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見通しの悪い交差点

下北であるくわえ煙草のおっちゃんとすれ違った。
下北である。とある見通しの悪い交差点で。

すれ違い様に、ひょっとすると、この人と10年前にどこかで会っているかもしれない。その可能性がないことはない。人との出会いに、確率0%なんて存在しないから。と思ったりした。

そんな、下北である。

あるくわえ煙草のおっちゃんは、もしかしたら田中、というのかもしれない。いや、中村の可能性も捨てきれない。小林の可能性もある。見た目からは想像し難いが、ジェームズじゃないとも断言できない。ちなみに、服装は、古着屋のワゴンセールで買ったTシャツに短パン。

ちなみに、くしゃっとした笑顔に、長いまつ毛がとても素敵。歩幅が小さくて、足音を常に気にしているところ。道端の石を拾って、危なくないところに移動するような人の良さ。お米は一粒も残さない。アジの干物は骨まで食べる。農家さんに対しての感謝の気持ちを忘れない。そんな、行動も考え方も尊敬できる人。そして、初恋の人。

ではない。

もしかしたら、僕と同じ苗字だってこともありえる。その場合、必然的に親戚に当たる。日本に50人位しか存在しない珍しい苗字だから。これは99%の確率。人との出会いに、100%なんて存在しないけど、確実にそこに近い。と考えたりした。

ここは、下北である。

歩く煙草のおっちゃんは、その後どこに行ったのだろう。ここで、くわえ煙草という事実から推測すると場末の居酒屋ということになる。敬意を込めて店名を出すとよっちゃん。下北なら、間違いなくあそこである。だって煙草を床に捨てられるわけだから。

ただ、それは安直すぎるから、角度を変えてみる。あるおっちゃんは、下北の無印良品に行った。道中に喫煙所もあるから、そこで煙草を捨てて、また少し歩いて、店に入る。その間、またタバコが吸いたくなるが、我慢する。おっちゃんは、無印で箱を買う。アクリルの透明の。100円ショップではなく、無印良品というところが肝心。


ここも、下北である。

で、家に持ち帰って、家具に加えた箱。ここまで想像ついた。

見通しの悪い交差点で出会ったとあるおっちゃんの人生。
僕の人生より、50%見通しが良い。かもしれない。

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