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76.少し不思議なお話

こんばんは!出口です!

人生で一番最初に観たSF作品は何でしょうか?
おそらくほとんどの日本人は『ドラえもん』だと思います。
僕はそもそも『ドラえもん』をSFとして観たことがありませんでしたが、
SF(サイエンスフィクション)は「科学的な空想にもとづいたフィクションの総称」、まさにSF作品です。

ドラえもんを生み出した藤子・F・不二雄先生はSFを『少し不思議な物語(すこし・ふしぎ)』と表現しています。
すごく分かりやすくイメージできる表現ですよね。

僕が今ハマっている作家辻村深月さんは『ドラえもん』が大好きだそうで、その愛をふんだんに詰め込んだ作品を出されています。
そんな『凍りのくじら』という作品を今回は紹介します。

ちなみに、この作品は僕が今まで読んできた小説で一番感動しました。

では、いってみましょう。

①SFな個性

冒頭でSFは『少し不思議な物語(すこし・ふしぎ)』という藤子・F・不二雄先生の言葉を紹介しました。
本作の主人公・芦沢理帆子も藤子・F・不二雄先生を敬愛しており、人の個性を『SF(すこし・なんとか)』で表す遊びをしています。

理帆子自身の個性は『少し・不在』です。
友達はたくさんいるけれど、本音で話せる場所がなく、誰といても心が不在な理帆子。
そんな風に理帆子は他人の個性も『SF(すこし・なんとか)』に当てはめていきます。

作中で様々な個性が出てくるんですが、この原則に当てはめるとどうしても全部後ろ向きな意味になってしまいます。
特にSFの『F 』は『不』から始まるので、ネガティブな言葉になってしまいますよね(笑)

僕も読みながら”自分の個性を表すとしたらなんだろう”と考え、出たのが『少し・不満』です。
自分のできていないところに目がいき、それを満たすために努力する。
その繰り返しで全てが満たされることを永遠にありません。

どうしてもネガティブなイメージになってしまいますが、ポジティブに捉えると、つまりは、成長したいということです。
現状に満足することなく、進み続けたい。
そんな『少し・不満』。
かなり良く言いました(笑)

ちなみに、作中の終盤に理帆子はとある登場人物に個性を言われます。
そこで言われる個性がとても良いので、是非読んでみてください。


②無駄な時間の価値

『少し・不在』な理帆子は人間関係にものすごくドライです。
友達と談笑していても、心は冷めいて常に冷静です。

そんなクール且つ俯瞰的な理帆子は元彼の暴走や母親の死をきっかけに感情をあらわにします。
冷めた気持ちで接してきた友人達の愛にも気付いていきます。

『失ってから大切だったことに気付く』と言いますが、大切だと思えるのはそこに『愛』があるからだと思います。

この『愛』というテーマで好きな話があります。
NewsPicksを通じて前田裕二さんがコロナ禍で社会人になる人々に向けた祝辞です。

ここで『星の王子さま』の話を交えながら、『無駄な時間こそが愛を育む』と述べています。

まさに理帆子が『少し・不在』と思って接していた時間が、愛を生む時間だったんじゃないかなという風に思いました。
そう思うと本当の意味で無駄な時間なんてないなって思いますね。


③人を救うこと

この作品で最も心に残っている別所あきらの言葉があります。

「(中略)それでも本当に面白い本っていうのは人の命を救うことができる。その本の中に流れる哲学やメッセージ性すら、そこでは関係ないね。ただただストーリー展開が面白かった、主人公がかっこよかった。そんなことでいいんだ。
 来月の新刊が楽しみだから。そんな簡単な原動力が子どもや僕らを生かす」

この言葉は作者の辻村深月さんの言葉でもあり、小説を書く意味に繋がっているのかなと思いました。
どれだけ辛いことがあっても、この本の続きを読みたいという想いで救われることもある。
もしかすると辻村さん自身も本に救われてきたのかもしれないし、読者を救ってきたのかもしれません。

僕は音楽に確実に救われてきました。
辛い時、踏ん張り時、乗り越えるべき時。
ここぞという時に支えてくれたのが音楽です。

新曲が楽しみとか、ライブに行ってみたいとか、そういった些細なことが確かに僕を生かし続けてくれています。
もちろん今は辻村さんの作品を全作読みたいという楽しみも。

人を救いたいという想いを持ってやっていなくても、実は救っているということもありますよね。
僕を救ってくれた音楽のほとんどは彼らが自分たちの為にやっていたことだと思います。

今、自分の為にやっていることが誰かの為になっているかもしれないと思うと、さらに頑張ろうって思えますね。
いつか誰かの支えになれますように。

では、また。

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