IMG_0769_杉並和田

この世はグレーなの〜『万引き家族』を観たあとで〜

わたしは万引きをしたことがない。
万引きはしてはいけないことだという倫理観を強くもっていたわけでもなくて、単に怖かったから。
見つかったときのことを考えたら、怖くてできなかった。
だから万引きをするという発想は育たなかった。

家族がほしい。家族をつくる。家族はたいせつに。家族と一緒。
ニセモノでも? ロクデナシでも?
へたな家族なら、いないほうがいい。

自分のことも含めて守るべきものがなければ、怖いもの知らずになってモラルがなくなることがある。
守るべきものがあると、それを死守するためにモラルがなくなることもやっぱりある。
だから、モラルと何をもっているかはあんまり関係ないんだけど、ただ、そのなくなっていくしかたが違う。

ひとに優しくすることに勇気が必要なときがある。
でも、勇気なんか必要とせずにさっさと手を差し伸べちゃうひとって、考えなしで、怖いものなしで、純粋なのか。
困ってそうなひとに自ら声をかけることさえできない人間には、何も語れない。

スクリーンの前にいる限りは、この家族にはこの家族のままでいてほしいと思う。
でも、ひとたび映画館を出れば、わたしは間違いなく規範に則ったしかたにおいて秩序を構築する立場になる。
「そうは言ってもねえ奥さん、法律で決まってんですよ」
規範とは戦わない。

称賛される道徳行為と称賛されない道徳行為、称賛される反道徳行為と称賛されない反道徳行為があって、みんな自分勝手にあのひとは勇気があると言ったり、あいつは融通が利かないとか言ったりする。

この世はグレーなの。
わたしが書けるのはここまで。
『万引き家族』を観たあとで。

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