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tacica TOUR 2023 “物云わぬ物怪” at FAD YOKOHAMA

  tacicaの3枚目となるミニアルバム「YUGE」リリースワンマンツアーの初日。
ワンマンツアーはソコハカツアー以来のおよそ5ヶ月ぶり。その間にもFCイベント、対バン、弾き語りなども行われていた。



※これよりネタバレ注意です。


感想① 意気込む猪狩さん

 時間になると遊戯の森のざわめきのSEが鳴る中で御三方が登場。小西さんは今回のツアーのロンTを着用していた。そして、SEが鳴っている中で各々の楽器の音がそこに入ってくる。

 轟音が響き渡ってから馴染み深い冒険衝動のベースのイントロが聴こえ出す。力強い演奏がなされた後、一拍おくとギターが鳴らされ、争いごとや〜、とこれまた力強い声が響き渡った。singularity発売から一年だというのに、この二曲はまるで何年も前からいるような風格。しかも、常に最高を更新しているような気がする。

猪「ツアー初日だけど、ファイナルのつもりでやります」との宣言が。
初めの三曲だけでも熱が入ってるのが分かった。

感想② 怒涛の曲ラッシュ

 ここからは怒涛の流れだった。
猪狩さんの宣言から奏でられたのは今回のミニアルバム収録の金糸雀。ソコハカツアー、また結成18周年ということにおいて特別感のあるこの曲。以前のツアーよりも数百倍カッコ良く感じた。
 
 金糸雀の余韻を残したまま、夜明け前へと続く。試聴会の際に、小西さんが3、4年はやってないと思う曲をセトリに入れた、と語っていた曲だと思われる。元々短い曲ではあるものの疾走感溢れ、一瞬で終わったかのように錯覚。サビの"さぁ この手を この足を"の"さぁ"の部分が最高。思わず猪狩さんに手を伸ばしたくなった。

 猪狩さんが歌い切ったところで小西さんがベースを置くと、もう一本のベースに手をかける。おや、これは?と思うと歪んだあの特徴的な音が響く。公式のSNSにも上げられていたリハから事前に知ってはいたが、やはり来ると驚く。会場のボルテージはどんどんと上がっていた。

この世界を全力で泳いで
 
灰になって いつか きっと讃え合いたい

アロン

 ……こんな人生を送れたらいいな。

感想③ CDについて

 猪「今回YUGEというミニアルバムを作りました。そのリリースツアーです。今はもうサブスクっていう……便利なものがあるけど」とちょっと憎らしげに語っていた
「便利だよね。いわゆるCDとかレコードとかカセットとか"物"にしなければその分コストがかからないっていうメリットもあるけど、やっぱりCDを作りたいって思ってる。だから好きで作ってるからみんなも買いたければ買ってください」
これは前回のsingularityの時も語っていたけど、あくまでも好きだからやっているというスタンス。独立したからこそやっかみもなく、出来ることが増えたのかもしれない。
「配信に関してはツアーファイナルの翌日からです。これは別に尖ってるからとかじゃなくて、僕がただスケジュールをミスっただけです。全然尖ってないです」と緩やかなオチをつける。
この後、「曲やった方がいいかな?」とまさかの言葉が観客に投げられる。

 ディスコードと言う曲をやりますとの紹介が入り、先程までの緩い雰囲気をかき消すような大きな音で掻き鳴らされる。バンド編成としては初披露のこの曲。弾き語りの時からものすごく個人的に気に入っていて音源化を待ち望んでいた。

風景をダッシュして 払い除ける結晶が
懸命に奪取して 生きていくのは大変さ

ディスコード

 ここの歌詞の韻の踏み方最高。  
 
 続けざまにこちらも収録曲のナニユエ
やっぱりどうしても森田さんが恋しくなる。先日の試聴会にて猪狩さんが森田さんはtacicaを好きでいてくれると語っており、11月には弾き語りでの共演も決まっている。是非また森田さんには参加していただきたい。
 少し落ち着かせるようにJADITEの演奏。今まで濁流のように怒涛の曲たちが襲いかかってきたがここが一つの休息所のようであった。しかし、盛り上がらないというわけではない。まだまだ会場は熱気に包まれていた。

感想④ お待ちかね!グッズ紹介

 皆様お待ちかねの小西さんによるグッズ紹介コーナー。いつも通りパネルを持ちながらの紹介。
小「今回、半袖のシャツと長袖のシャツの2種類を作りました。まあ、時期的に微妙だったんで。こういう時期なので長袖の方が売れるのかなと思って結構作りました。でも、先行物販の感じだとまだ半袖に分があるかなと……」
中「いいの! そんなこと!」
猪「ドラム中畑大樹」
中畑さん立ち上がるも挨拶はせず。小西さんのグッズ紹介は続く。

小「ハンドタオルも作りました。まあ、ちょうど良い感じのサイズ感です。あと、サコッシュも作りまして、表面があの……ツルツルしてて……雨とかドリンクが溢れても大丈夫」
猪、中が顔を歪めていた。
小「あと、紐が調整できるのでお好みの長さで使ってください。カレンダーも今回ちっちゃいんですけど、あります。ナニユエくんのアクスタと並べると良い感じ。これ一つあれば充分な……えっと晩年カレンダーだっけ?」
猪「万年ね。晩年はヤバい」
小「あっ、万年カレンダー。これ作った時に猪狩と話してたんだけど、もうカレンダー作れなくなっちゃうねって気づいて。自分たちの首を絞めてた」

 そんなこんなでグッズ紹介終わり。
中「ツルツルって良いよね」
猪「そんなの大体そうじゃん。画像からだって分かるよ。材質のこと話すような知識なんてないのに。あと、"まあ"って言葉多用し過ぎて何かインテリ感を出そうとしてる」
小「マジで?」
猪「全然そんなことないのに。あれだね。ギャップ萌えだ。蛙化現象だ

猪「何かもう風呂上がりの気分。もうよく分からない。小西は
お手上げ状態。

感想⑤ 最高潮のフィナーレ

 アコギに持ち替えて幽霊のいない街、ordinary dayの二曲を演奏。物云わぬ物怪というタイトルから幽霊はやるだろうなと予想通りにやってくれた。 ordinary dayは弾き語りでもバンドとしても定番になりつつある。
  
 再びギターを持ち替えて、荒々しい音からドラムが走ってくるaranami
"波の様な生活がここで生きて行く証だ"と締められると人鳥哀歌のお馴染みのフレーズが始まると会場が大きく湧き上がった。
まるで荒波のなかをペンギンが泳いでいくようだった。
ボルテージはマックスで、応えるようにメンバーもそれぞれ熱が凄かった。猪狩さんは声を荒げ、小西さんはベースを大きく振り上げ、中畑さんはドラムを激しく打ち鳴らしていた。
これで終わりかと思うような割れんばかりの拍手が送られた。しかし、まだ曲は続き、一転して爽やかなサウンドが特徴的な諦める喉の隙間に新しい僕の声が吹くへ。

猪「まだツアーは続くけど、最後に荒野を行くという曲をやって終わります」
試聴会の際に猪狩さんが自分応援ソングと語っていたように突き動かされる何かを感じた。また最後のセッションのアレンジは広い荒野を歩く人たちを送りだすようだった。
そして本編は終了。

感想⑥ アンコール

 ステージから降りるとすぐさまアンコールの拍手が起こった。長めの拍手からようやく再登場。
猪狩さんがYUGEの実物を持ってくる。
猪「今回のミニアルバムはジャケットにも拘っていて触りたくなるような感触で作りました。是非。この歳になっても良いものがあるんだって思わされた。あと、勿論ドラムは中畑さんです。なので耳をすませば……聞こえてくるかも」
耳をすませばと猪狩さんが強調してそれに小西さんが反応。
小「耳をすませばってジブリの? 俺見たことないんだよね」
猪狩さんは絶句。観客からも声が漏れていた。
小「ジブリはトトロのネコバスで止まってる」
猪「……こういう奴なんですよ。よく分からない。でも、スターウォーズは引くくらい詳しい」
小「うん」
猪「小西が学生時代、バイト先からラジオに電話出演したことがあって。スターウォーズの問題に答えて景品貰ってた。俺はそのラジオ聴いてなかったから後で小西に『簡単だったの?』って聞いたら『うん簡単だった』 って言ってたんだけど、別の友人に聞いたらめちゃくちゃマニアックな問題だったらしい」
小「それでマルーン5のTシャツ貰った。もうボロボロになっちゃったけど」
猪「捨てたんでしょ?ラジオ局の前に」
小「捨ててはない」
中「駄目でしょ」と嗜められる
猪「捨てて、拾ったんでしょ?」

そんな惚けたmc明けからはぼくら。ドラムの入っていない曲のため、中畑さんはシェイカーを振っていた。マイクから離れて歌う猪狩さんの声量に震えた。
そして、ラストはHEROで今回は締められた。
ダブルアンコールを求める拍手がステージを降りたあとに続いていたがさすがにダブルアンコールはなかった。

セットリスト

  1. 遊戯 (YUGE)

  2. 冒険衝動 (singularity)

  3. デッドエンド (singularity)

  4. 金糸雀 (YUGE)

  5. 夜明け前 (HEAD ROOMS)

  6. アロン (singularity)

  7. ディスコード (YUGE)

  8. ナニユエ (YUGE)

  9. JADITE (sheeptown ALASCA)

  10. 幽霊のいない街 (LOCUS)

  11. ordinary day (panta rhei)

  12. aranami (dear,deer)

  13. 人鳥哀歌 (jacaranda)

  14. 諦める喉の隙間に新しい僕の声が吹く (新しい森)

  15. 荒野を行く (YUGE)

  16. en.ぼくら (YUGE)

  17. en.HERO (parallel park)

 ()内はアルバムタイトル。
今回は割と最近の曲が多いイメージ。
JADITE辺りまでは一瞬で時間が過ぎ去った気がした。濃厚なセトリだった。

最後に

 この日の四日前に先行試聴会があり、歌詞カードもそこで渡されていたので歌詞を先に知ることが出来た他、インタビューから得られる情報もあり、期待値はマックスだった。そしてそれを簡単に超えてきた。猪狩さんの声はいつも以上に最高だったし、小西さんの荒ぶるベースとMC、それを支える中畑さんと、まだ初日だというのにこの充足感。ファイナルまで駆け抜けて欲しい。

 一生に一度を使いなさい

ディスコード


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