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数学の面白い問題

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左確率行列の固有値問題

左確率行列の固有値問題

Introduction左確率行列は、各列の要素の和が1になるような非負値正方行列のことです。例えばwebページの閲覧遷移を表現するために用いられています。この場合、i行j列の要素の値はページjからページiへのユーザーの遷移確率です。こうすることで、右から現時点で各ページが閲覧される確率を表すベクトルをかけることで、次の時点で各ページが閲覧される確率を求めることが出来ます。

さて、初期時点で各ペ

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行列STと行列TSの0でない固有値は同じであること

行列STと行列TSの0でない固有値は同じであること

本日は、「行列STと行列TSの0でない固有値は同じであること」を示しましょう。例えば行列Aの特異値分解などで、S = A, T = Aの転置行列という形でお目にかかる事実です。この定理は証明がたのしくて

det( Em - ST ) = det( En - TS )

という面白い等式にもつながっていたりします。(ここで、Enはサイズnの単位行列です。)

問題

解答

いかがだったでしょうか

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二項分布の最頻値

二項分布の最頻値

今日は二項分布の最頻値を求めてみましょう。統計学に親しみがある方は、一度興味を持ったことがある話かもしれません。実は、前回ご紹介した数列の最大値を求める問題の自然な類題になっています。ぜひ考えてみてください。

問題

解答

他の離散型確率分布(ポアソン分布や超幾何分布など)でも同様の計算をたのしむことが出来るので、ぜひ皆さんも試してみてください。少し計算が楽しくなるかもしれませんよw

有理数列が整数値をとるタイミング

有理数列が整数値をとるタイミング

今日は、ただ理由もなく気に入っている問題をご紹介。出典は大学入試問題、2018年度東京大学理系第2問です。

問題

解答

なお n ≧ 4 で a[n] / a[n-1] < 1を満たすので、この数列は n = 3 で最大値を取ったあとは単調減少します。さらに a[n] を計算していくことで n = 8 でついに1未満になってしまうこともわかります。なので、実際には a[1], a[2], .

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数列の最大値を求める

数列の最大値を求める

数列{a[n]}の最大値を与えるindex nを求める問題を考えましょう。このとき、数列 b[n] = a[n+1]/a[n] に注目する方法は良く知られています。
1. b[n] が単調減少な数列であることを示す。
2. b[n] ≧ 1 を満たす最大のnを解く。
このときindex n+1は、数列 {a[n]} の最大値を与えます。(数列 {b[n]} が単調減少であるという条件は本来強すぎる

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