらいたいことがある。


ライフイベントっていうのは、例えば大切なパートナーがなくなったり、失業したりといった個人の人生における大きな変化のことだった。でも実は、こういったネガティブな変化だけでなくポジティブな出来事もすべからくストレスをもたらすものであると言われているんだよね。


「ライフイベント」研究の中で最も有名かつ、ストレス研究関係の論文で最も多く引用されている、このHolmesとRaheの「社会的再適応評価尺度」というのをみてほしい。

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これはあらゆる変化がどの程度心身に影響を与えるかを数値化したものなのけど、見るとわかるように「あたらしい家族ができる」「休暇をとる」「習慣の変更」「住居の変化(引っ越し)」といったポジティブな変化に含まれているんだよね。


「引越しうつ病」なんて言葉があるくらい、環境の変化というのは僕らに強い影響を及ぼす。ネガティブであれ、ポジティブであれ「変化」というのはすべからくストレスになりうるってことなのね。

もしかすると「理由がわからないと落ち込む」という人は、ここに載っているような変化が最近自分になかったかを思い出してもらえるといいかもしれない。ポジティブな変化がストレッサーになっているという可能性もなきにしもあらずなので。


さて、今回はちょっと真面目にストレスについて話してみました。
ドクターみたいでしょ?(笑)



僕は最近はスプラトゥーンのせいで、とにかく身体が硬直していることに気づかされたね。
ストレスの本質は、さまざまな環境刺激により交感神経優位になり血流が低下することで起こる諸症状だと思っているんだけど、そういう意味ではスプラトゥーンは、身体に悪いよね。やめないけど。


今日はこのへんで。

きょうの2周年イベントのアーカイブ(「スプラ頭痛〜ん」とかいろいろ入ってる動画とか、4時間くらいのやつ)と石井ちゃんが笑ってコラえて!に出た次の日に録音した雑談Radioをマガジンの方向けに貼っておきます。
寝ながら気楽にみたりきいたりしてね。


それでは、take good care〜


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