ベーシックタイトル

ベーシックインカムについてサクッと考えてポイッと投げてみる ~Vol.1~

生活保護制度廃止のインパクト

●はじめに

理念・概念なんかは一見素晴らしい提案のようではあるものの大枠の制度設計さえも提案されていないので積極的に「是」とすることなど出来ないというのが本音のところである。
大枠の制度設計案を提示したうえで個々の制度に対する問題点を解決する道筋をつけて貰えるならばそこでようやく「是」となる。
しかしながらはたして各問題点を解決し道筋をつけることが可能なのだろうか。
今回ここで自分なりの問題を提起していくが出来れば各種問題を解決する提案を頂きたい。
ベーシックインカムが問題をクリアして「是」となることを否定するものではないのだから。

●生活保護制度廃止と国民皆保険制度

ベーシックインカムを日本で導入する際に最も慎重にならねばならないのが医療制度の分野である。
国民皆保険制度は医療を受けるものとしては非常に優れた制度でありサービスとしては非常に質が高い、これを撤廃してのベーシックインカム導入は現行受けているサービスより質が著しく低下することは避けられない。

しかしながら昨今取り上げられているベーシックインカムにおける日本導入については生活保護制度を廃止することが前提となっているものばかりのように見受けられる。

生活保護制度は日本が誇る国民皆保険制度とも地続きになっており生活保護制度受給者以外は全ていずれかの医療保険制度に加入しなければならないことになっている。
(※実態として無保険状態の人が存在することはあるが)

このことから生活保護制度廃止を前提としているベーシックインカム推進論者には国民皆保険制度についてどのように考えているのかを明確にしなければファンタジー世界のお話しにしか聞こえないのが本音である。

そもそも生活保護制度を始め国民皆保険制度についても廃止・存続・改正の是非を明確にしなければ根幹となる財源問題も語れないはずである。

さて、生活保護制度を廃止した場合これまでの受給者は国民健康保険に加入してベーシックインカムから保険料や医療費を負担するのだろうか?

どなたかこの辺りの制度設計について考えている方がおられたら是非ご教示お願いしたい。

●生活保護費について

因みに生活保護費についてはご存じのとおり

扶助 + 加算額 + 一時扶助 = 生活保護費

の内訳から構成されており更に扶助費は以下の種類がある。

生活扶助…日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱水費等)
教育扶助…義務教育を受けるために必要な学用品費
医療扶助…医療サービスの費用
介護扶助…介護サービスの費用
出産扶助…出産に伴い必要となる費用
生業扶助…就労や生計の維持を目的に支払われる費用
葬祭扶助…葬祭費用
住宅扶助…家賃・間代・地代等の支払い費用

加算額の種類については以下の通り。

妊産婦加算…妊産婦に加算
母子加算…父母の一方若しくは両方が欠けているか又はこれに準ずる状態にあるため、父母の他方又は父母以外のものが児童(18歳に達する以後の最初の3月31日までの間にある者)を養育しなければならない場合
障害者加算…障害者手帳交付等対象者
在宅患者加算…在宅患者の療養専念等
児童養育加算…中学校修了までの児童を養育する者

一時扶助の種類については以下の通り。

被服費…保護開始時、出生、入学、入退院時などに際して、学童服・ふとん代・紙おむつなど必要不可欠の物資を欠いており、かつ緊急やむ得ない場合に対応
家具什器費…保護開始時、出生、入学、入退院時などに際して、炊事用具・食器代など必要不可欠の物資を欠いており、かつ緊急やむ得ない場合に対応
移送費…保護開始時、出生、入学、入退院時などに際して、交通費など必要不可欠の物資を欠いており、かつ緊急やむ得ない場合に対応
入学準備金…小学校・中学校入学の際、入学準備のために必要な費用

以上シンプルでないことは間違いないが逆に丁寧な支援をしているとも言えるのではないだろうか。

●生活保護制度におけるケースワーク

さらにややこしいと言われているのが支給対象となるまでの流れである。
端的に記すと

相談 → 申請 → 調査 → 決定(受給、却下)

となるがなかでも初期の「相談」段階と決定前の「調査」段階で時間を有することになるしかなり世帯の現状を晒さなければならない。
ここに申請受理、審査する側の恣意性が働くことから生活保護は最後のセーフティネットとして構造的に欠陥があるとの指摘がある。
その指摘は確かに完全に否定されるものではないが、対象者の正確な補足や恣意性の排除に関してはマイナンバー制度をフル活用させればほとんど解決することからその部分のみを捉えてベーシックインカムへと転換するというのは少々極端に過ぎるのではないか。

また、この「相談」「調査」の過程において対象世帯の現状を深く理解することが今後の支援を適切なものとすることが可能となるのである。
つまり対象世帯が生活をするうえで様々な要因で「困りごと」がありその要因が障害者の場合は障害者相談支援事業所、子供が学校関係で問題がある場合はスクールソーシャルワーカーなどその分野の専門職と連携しその「困りごと」の解決を図る「ケースワーク」を実施する際には必須となるのである。
もちろん支給額で月の家計をやりくりしなければならないのでその辺りの意識が低い世帯には生活設計の支援も実施する。

ベーシックインカムでは条件なしに現金を給付するだけなのでこのような世帯の把握は困難となり支援すべき世帯に対して「お金」だけ与えてなにも出来ない状態となる究極の自己責任世界となるのではないだろうか。
なお、生活保護制度は廃止するが既存のケースワーカーの仕事は残すとした場合は「申請」「決定」という割と簡素な手続き部分がいらなくなるだけで最も時間を要する「相談」「調査」が残るので結果的にベーシックインカムによる公務員人数の削減はほとんど成されない。

●まとめ

現在は少し以前よりも遥かに生活保護制度に対するネガティブなイメージ(なんなら生活保護バッシング)が付きまとっていることからそれを廃止するということだけで相当ポジティブなインパクトがあるのだろうが上記の通り簡単な問題では無い。
「国民皆保険制度」
「ケースワーク」
生活保護制度廃止については少なくともこの部分で実現性が高くメリットの大きい代替案を提示頂かなければベーシックインカムに対して「是」となることはない。


【ベーシックインカムサクポイ】今後の予定あくまでも予定
「高額、継続医療費問題」
「介護・障がい等サービス提供者激減問題」
「少子化対策として超絶悪手問題」

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