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web会議は映像よりも音声にこだわって欲しいのでマイクその他をオススメする

web会議やら配信やらに必要な機器を揃えたいんだけど、という相談を受ける機会がここ数年で本当に多くなりました。自分がラジオの仕事をしてることもありますが、もともと機材カタログやスペック表を見ながら飯が食えるような趣味をしているので、ニーズに合わせてアドバイスする的なことを何件もやっています。
で、先日こういう記事がちょっと話題になりました。

これは全く実感どおりで、ウェブ会議で大事なのはカメラよりまずマイク。映像より音声にこだわろう、と言ってきました。(容姿に自信があってとにかく見せたい、という場合を除いては)映像はそこそこでいいので「話してる内容が聞き取りやすい」が最優先じゃないですかね。リングライトも高画質カメラもいいけれど、まずマイクに投資すると相手の印象ずいぶん変わりますよ、とオススメしています。

で、じゃあどんなマイク使えばいいの?ということになるわけですが、これが一筋縄ではいかない。環境によってオススメは変わりますので、どなたかの役に立てばと思いまとめてみることにしました。というのが本記事の趣旨です。

こんな人を対象に書いています


ウェブ会議などのオンラインにおける会話で、相手の印象を良くしたい。特に音にこだわりたいが、どんなマイクを使えばよいかわからない、という人向けに書いています。
逆に、自分で機器を選べるような音響関係機器に詳しい人が見ると(ウソは書いてないはずですが)技術的な話とかすっ飛ばして粗い表現もあると思いますのでそこはご了承下さい。
あと、いちおう説明しときたいことを連ねたらめっちゃ長い記事になったので、細かいことはどうでもいいからとにかくどれ買えばいいのよ?という人はぜんぶすっ飛ばして最後の「ケース別おすすめ機器」をご覧ください。

高音質=聞き取りやすい、ではない!


一般的に、高性能なマイクというのは高音質です。何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、「高音質だから聞き取りやすい音、ではない」ということがピンときてない人は意外と多いのでは。
高音質なマイクは、映像でいうと高解像度というイメージに近いです。その場の音を、かなり細かく正確に拾ってくれるということですね。
ウェブ会議の想定だと、話し声以外に鳴っている音、たとえば資料をめくる音とか衣擦れとか椅子の軋む音とか空調の音とか屋外の喧騒とか、場合によっては鼻息とかまで拾っています。これらをぜんぶ相手に届けることが「聞き取りやすい」とイコールではない、ということです。
「聞き取りやすい音」であるためには、どれだけ届けたい音をきれいに拾うか、と同じくらい、「届けたくない音をどれだけ拾わないか」が重要なのです。写真でいうと、(背景はボカして)撮りたいものにだけバチッとピントが合っている状態にしたいわけです。

大敵は「部屋鳴り」

マイクを選ぶにあたり、どんな環境で使うのかはとても大事な要素です。あなたの部屋やオフィスは、柔らかい部屋ですか?それとも硬い部屋?
硬い壁が多く、音を吸ってくれるものがあまりない環境だと、発した声や音は壁に当たって跳ね返り続けます。すると、お風呂の中のように、エコーがかかったような音になります。カラオケなら気持ちいいかもしれませんが、このエコー成分は音の本体をぼやけさせるので、「聞き取りやすさ」は損なわれてしまいます。また、広い部屋ほど跳ね返ってマイクに返ってくるまでの距離があるので、エコー成分がより音を不鮮明にしてしまいます。
こういうのを俗に「部屋鳴り」といって、マイクを使う際の大敵のひとつです。

部屋鳴りを抑えるにはどうしたらいいか。柔らかい部屋=音を吸うものがたくさんある方が、部屋鳴り成分は小さくなります。カーペットやカーテンに柔らかい素材を使うとか、洋服がたくさん吊ってあるとかもいいですね。こだわる人は、壁にスポンジ状の吸音材を貼ったりもします。柔らかい素材は音を吸ってくれるので、マイクの周りが柔らかいものに囲まれていると、直接マイクに届く音のみが拾われて壁などに反響した音は入らない、純度の高い音を届けることができます。

どうしても部屋鳴りのする環境なんだよなあ、という場合は、物理的にマイクの周りを囲ってしまうようなアイテムもあります。たとえばこんなの。

ダイナミックマイクかコンデンサーマイクか


ダイナミックマイクとコンデンサーマイクはよく比較されるのですが、どちらも一長一短あります。一般的にコンデンサーマイクのほうが高音質と言われますが、上記のように高音質=聞き取りやすい音になる、ではないので注意が必要です。
細かい仕組みは横に置くとして、とてもざっくり比較すると
コンデンサーマイクは一般に高音質なものが多い一方で、衝撃に弱く落としたりすると壊れやすい、別途電源が必要。比較的高価。
ダイナミックマイクは電源不要で基本的に頑丈、取り回しやすい。安価なものも多い。

といった感じでしょうか。

指向性に注意

コンデンサーマイクのほうが高音質でいいじゃないかと思われるかもですが、注意してほしいのが指向性です。指向性とは「特定の方向から来た音だけを拾う性能」とでも言えばいいでしょうか。
無指向性、というマイクもあります。これはマイク周囲の音を、方向関係なくぜんぶ拾います、という意味なので、高性能なコンデンサーマイクで無指向性の場合は、上述のとおり「不要な音」をたくさん拾ってしまうのでweb会議のような用途には向きません。
単一指向性=特定の方向からの音のみ拾う
、言い換えると話し手の方向の音み拾ってくれるマイクを選ぶことが大切です。つまりマイクの置き方や向きも大切、ということですね。
ダイナミックマイクにも指向性がありますが、基本的にマイクの向いている方向を拾ってくれるものが多く(バンドのボーカルマイクなどに使われるイメージです)、そういう意味では初心者でも使いやすいかもしれません。

オーディオインターフェース

web会議にかかわらず、PC(またはスマホやタブレット)で音を扱う際に避けて通れないのがオーディオインターフェースです。
音の入力(PCに音を入れる、マイクなど)と音の出力(PCから音を出す、スピーカーやイヤフォンなど)の両方を媒介してくれる機器ですが、なぜ必要なのかわかりにくいモノでもあります。
PCに直接マイクやイヤフォンを挿したらダメなの?と言われれば、いちおうダメではありません。入出力そのものは可能です。
何が違うのかをざっくり説明すると、PC上で音声というアナログ信号をデジタルに変換して入出力を行うわけですが、PC内臓のイヤフォンジャックなどを使うのに比べてこの変換性能が高いこと、多様なマイクが使えること(たとえば多くのオーディオインターフェースはコンデンサーマイクに電源供給機能があります)ノイズに強いこと、など多くのメリットかあります。
PCで良い音を扱いたかったら割と必須のアイテム、くらいに思っておいてもいいかもしれません。
具体的には、次のような感じになります。
(入力)マイク→インターフェース→PC
(出力)PC→インターフェース→イヤフォンまたはスピーカー

このインターフェースもピンキリいろんな製品がありますが、ウェブ会議用途であればマイクが1本挿せるものならどれでも安価な製品でかまわないと思います。たとえばこんなやつですね。PCとはUSBケーブルで繋ぎます。

ケース別おすすめ機器

ここまでがいちおう予備知識編ということで、じゃあどれがいいのさ?という方向けにケース別のオススメ機器を紹介してみます。細かいことはいいんだよ、という人はここだけ読んでもらってもOKです。

1.主にデスクトップPCで固定使用:ダイナミックマイク

SHURE SM58
まずはこの定番マイクです。バンドのボーカルやイベントMCなどでおなじみで、業界では「ゴッパ」の愛称で親しまれています。人の声を拾うなら安心の実績があるダイナミックマイクで、少々の衝撃やホコリでは壊れない頑丈さも魅力。会議など人の話し声メインならほとんどこれでよいのでは。マイク付近の声だけをきれいに拾ってくれます。

SM58は本当にバランスの取れた良いマイクなのですが、マイクに1万円超えはちょっと予算オーバー、という方へ。自分が「ジェネリックゴッパ」と呼んでいるマイクがあります。

Behringer XM8500

見た目もかなりSM58を意識して作ってると思います。聴き比べるとやはりSM58のほうがクリアな印象もありますが、価格差を考えると十分すぎるほどに使えるマイクだと思います。比較動画などで聴いてみて違いが気にならない人はXM8500でいいのでは。

2.主にデスクトップPCで固定使用:コンデンサーマイク

マランツMPM1000
コンデンサーマイクは上を見れば何百万円もするようなものもあるのですが、web会議とか配信用であればこのマランツMPM1000(Amazon限定ブランドはMPM1000U)は神コスパだと思います。単一指向性で、声の方だけきれいに拾ってくれます。

オーディオテクニカ AT2020
コンデンサーマイクではこれも低価格でとても良いマイクです。1万円超えになりますが、割と個性の違いがあるので比較動画などを見ると良いと思います。以下の動画は、ダイナミックのSM58とも比較してくれています。同じく単一指向性です。

https://www.youtube.com/watch?v=kIcPIOT-L_Q&t=529s

1-2周辺で必要なもの

オーディオインターフェース
1・2でここまで紹介したマイクは、マイク単体では直接PCに挿せませんので、オーディオインターフェースを介する必要があります。据え置き型なら上でも紹介しましたUM2で必要十分ではないかと思います。

ケーブル
マイクにケーブルは付属してきませんので、マイク-インターフェース間の長さに合わせたケーブルを用意しましょう。XLRケーブル、と描いてあるものであれば(web会議用途ならそこまで)大差ありません。

マイクスタンド
マイクスタンドはこういうアーム型ので、使うときだけひょいっと伸ばす形にすると、デスク上にモノを置かなくていいのでおすすめ。

3.ノートパソコン使用など、できるだけコンパクト構成にしたい

USBコンデンサーマイク
オーディオインターフェースを介さずに、直接USBケーブルでPCに繋ぐタイプのマイクがたくさん出ています。マイク自体がインターフェース(入力)機能まで持っている、ということになります。
据え置きのインターフェースが無い分、構成はコンパクトになりますが、いろんなマイクを試してみたい、というような場合は割高になるかも。
とにかくひとつだけマイクを買ってみよう、というのであればオススメです。
マランツMPM2000U
上で上げたコンデンサマイクMPM1000Uの、USB接続タイプです。キャリングケースなどもついてきますが、コンデンサーマイクは衝撃に弱いのであまり持ち運びには適さないかも、と個人的には思います。

FIFINE K669
この分野は中国ブランドも健闘していて、FIFINEというメーカーは比較的コスパがいいと評判のようです。MPM2000Uとの比較動画もありました。

4.ヘッドセット(インカム)を使いたい

どうしてもヘッドセット(インカム)型がいい、という場合もあるでしょう。1~3で挙げたマイクは、マイクと音源(話し手)の距離が開くと声が小さくなってしまうので姿勢を固定する必要がありますが、インカム型は常に顔の前にマイクがあるので安定した音量になる、というメリットもあります。

SHURE PGA31TQG
SM58と同じ信頼のメーカーSHURE製のヘッドセットマイク。ヘッドセット型になっているコンデンサーマイクですが接続はXLRケーブル(ふつうのマイクケーブル)なので、ケーブルとオーディインターフェースを介してPCへ、ということになります。価格的にもコスパは抜群だと思います。

Microsoft 6ID00019
ここまで音響機器メーカーの製品を並べましたが、これはMicrosoft製。ウェブ会議に特化したヘッドセットマイクで、USB接続タイプなのでオーディオインターフェースも必要ありません。
また上のSHUREはマイクのみなので、別途イヤフォンなどで音声をきくことになりますが、この製品はヘッドフォン一体型なのも使いやすいと思います。

BluetoothまたはUSBレシーバーで接続するワイヤレスタイプ(8JR00017)もあります。

Anker PowerConf H700
PC周辺機器で定評のあるAnker製のヘッドホン一体型。ノイズキャンセリング機能も付いているので長時間のミーティングなどにも良さそう。Bluetooth接続でケーブルいらずです。

5.スマートフォン/タブレットで使いたい(モバイル)

スマートフォンは事情がだいぶ異なるのでいくつか検討の方向性が考えられますが、ひとつはスマートフォン用のオーディオインターフェースを用いて外部マイクを使えるようにする方法があります。
もちろんSM58など多様なマイクが接続可能です。
3.5mm (4極)のイヤフォンジャックに差し込むタイプのものや

iPhone /iPad用のLightning接続の製品などいろいろあります。

いろんなマイクを使えるというメリットはあるのですが、せっかくモバイルなのでもっとコンパクト構成で使いたい、ということもあるでしょう。
たとえばこういった外部マイクを直接スマホに挿して使う方法があります。
安心の国内メーカーZOOMのAm7は楽器録音にも使える高品質マイク。

こちらはUSB-C接続の外部マイク。Saramonicはあまり日本では知名度がありませんが、海外製品の中では比較的安定した品質の商品ラインナップを持っています。

こちらは安定のSHURE製イヤフォンマイク型。イヤフォンとしての性能も間違いなしです。

Bluetooth接続のワイヤレス製品は、無線そのものがマイク音声に干渉する可能性があるのと、マイク性能重視の製品がそんなに選択肢がないので(マイク音声の質を上げるという目的では)あまりこれといったものがないのですが、あえておすすめするとするとSony製品あたりでしょうか。

6.とにかく低価格でなんとか

そんなに予算ないけど、そこそこのクオリティにしたい…
わかります。そういうニーズ、ありますよね。
低価格帯の商品は、音響機器メーカーよりはPC周辺機器メーカーのものをオススメします。特に国内のPC周辺機器メーカーはクオリティもそこそこで、バランスが取れているものが多いです。
マイクのみだと、USB接続のこれとか

ヘッドセット型だと、こういうのとかですね。3.5mmジャックの接続タイプよりは、USB接続タイプのものがおすすめです。

クオリティもそこそこ、と書きましたが、ノートパソコンに格安スマホの付属イヤフォンマイクを直挿ししてるような環境と比べると、「お、変わったな」くらいの違いは実感できると思います。まずは音にこだわる姿勢から、ということで、このあたりからでもいかがでしょうか。

7.複数人で共有する場合など

今回の記事は、ひとりでPCまたはスマホに向かってweb会議などに臨むことを想定して書いています。これが複数人で1台のPC、マイクを共有するような環境になると全く違う事情になりますので、オススメ機器としてもまた異なるものを上げる必要がありますが、ひとつだけポイントを。複数人でひとつのPCやマイクを共有する場合、相手の音をスピーカーで出すことになりますが(ひとりずつにヘッドフォンで返す、という方法もありますがヘッドフォンアンプとか必要になりますし煩雑です…)、この音がマイクに入ってしまうと、いわゆる音が回っている状態になりハウリングが起こります。
これを防ぐために、複数人のウェブ会議用スピーカー/マイクには「ループバック機能」が付いてます。詳しい仕組みはさておき、この機能が必須ということになりますね。
これはこれでたくさん選択肢がありますが、たとえばこんな機器です。

想定する参加人数や部屋の広さなどに応じて使い分けるのがいいと思います。本記事の趣旨からは外れますが複数人同時利用の場合はカメラも360度タイプなど工夫が必要ですね。

想定通りめちゃくちゃ長い記事になってしまいました。
みなさんのオンライン音声環境が少しでも良くなりますように。

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