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しんどいとき

昨日の話だ。

実験に使用する器具を探しに、朝から宇治にあるキャンパスまで遠征に行った。慣れない廊下を歩いて扉を開けると、机の上に段ボールが置いてある。中を開けると探していたまさにその器具が、大量に入っていた。これなら当分実験に支障はない。

宇治から本部までは大学の連絡バスで帰る。だがこれが1時間とか2時間に1本しかないので、しばらく待たないといけない。本部に比べてWi-Fiも弱いので、なんとか繋がりがいい時間帯であることを願って卒論を進める。
昼になったので大学ほど近くにある人気のパン屋さん「たま木亭」に行ってみる。朝に来た時より行列が少なくなっていてほっとする。1個1個が大きいとは知っているが、いつものノリで買ったら4個で1,000円を超えてしまった。どれも美味かったがクリームがやけに胸焼けした。

2時前発のバスで本部へ。家に帰ってサボるつもりだったが、実験器具を本拠地に戻しに行かないといけないのでやむを得ない。大きな段ボールを持ってバスに乗り込むと、人は少ないがいつも通り空気が澱んでいる。換気が行き届いてない感じがするので、バスの匂いはあまり好きではない。とりあえず自分の近くの窓を軽く開けて空気の通り道を確保する。

50分ほどの道のりはアニメ「僕の心のヤバいやつ」を見ていたらすぐに飛んだ。原作をLINEマンガで数巻読んでネタバレを喰らっているはずだけど、もう一度見ても素直に面白いと思った。
ところがバスを降りたとき、まっすぐ置くべきものをほんの少しだけずらして斜めに置いてしまったときのような、別に気づかないフリをして誤魔化してもいいのだけど、そうするとこの先何か嫌な感じになってしまいそうな気持ち悪さが、僕を襲った。

あ、しんどい。


大人になると起きてるうちはずっとどこかしらが痛いとか、だるいとかの感情に支配されながら生きないといけないらしい。まだ大学生の僕にはその感覚がわからないので、大人になるのが少し怖い。風邪の引き始めや運動した次の日に、体のどこかが不調を訴えていると、自分が擬似的に大人になっているような感覚があって悲しくなる。今日がまさにその日だ、と思った。

咳も喉の痛みも悪寒もないので、おそらく心が疲れてしまったのだろう。思い返すと原因になりそうなことはいくつかあった。行きの電車では麻雀でボロ負けしたし、バスの空気は悪かったし、パンのクリームも合わなかった。アニメを見ていたのだって、バス酔いの原因になっていたかもしれない。夕方からバイトがあるので、そのせいで気が滅入っているのかもしれない。
いや、それにしては実験の器具が見つかったり面白いアニメに出会えたり、いいこともあったんだけどな。その喜びを上回るくらいの負の感情が、僕に疲労を感じさせているのか?

とまあ、理由をこじつけることはいくらでもできるが、とりあえず現状を打開しないといけない。コーヒーを飲んでも好転しそうにないのでコンビニに行くことにする。こういうときにパンとかご飯とかの炭水化物を買うと血糖値が上がって眠くなってしまうのは経験で知っていた。タンパク質がたくさん取れるものをと、サラダチキンとファミチキを目当てにする。
店に着いた。気が変わったのでファミチキの購入はやめた。代わりにセール中の焼き鳥と、宣言通りのサラダチキン、それにオロナミンCを買った。

イートインでオロナミンCを飲み干し、先にタン入りサラダチキンをいただく。ユニバで食べるターキーレッグみたいな味がした。焼き鳥は帰りに歩き食いしたが、雨が降っていたのであまりいい気はしなかった。

居室に帰ってしばらく休むと良くなった。だがタンパク質以上に、しんどい僕を助けてくれたものがあったような気がする。


コンビニへ向かう途中、実は同じ研究室の先輩に出会っていた。クッキーらしきものを片手に「大遅刻、大遅刻」とはにかむ彼がなんだか可笑しくて、その時だけ少し、心が軽くなったような気がしていたと思い出す。

元気が出ないとき、自分から無理やり状況を打破しようとするのもいいが、誰かに助けを求めたり話を聞いてもらったりすることも、十分に薬になってくれるのだろう。協力、思いやり、励まし合い。集団行動って、こういう時に本領を発揮するんだろうなと思う。

一匹狼を貫いてきた僕だけれど、依存の温かみとやすらぎを知るのもそう遠い話ではないのかもしれない。


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