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【詩】自分にしかわからない風景

ファインダー越しにのぞく
ファインダー越しといってもスマホ
竹藪の奥をのぞき込むようにスマホを向ける女性

何があるんだろう
竹藪の中に何があるんだろう
狂い咲きした花だろうか
散歩中に見かけたソメイヨシノの木
うっすらとピンク色に染まっていた

竹藪の中で何かが咲いているのだろうか
竹藪からはなれた女性と入れ替わるようにそばに行く
通り過ぎるときに目を向けた

何もなかった
竹藪だった
枯葉ばかり
冬に向かって朽ちていくばかりの場所
本当に何もなかった
何もなかったようにみえた
一体、何を撮ったんだろう

ファインダー越しにどんな風景を見たのだろう
誰がみてもわかる風景はある
花や空や紅葉
わかりやすい対象物はみてるこっちも心が和む

でも、撮っている本人にしかわからないものもある
こちらがあれこれ考えてもさっぱりわからないのだ

何を撮ったのだろう
何をみていたのだろう
何に心が響いたのだろう

一体、何を撮ったのか
わかるときはくる

一枚の写真になったとき
ファインダー越しにのぞいていた景色が
私にはわからなかった世界が
クリアに浮かび上がる

彼女が撮りたかったものが
何もないと思っていたものの中に

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