シューティング或いはSTG或いはシューター或いはFPS或いはTPS或いはShmup或いは……

 シューティングゲームと呼ぶべきジャンルが大きく2つ台頭して、随分長い時間が経ちました。即ち、FPS/TPSと、縦シュー/横シュー、この2つです。

 先ず後者の、縦シュー/横シューから取り上げます。例えばドンキーコングっぽいゲームとスペースインベーダーっぽいゲームがあったとして、前者は重力とジャンプがあるのでジャンプアクション、であれば後者は、弾を撃つのでシューティングと呼んだ……のだと想像しています。今回これらを、便宜上、STGと呼称します。
 初期のSTGは確かに、狙って撃って外して死ぬ、画面上に撃てる弾数が限られたものだったり、対地攻撃が不自由なものだったり、その起源は狙い撃つゲームとしての特性を備えていました。
 そこから、対空対地の撃ち分けを取り払ったスターフォースによって、素早く連射する技能にSTGが一度フォーカスしました。しかしこれは外部装置、連射パッドやら定規ビロビロやらでハードウェアチートが容易であるという特性から、オペレータ毎の格差を生み、最終的にはソフトウェア側でハードの差を避ける実装がなされることになります。
 最も分かりやすいのはソフトウェア連射ですが、初期の試みとしてはR-TYPEの溜め撃ち、小粒の火力的価値が低く本体攻撃としては溜め撃ちが最もDPSの出る行動で、対空レーザーもアニメーションによる連射キャップが存在しました。厳密にはフォースショット分連付きが有利ですが連無しでも十分快適にプレイ可能であり、1ボタンに3つの特性(溜め撃ち/フォースレーザー/フォースショット)を持たせる発想は1987年のものと思うとオーパーツ感すらあります。

 これは余談ですが、溜め撃ちの発明自体は'84年フォーメーションZと言われていますが、フォーメーションZの溜め撃ちは上記のものと毛色が違います。火力的補佐ではなく、破壊可能な敵機が通常弾と溜め撃ちで違うのです。つまり別レイヤーの攻撃を1つのボタンにまとめたのが発明、例えるならゼビウスのブラスターが溜め撃ちで出る(ので、2ボタン目に別の役割を充てることができる)。さらに重ねると、ボタンの押下時だけでなく、離すタイミングにも気を使うゲームとしては'82年ノーティボーイが存在します。1ボタンの状態が多いゲームといえばマーズマトリックスの4種類(連射/離し押し/ちょい溜め/溜めすぎ)は圧倒的ですが、3ボタン以上の組み合わせ各種同時押しが超多い上に自キャラの状態によって役割が変化する格ゲー等対戦ゲームも、改めて冷静に見ると結構やり過ぎだったりします(或いはゲーマーの進歩かもしれません)。

 こうして撃つ側面に於いて、STGは公平になっていきます。公平というのはつまり競技性が無いことです、誰が弾撃っても同じということですから。
 しかしアーケードというのは、上手な数人をサクラに下手糞から金を巻き上げる興行形態です。下手糞がやっても同じじゃ困る、下手糞には不様に死んで貰わねばなりません、大体3分くらいで1度。そこでSTGは直接的な死、敵弾いじくりに重きを置くことになります。
 大体、達人王がコケた後辺りからでしょうか。ステージ構成はテンポ良く、敵の硬さもテンポ良く、でも3機に1機くらいは弾撃つまで長生きして欲しいので画面上部に敵専用の無敵地帯を、それからあんまり後ろから空中ザコをドバドバ出さず、誘導弾もあんまホイホイ1面で出さず、撃って損するようなパーツを露骨に前面に出さず、自機の判定は中心ではなく見た目の重心に、自機狙いは自機の先端を狙って、取るとうんざりするようなアイテムは冷める、スコアの桁は派手なほうがウケる、敵の弾も少ないより多いほうが見た目ウケる、となれば自機の判定も一回りと言わずもっと小さくても……。
 大方はつまり、達人王たることなかれ、のことです。いえ、達人王の時点で既に自機狙いは首先を狙っていましたが、それ以外の部分、というよりもっと曖昧な……手触りの部分で、達人王とその後'90年代中頃のSTGは大きく異なります。どれだけ露骨な何がしのパクりだとしても、そこそこ遊べる。その手触りは全て、大爆死した達人王の逆張りによって果たされています。
 そして、'90年代中頃のSTGの攻略とは、如何に撃つかというより、如何に避けるか撃たせないか、直接的な死である敵弾の処理に傾倒していきます。

 2つほど補足しておきます。
 1つは、上でボロクソに言った達人王。当時は一旦この価値観全部ダメってことになったっぽいんですが、今そういうモノとして遊ぶと結構遊べます。発売は'92年ですが例えるなら昭和67年のゲームなんだと思うとしっくり来ると思います。とんでもない難易度で有名ですが、当時ロケテ荒らしというゲーマーが居て、遊びやすかった達人王を瞬殺し「ぬる過ぎる、難しくしろ」と言いまくったとか、或いは営業サイドから「3分以内に殺せ」と圧力があって、スト2前夜、STGくらいしか無いゲーセンでSTGばっかり遊んでた連中を殺すにはあの位するしかなかったとか、噂は絶えないゲームです。
 もう1つ、STGというジャンルがその名前の割には撃たれる方ばっかり、be shotであることに対し、当時からSTGは自覚的でした。なので現在、動画サイトでケイブラスボスシリーズやら東方Lunaやらを2~3眺めた方々が、訳知ったように「STGって避けるだけじゃん」というのは歴史に対する侮辱です。レイフォースもレイディアントシルバーガンもSTGを撃つゲームに取り戻そうとしました、どちらも歴史的な名作です。ただその構造、その哲学が孤高過ぎ、安易なRip-offを許さなかったが為に、後にムーブメントとはならなかったのです。

 続いてFPS/TPS。こちらを便宜上シューターゲームと呼称します。
 起源は'90年代前半にはもうあったジャンルですが、しかしこれらが日本国内で大きく認知されるのに、随分と時間がかかります。というのも、シューターゲームの多くはまず海外で、しかもPCゲームとして開発されました。国内アーケード及びコンソール機は当時の日本ゲーム市場を牛耳っており、洋ゲーでPCゲーは日本じゃイロモノ扱いが長かったのです。逆に海外では、アーケードの基本1クレジットがアメリカドルにして25セント前後であったが故に、アーケード市場は早々におもちゃ扱い、金にならないものとして鳴りを潜めた……と聞き及んでいます。話が脱線しました。
 PCとCSの最も大きな差異はインターフェイス、入力機器です。パッドで操作するにはUnrealもHalf-Lifeもキーが多すぎました、日本のコンソール機ゲーマーに受け入れられるFPSはCoD4:MWを待つことになります。これでも当時のPS3コントローラのボタン全てを使用するハードコアな操作形態でしたが、なにせ10も20も銃器を持ち歩きませんし、何よりの障害だった右スティックによるエイムに、現代では必須となったスムージング等気の利いた配慮がなされた初期の作品の一つです。
 最初にこれらのジャンルが国内で流行った時は、「ロストプラネットをFPSとかにわかかよ、TPSだろJK」がイキった厨房の常套句でした。それほどまでに全てFPSと呼ばれていたわけです。それもしかし、厨房がイキり切った頃には、ゲーム屋さんのジャンルの札がFPS/TPSと書かれるようになります。

 では、我々はこれらをそう呼び分けなければならないのでしょうか?縦シューも横シューもSTGと呼びたいように、FPSもTPSも何とかと呼びたい時があります。例えばPUBGは一人称と三人称の切り替えが可能です、沙羅曼蛇ならSTGと呼べますが、これを何と?バトロワはあり得ません、バトロワはシューターゲームを指すものでなく、対戦形式を指すもので、デスマッチやキャプチャーザフラッグと分けるための語であり、或いはFallguysや永遠回帰を包括する際に使用する語です。
 正解はもうお分かりかと思います。FPSのS、TPSのS、海外ではこれらのジャンルを「Shooter」、シューターゲームと呼び表しています。
 しかしシューターという言葉は日本人には馴染まなかった。弾を撃つゲームを表す言葉は昔からあり、一度メインストリームから凋落し、長いこと空席のままジャンル名のみは皆聞いたことがある。シューティングゲーム。2007年最もこの言葉が相応しかったのはCoDであり、BFであり、シューターゲームのことでした。

 ……ええ、補足しておきましょう。2007年当時、縦シュー横シューは死んでいないと仰る方々は居ると思います。2007夏コミの同人STGはそのラインナップだけで人生1個は時間潰せそうな密度でした、しかしそういう次元の話をしているのではないのです。
 PS3に、狭義の純粋な新作STGが、AAAタイトルとして何本発売されたでしょうか。フィロソマのように夢を見た、サンダーフォースⅤのように語り継がれた新作が。BioShock Infiniteほど金がかかったアインハンダーが、PS3にリリースされましたか。STGは死んでいませんでしたが、生きてもいませんでした。

 さてでは、FPS/TPSのことをシューターと呼べば、このシューティング被りは解決するでしょうか。今現在、シューターが示す対象はもう一つ存在してしまいます。STGジャンルを未だに遊び続けている者たちへの呼称、或いは彼らの自称、これをシューターと呼びます。折角CoDがシューティングからどいても、未だに年寄り連中の残り香が漂ってしまう。
 じゃあやっぱ、STGがどきましょうか。もうシューティングという単語は、シューターゲームのプロストリーマーもFPSのことをシューティングと呼んでいる位には、シューターゲームのものです。どこにどきましょうか、海外に倣って「Shoot'em Up」?……うーん、これも結構ややこしいんです。

 Shoot'em Up、以下Shmupと表記します、これは狭義のSTGには概ね対応します。自機に重力や慣性が無く、メインショットが無尽蔵で、敵弾との接触ペナルティが大きく殆どは1撃死、縦か横への強制スクロール。
 では自機に慣性が付くエクセリオンはどうでしょう?まあギリギリShmupっぽいと思います。ではMr.ヘリやファンタジーゾーンは?アステロイドやガーディアンフォースは?スターフォックスやパンツァードラグーンもSTGって呼んでましたっけ、TempestはSTGだけどSmash TVはアクションで合ってますかね。
 ええ、これらは最初に行った定義とは離れたものの後出しです。最初にSTGのことを縦シュー/横シューと言いました。しかしこれらのタイトルもまたSTGと、一絡げに呼ばれていたのも歴史的事実です。
 一応の答え合わせをしましょう、アステロイドとガーディアンフォースはMultidirectional shooter、スターフォックスやパンツァードラグーンはrail shooter、TempestはTube shooterでSmash TVはArena shooterです。Mr.ヘリやファンタジーゾーンみたいな任意スクロールも何か呼称あった気がしますが失念、英Wikiには……Cute'm Up?それパロディウスと一緒に入れちゃうの……。一応の答えなのは、これらは私がざっくりで分けたジャンル分けであり、恐ろしいことに解釈は人によって違います。
 これらの細かい傍流のことを、一絡げにSTGと呼んでいた時代が、日本にはあったはずです。じゃあ海外は昔っから細かく傍流に名前を付けていたのか?私の記憶が確かならばNOです。

 Action.

 妙に細かいと思ったら、マリオをPlatformerと呼び魂斗羅をRun n' Gunと呼ぶ位の細かさの話なんです、Shmupというのは!マリオと魂斗羅をアクションと呼ぶ大きめの粒度で、究極タイガーとサンダーブレードをSTGと呼んでいた我々には、Shmupという言葉はあまりに繊細過ぎる。
 なので、じゃあSTGをShmupにどかそう!というのも結構危険だったりするのです。

 私の記憶というのが結構信用ならないんですが、ただ'07年かそこらで、海外サイトの幾つかがゼビウスやグラディウスをActionに分類していたこと、そのせいで中々お目当てのタイトルが見つからなかったことを覚えています。ShmupはActionの小分類、FPSはShooterの小分類、だったと思います。
 昔なんて言われていたか、完全に信用できるワケではないものの概ねの方向性を見るのに、試しに英Wikiのゲームジャンル編集履歴を当たってみました。

 FPS、TPS、Shoot'em upが初めて並んだのは2005/01/25。この時はまだ大ジャンルによるカテゴリ分けはされていませんでした。
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Template:Video_game_genre&direction=next&oldid=10567058

 初めてカテゴリ分けが導入されたのは2007/10/01。FPS/TPSはAction、Shoot'em upはShooter……あれ、逆でした。どうやら私の記憶違いのようで、調べてよかった。
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Template:Video_game_genre&direction=next&oldid=160663095

 そして同日、たったの22分後、どちらもShooterに分類されます。
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Template:Video_game_genre&direction=next&oldid=161607250

 あっ、でも2007/11/15、一度Shooterという大分類が無くなり、Actionに統合されます!
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Template:Video_game_genre&diff=prev&oldid=171573968

 当時の議論を見てみると、「シューターカテゴリは人工的なものであり、FPSゲーム、光線銃ゲーム、従来のシューティングゲーム、つまりFPS、パーティ、アーケードなどに分類されることが多いゲームの両方を含むようにしています」とあります。
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Template_talk:Video_game_genre&oldid=170433582

 むむむ?調べたらむしろ、海外も同じくシューティング被りに困ってるように見えてきましたね。違うゲームだけど名前似てるからってShooterカテゴリに纏めるのどーなの、っていう議論なのかなコレ。
 ちなみに今では、Action下、Shooter下、FPS/TPS/Shmupという区分になっているようです。あと和製英語だと思ってたSTGも、いつの間にかまあそう言われることもあるよね位には浸透してたみたいで。へー。

 ジャンル論は、どこまで行っても価値が無く、考えれば考えるほど他人の納得の足を引きずり倒すような結論ばかり。今回もまた、日本もShmupで納得しよう!という潮流に、今やShmupよりレアケースとなったRail shooterやら何やらを持ってきて冷や水ぶっかける話になりました。
 捻くれた性分であることは否定しませんが、捻くれてるからってだけでこんなこと言っているのでは無く、ゲームが好きでゲームを理解したいと思っているからこそ、こんな七面倒で厄介なことを考えているのだと。いえ、言い訳ですね。私が捻くれているだけです。

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