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ショートショート:君はこれから僕の知らない男のところに抱かれに行く(無錫の夕日)

 無錫の夕日は今日もいつもと同じようにぼんやりと浮かんでいる。こうして君と手を繋いでバス停まで歩くのもこれが最後になるかもしれない。

 バス停に着いた。バスが来た。行き先が違うバスだった。

 君の横顔を見た。ぼんやり夕日が君を眩く映していた。頬を伝う涙が僕を奈落の底に落とした。

 君はこれから僕の知らない男のところに抱かれに行く。

 今頃になってやっと気付くんだよね。君の大切さを。

 次のバスは君が乗るバス。それに乗ってこの街を離れると、君は僕から自由になれる。

 君は繋いだ手を離しバスに乗り込んだ。

 僕は泣いた。頬を伝う涙が僕を奈落の底に落とした。

 君はこれから僕の知らない男のところに抱かれに行く。

 今頃になってやっと気付くんだよね。失うものの大きさに。

 大気汚染に侵された夕日は、ぼんやりと浮かんだままだった。


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