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インドネシアの小さな村で


「アティー!ジャランジャランしよう!」


子どもたちが勢いよくわたしの部屋に入ってくる。

マンディを終えたばかりの私の髪はまだ濡れたままだ。

「アティー!はやくはやく!」

背中を押され、腕を引かれる。

アティーとは、ここでもらった名前だ。

わたしは急かされながら表に出る。

土煙舞う、乾いた道が何処までも続く。

灼熱の太陽の下、私たちは歩く。

あてもなく、どこまでも。

太陽みたいな子どもたちが歌いだす。

単純なメロディー。気持ちの良いメロディー。

わたしはこの歌を忘れないように
五線譜に書き留める。

こころの五線譜に。


ジャランジャラン(JalanJalan)とはお散歩のことだ。Jalanは、動詞で「行く」、名詞だと「〜通り」を意味する。


インドネシアの小さな村で過ごした日々と
ジャランジャランという言葉の響きを
わたしはずっと覚えている。


今日の一冊 『世界のことばアイウエオ』黒田龍之介(筑摩書房)




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