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【詩】永遠のクリスマス

雪降る街にひとりきり

足あと残すの自分だけ

今日は聖夜だ

なのに誰もいやしない

扉もなく屋根もない

崩れたレンガの壁の向こう

ろうそくとささやかな食卓を囲う家族

ぼんやりと照らされた明かりは

月の光よりもか細い

あるような気がした

みえたような気がした

目を凝らせばかき消えて

ただただふんわりとした雪が積もっている

鈴の音はどこから聞こえる

夜空を駆けて行くトナカイは

どこかで眠る子どもたちのもと

瓦礫と化した家々は訪問者を拒むよう

しんと静まり返っている

自分が来るのも嫌なのかもしれない

肩にかついだ袋が重い

いつまでも背中にのしかかる

約束のプレゼントは渡せずじまい

今も待っているのか

もう待っていないのか

どちらにしてもやるせない

街のいたるところに穴が空き

石が転がっているけれど

たったひとつだけ大きな明かりがともる場所

雪の積もった石段を上り

そっと扉を開けると明かりが招く

人々の顔がこちらを向く

廃墟と化した街の中

たったひとつ明るい場所

「メリークリスマス!」

大声で叫んで袋を置いた

さざめく声から逃げるようにして

扉を閉める

ひとつきりの足跡

その上を歩いて戻っていく

胸苦しさを抱えて急ぐ

朝日がのぼれば

人が集まっていた教会も廃墟となっているだろう

戦争で破壊された街

教会へ避難したひとびと

その上を降り注いだ砲弾

誰一人として生き残っていなかった

本当は何もない

何もないはずだ

それなのに12月24日の夜だけ

教会があらわれる

見知った人々が集まっている

生きているときと同じように

いつものクリスマスと同じように祈りを捧げている

一体、何を祈るのだろう

自分はひとり生き残った

再建されないまま放っておかれている街

毎年通ってる

聖なる夜にはプレゼントを持って

親しい人々へ花を届ける

魂が安らぎ癒されるようにと

街のひと

ひとり残らずいなくなるまで

プレゼントを届け続ける

サンタにはなれない

サンタなんかじゃない

それでも自分しかいない

12月24日

教会が現れなくなるまで

毎年

贈り続ける

クリスマスの奇跡を願って

来年もその先も永遠に

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