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詩や呪文など

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記事一覧

炎症

2000ケルビン 亀裂にはモルタル
折れ線グラフで見れば真っ赤

金魚に白カビ ブロックノイズ
引っ張れば取れるとでも思って

透明で石灰質 じゃあ標識は置いてけ
老人か乳児かも知らない

顔面はコウモリで 骨格は野良犬
工具屋の株でも買おうか

救われた奴には何処で会えるか
晩飯は鯖缶 心という言葉は使うまい

考察Wikiみたいなノリで語るな

あと数億年は生きたい

宇宙のしもべ

きみよただ真っさらに
宇宙のしもべであれ

液晶画面に焼き付けられた
放物線に平伏すでなく

時計の針に切り刻まれた
切断面に怯えるでなく

ただ真っさらけの素っぽんぽんに
宇宙のしもべであれ

かつて空に飽きた星々が
ちりぢりに膨らんで旅に出た
その末裔がきみなのだから

山椒魚

ただいまと言いたかった世界に
許されただけの姿で

水面と呼べる所へ
身体を伸ばし触れるため

擦りむいてきた指に
草木の露がしみている

山椒魚は胸の中
水も空気も満たせずに

宙へ跳んだら雫になって
川へ潜れば泡になる

山椒魚は皮膚の外
ヒレも手足もおよばずに

なしのつぶては岸辺をはねて
声のつぶれた波になる

おかえりと言わなかった世界に
裁かれるだけを恐れて

人類はもとより海賊なのだから森の掟は気にしなさんな

増長せよ

増長せよ。きみは聖地だ。
星々のなきがらを宿して生まれた。

増長せよ。きみは祭壇だ。
青空と雨とを託されて生まれた。

増長せよ。きみは神話だ。
太陽の一切れを頬張って生まれた。

名前を与えられるよりも先に、
聖地で、祭壇で、神話であるきみよ。

ことわりもなく胸を張り、
ふんぞり返って今を生きよ。

月の、意図のない光は

月の、意図のない光は、

月の、意図のない、赤子の光は、

地球の生き物には、
とても難しく、有りがたいものなので、

虫も、魚も、獣も、人も、
しぜんと吸い寄せられていくのです。

ひとつぶの森。
だだっ広いしずく。

月には、どれだけ細かに
見えているでしょうか。

どれだけ細かに
見たいのでしょうか。

ほんの僅か届くはずのうねりに、
巻き込まれ、加担して、死んでいきます。

泣いてる君に言いたい。歴史は君を殺せない。

泣いてる君に言いたい。

「はずだった」と「べきである」は
全くもって別物なのだと。

君には、
ガリ版で書く義務も無いし、
蓄音機で聴く義務も無い。
ましてや原始人の後追いみたいな
死に方をする必要も無い。

君は今を生きている。

本来なら云々なんてのは
ただの幽霊なのだから、
生きてる君が明け渡すべきものは
何一つ無いのだ。

そもそもかくいうあいつらだって、
眼鏡を掛けているし、
銀歯も入

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お行儀と心中なんてしなさんな
名詞はすべて腐敗するから

ファンファーレは鳴らない

ひとが大人になるとき
決してファンファーレは鳴らない

いつにも増して静かに
ただ薄皮ひとつの解放があったなら

その日は何より御の字というだけ

雨の夜 くるまの音や町灯り
のっぺらぼうに ふやけて溶けて

アスファルト紀の地層にて

さあ帰ろう

もうじき夜が来て
陸地と海とが裏返るよ

待ち切れないクラゲの
漂う街を歩けば

今日を生きた罪は
道路が平らげてくれる

未来の獣たちが
きっと見つけるだろう
アスファルト紀の地層は

どんなデタラメで
色付けて貰えるのかな

夜道の石ころ

郵便受けから三歩先の夜道

街灯のそっぽにグラリと引っ付いて

地球の血肉に混ざりそこねたと
咽び泣いている石ころ

名前をつけるなら急がなくちゃ

的確な言葉なんて
ひと欠片とも込めないために

きっと朝には見え透く色や形を
裁きたくなってしまう前に

よく分からないこれ

手のひらの中
ずっと大事に握りしめてる
これは一体何なのか
よく考えたら分からない。

かつて幼い頃にだけ
機能していた臓器の
成れの果てかもしれない。

街中の電子看板を
1ミリずつ剥がして作られた
コラージュかもしれない。

出生のどさくさで
頭蓋骨に埋められた爆弾の
スイッチかもしれない。

ミミズと大差無い姿の
ご先祖様から受け継いだ
変身アイテムかもしれない。

捨て方のルールが煩雑すぎ

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焚き火の末裔たち

いつもより肋骨が重い夜

ズボンだけを着替えて
外へ繰り出せば

野放図に輝く
焚き火の末裔たち

生まれてずっと
その渦中にいながら

一体何が
ニセモノに見えていたのか