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【詩】道案内

ふりむいたら誰もいなかった

前を見ても誰もいない

たったひとりきりで歩む道

心の声にしたがえばいい

心の声ってどこにあるの

どこからともなく現れた

うるさい羽虫がとびまわる

ああすればいい

こうすればいい

みんなこうしているじゃないか

それなら安全だ

確実な道を選べばいい

うわんうわん飛び回る羽虫

音はしないはずなのに

ぐわんぐわんと頭の中をかきまわす

頭の中に殺虫剤でもまければいいのに

羽虫がいなくなって無音になった頭の中に何が浮かぶだろう

羽虫から意識をそらして

静かな湖面を想像してみた

誰も立ち入らない森の奥深くにある湖だ

静かな静かな湖

静けさに身を任せていると

いつの間にか羽虫はどこかへ行ってしまっていた

今度は心臓がうるさく音をたてはじめる

頭が静かになったからこそ心臓がうるさく思いはじめたのかも

どくどくと音を立てて急き立てる

ああよかった

ああよかった

このまままっすぐ進めばいい

ぴょんぴょん胸の中ではねる

私の体のなかにいるのがもどかしいようだった

心臓が飛び出して

私の前を歩きだしそうなくらいだ

怖いような嬉しいようなほっとしたような

生きる心臓の音が頼もしかった


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