思いで


あのとき 静かな雨が止んだあと
あじさいは錆びていった

子どものころは 満天にあった星も
いまは数えるくらい

ねえどうして 時間は過ぎてゆくとき
思いでのきれいなとこだけ残して
過去を美しいものにしてしまうんだろう

眩しい記憶だけ 眼裏に残っていて
あなたを憎むことができない

ねえどうして 現実は過ぎてゆくとき
かなしいものばかり剥き出しにして
心の奥まで引っ掻いていくんだろう

散り急ぐいちょうにプラタナス
ぼくは
待ってとも言えないで
ただ風に吹かれてゆくのを見ていた



このあいだ ブリキの玩具を見つけた
思いでが詰まっていたけど
目には見えなかったから
からんと 軽い音をして 落ちてった



シキウタヨシ

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