見出し画像

プアマンズ・オメガ

スピードマスターと言えばオメガの、いやスポーツウォッチの重要なアイコンだ。
その名の通りレーシングドライバーを意識して作られたこのクロノグラフはNASAの技術者たちの憂さ晴らしにしか見えない地獄のテストを潜り抜け、月に降り立つ最初の時計となった。

輝かしいエピソードを抜きにしても美しいスピードマスター
ホイヤーのカレラと同じく完成されたデザインだ

そんな誰もが知る名品だが、だからこそ今まで食指は動かなかった。
逆張りオタクの悲しさだ。出来るだけ人目につかない沼の底の方に溜まっているようなマイナーウォッチの方が遥かに魅力的に見える。

もちろんスピードマスターは素晴らしい時計だ。
しかし中古でも30万は下らない。オイソレとは手が出せない。
では3万円で買えるとなったら?流石に話は違ってくる。

理由はうまく説明できないが、心の底からワクワクする
そんな不思議な魅力がswatchにはある

オメガとスウォッチ
関係は至って単純。オメガはスウォッチグループの1ブランドだ。
オメガは歴史もネームバリューも十分な名門、スウォッチはプラスチッキーでチープな革命児。
対局に位置するような二つのブランドが同族とはいえ手を組んだ。
それはスピードマスターのデザインを纏ったバイオセラミックのswatchだった。
乱暴に言えばブランドの安売りになりかねない衝撃のコラボだ。

王道のスピードマスターとポップなスウォッチ
惚れ惚れする融合ではないか

発表されたのは11種類のカラーリング。
それぞれ太陽系の惑星の名前が付けられ、後ろのバッテリーカバーにはモデルになった天体が描かれている。

デザインはオリジナルの完全な模倣ではないが、誰がどう見ても立派にスピードマスターだ。
よく分かんないサステナブルなプラスチックで出来たケースに、クォーツムーブメントを収めた3万円のスウォッチ。
一生物とは程遠い消耗品。それと同時にちゃんとオメガなのだ。
月世界旅行やアポロ13号のような受難には耐えられないだろう。
でもそのような遠出は予定にないので問題ない。

さてこの意外すぎるコラボは当然大きな反響を呼んだ。
限定品ではないが、当分オンラインでの販売はなく、日本では東京と大阪にある3つのswatchストアで先行販売される予定だった。
しかし予想通り、いや予想を遥かに超える群衆がストアに殺到し販売は中止されてしまった。
ストア側の見通しの杜撰さも中々だが転売目的の連中も連中だ。数量限定ではないのになぜ?

まぁオンライン販売が開始されるのを気長に待つとしよう。
マーズは絶対に手に入れたいな。アラスカプロジェクトという限定版オメガにそっくりだから。

「貧乏人のための〇〇」とは大昔から使われてきた蔑称かつ敬称だ。
安価だが、ポルシェのような流麗さと速さを併せ持ったフェアレディZやRX-7はプアマンズポルシェと呼ばれた。
セイコーのダイバーズウォッチにはプアマンズサブマリーナという愛称もある。

このムーンスウォッチも同じ謗りを受けるだろう。
とても名誉なことだ。

もう既に3本もオメガがあるのに、これからもっと増えそうだ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?