アイドルオタの夢とは

僕はアイドルに近づきたかった
そして、アイドルになった

僕にとってアイドルは、人生の麻酔みたいなもの。推しの円盤を見ながら眠るように死ねたら、それが最高の死に方だと思う。

選抜落ちが続き、握手会でもスルーの憂き目に。あんまり落ち込まないで、と周囲から慰められても、自尊心が極端に高めであることが災いし、アイドルとしてやっていく自身をすっかり失い、うつ状態に陥ったすみれは、飛び降り自殺を決行。

一方、アイドルだけが人生の楽しみのフリーター、昌史。何もかもうまくいかないのは自分のせいと分かっていながら、何をどうしていいのかも分からず、アイドルに費やす資金も尽き、ポータブルDVDに映るすみれを見ながら嗚咽が止まらない。決断とは程遠い昌史の人生、最初で最後の大きな決断は、首を吊って終止符を打つことだった。

時を同じくして人生に幕を降ろした二人だったが、昌史の肉体は死に絶え、すみれは奇跡的に一命を取り留めた。目を覚ましたすみれは、おもむろに股間をまさぐる。それは生前の昌史のクセだった…。

理想のアイドル像を明確に持つ昌史は、すみれ以上にすみれを表現していた。徐々に注目が集まり、ついには全メンバー人気投票で23位と大躍進。昌史のアイドルとしての才能が図らずも花開いた結果となった。

昌史は人前ではへりくだるクセがあり、片手を頭の上に置き、やり過ぎなくらい背を丸めてへこへこすることで、他人とうまくやっているつもりでいた。

ある失敗についてキツい口調で迫られたすみれ(昌史)は、弱々しくいつものように頭に手をやろうとした。一瞬考え、その手は頭のリボンの位置を直すのであった。

エンディングでは昌史が築46年の4畳半で恥ずかしそうに完コピしているダンスを動画サイトで披露。その後、ライブシーンに転換。レッスンの積み重ねで他のメンバーを遥かに凌ぐキレの良いダンスを披露するすみれ(昌史憑依後)。

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