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モモのように聞きたい 

 店を始める前は、予約制にすることも検討していたのですが、ただでさえ不便な場所で、さらに予約が必要なんて誰もこないな。というので、その案はひとまず却下しました。

 その後、営業時間は折に触れ変化しつつも、2023年6月現在のうずまき舎は、定休日を除く(毎週木曜日と金曜日、オーガニックマーケットに出ている第一土曜日が定休日)土・日・月・火・水曜日の、昼の13時から夕方18時までで、この時間帯は予約などせずとも、いつでもご来店いただけるようにしていて、たとえ誰もこなくても、店を開けて待っております。

本屋はこころの湯治場か

 もともと本屋を予約営業にしたいなと思っていたのは、自分が精神的に参っている時に、本屋を徘徊する癖があったことと、そういう時に、自分と周辺の事情に近すぎない他人に、愚痴や不安をぶちまけたい、という気持ちがあったからです。

 世間ではそういうときに、酒場に行ったり、カウンセリングを予約したりするのかもしれませんが、私には、どちらもしっくりきません。モヤモヤを抱えたまま、部屋で一人鬱に沈んでしまうのがこわくて、なじみのカフェに行ったら、他のお客さんが店主と話し込んでいて、すごすご帰ったり、電話で友達を呼び出したのに、結局たいした話もできなくて、さらにモヤモヤして帰る。(これは相手には大迷惑。ほんとうにすみません)なんてこともありました。

 普段の営業時間内にも、個人的なお話を聞いたり、社会問題について議論したりなんてこともやってはいますが、より深い傾聴をとなると、営業時間中にはむずかしく、静かに本を見たいだけのお客さんにも申し訳ないということで、今さら重い腰を上げて、通常営業時間の外に、予約枠を作ることにしました。

本屋で話を聞くだけです。

 私が行き詰まって本屋を徘徊していた時のモヤモヤは、人間関係や仕事の不満、アイデアの枯渇、自信喪失自分を見失う。何をやっても気が晴れない。慢性的無気力、それらが複数絡まって、煮つまり、もう死んだほうがましか。などと、根が深刻ではないので、たびたび落ちた暗黒面からも、そのつど帰還して、図太く生きていますが、モヤモヤというやつは、実は体の不調よりも深刻だと思うのです。

 いずれも、単に腹が減って疲れてるだけ、という可能性もおおいにありますので(私の気分の落ち込みは8割これ)、食べられる、眠られるという段階では、まず暖かいものを飲み食いして、ぐっすり眠る。ということをお試しいただき、それでもモヤモヤが消えないという場合に、あやしい民間療法たる「魔法の本棚」の利用もご検討ください。

 私はカウンセラーの資格など持ち合わせておりませんし、このプログラム利用者の方に、特別なアドバイスや講釈などたれるつもりはありません。いわば壁打ちの壁になるだけです。この件について、お前はどう思うか、と問われれば、それについて一応のお答えはしますが、ジャッジはしません。そのかわりに、奥底に隠れている、正体不明のモヤモヤに針をひっかけて釣り上げたなら、そいつを一緒に観察するぐらいのことはします。おっかない深淵も、一緒に覗いている人がいたら、多少はましかもしれませんし。

 前述の通り、個人的な対話を含む貸切営業は、創業当時からやりたかったことではありましたが、一昨年から、香美市主催ののイベント「かみめぐり」のプログラムとして、期間限定で提供してきました。「かみめぐり」での『魔法の本棚』は、参加者のお話を聞くよりも、お茶とお菓子つきの本棚ツアーという様相でしたが、今週末から予約を受け付けるいわば『改訂版 魔法の本棚』は、より深く、問いかけと傾聴に重きを置いたプログラムになっています。

 自分の内側にある何かを引っ張り出してほどいていく、こころの整体のようなものがこの『魔法の本棚』です。
 マッサージや美容院に行くように、また、ライブや美術展に行くように、気軽に参加していただければうれしいです。

ご予約はこちらから:https://airrsv.net/uzumakisya/calendar


ほんとうは話すよりも、聞くほうが難しいです。うっかりすると馬耳東風。


追記
 「魔法の本棚」のレギュラー化にあたり、今月に入ってからは、慣れない予約フォームの設定に悪戦苦闘。通常の貸切と並行して予約を受けたかったのですが、それができなかったので、インタビュー抜き、貸切のみご希望の場合、メールなどでお問い合わせください。

 


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