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【詩】龍の凧

7歳のぼくが両腕を広げたくらいの凧

ダイヤの形をしていて真ん中に龍が描かれている

今年の干支じゃないけれど空を舞うなら龍がいい

太い糸をしっかりもって風のながれをみながら

青空にぐんとあげる

1度目は落っこちた

2度目はくるくるまわってあがらない

3度目は……そうそうあきらめちゃダメだよね

ちゃあんとあがったよ

緑広がる野の原で

雲ひとつない空を龍が舞う

本物じゃないよ

ただの絵だよ

おばあちゃんの家の近くにある小さくて古いお店

駄菓子やお面

メンコにベーゴマ

古いおもちゃがそろってる

何でお正月に開いてるんだろう

でもいっか

僕は凧が欲しかったんだ

空の上の上の上の

ずーっと遠くまで飛びそうな凧

僕も一緒に連れて行ってくれそうな凧

お店にいたおばあちゃんはにっこり笑ってこう言った

「絶対、糸から手を放しちゃダメですよ」

当たり前だよ

僕は絶対手放さない

ぴゅーと風が吹いて凧が揺れる

あれれれれ?

気づいたら僕の体が浮いていた

慌てて地面に足をつこうとしたけれど届かない

凧が風にのってぐーんっと揺れる

龍が空を飛びたがっているみたいだ

下を見てぎょっとした

僕の足がさっきよりも浮いている

どこに行っちゃうの?

思わず糸から手を放す

地面に足が着いたときよろけたけれどホッとする

凧はぐんぐん空にのぼって見えなくなってしまった

あのまま握っていたら僕はどこに行ったんだろう

ぞくぞくするようなわくわくするようなきもちでいっぱいになる

龍の世界に行けたのかな

ぶるぶる首をふって家に戻った

龍の世界にいったらどうなるの

龍の世界にいったら楽しいの

わくわくどきどきがおさまらない

次の朝、目が覚めたら僕の部屋のベランダに

昨日空にのぼったはずの凧があった

凧をそっと手に取って考える

次は糸を放さないでいようかな


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