『細雪 四』(谷崎潤一郎)
幸子は万事上方式に気が長い方なので、仮にも女の一生の大事をそう事務的に運ぼうと云うのは乱暴なと思いもしたけれども、井谷に臀を叩かれた形になって、行動の遅い彼女にしては珍しく、明くる日上本町へ出かけて行って姉にあらましの話をし、返事を急かされている事情などを打ち明けて云ってみたが、姉は又幸子に輪をかけた気の長さなので、そう云うことにはひとしお慎重で、悪くない話とは思うけれども一往夫にも相談してみて、よければ興信所に頼んで調べて貰い、その上でその人の郷里へも人を遣って、などと、な