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服作りにかかる「想定外の時間」

私は年間数百件の洋服づくりの相談をお受けします

その中でよく起こるのが「思った時期にローンチできない」というトラブルです。
ファッションアイテムの多くは季節に当てて発売されるため時期がずれてしまうと売り時を逃してしまったり1年近くローンチを遅らせる必要があったりします。

そのため「時期」というのはとても重要です。
私たちは本当に初めて服作りをする方には「契約後2.5-3ヶ月後にサンプルができると思ってください」とよくお伝えします。

ただプロの方だと1ヶ月くらいでサンプルを作ってしまいます。
それではその期間の差はどこにあるのでしょうか。


イメージ不足が原因


服作りビギナーの方の場合最初に持っているイメージが実物と乖離していることが多々あります。
例えば素材一つとってもスワッチ(数センチ角の生地のサンプル)をみたところでそれが洋服になった時の全体像をイメージすることができません。

重さやしわ感、着用したもののイメージがつきずらいためなかなか判断が難しかったりします。
他にも縫製仕様やディティールがイメージしきれておらず、企画書を作ってパタンナーに発注しようと思う手前で「やっぱりここを微修正したい」とストップしてしまうことが多々あります。

私が過去担当したお客様の場合はサンプルが出来上がった後に「ファスナーの長さを1cm短くしたい」という理由で再サンプルを作り「中綿を少し分厚くしたい」とまたサンプルを作り「ブランドネームのデザインを変更したい」とまたサンプルを作り、結局サンプル作成に1年、合計7回のサンプルを作ったことがあります。

このお客様の場合非常に強いこだわりがあったことも原因ですが、同時に「サンプルを見るとインスピレーションが沸いてしまう」というのも原因の1つではないかと思っています。

どちらにしても頭の中にあるイメージと、実際に手元にあるものが一致せず、それに納得できないためスケジュールが大幅にずれてしまうのです。

解決策としては2つ
・妥協点を決めること
・スケジュールに余裕を持つこと

だと思っています。

妥協点を決めること

頭の中にあるイメージは常に100点です。
何をしていても「作りたいもの」のイメージはどんどんと沸いてきます。
頭の中には世の中に存在しない素材や、立体では表現できない形やサイズ感などが存在します。

そしてサンプルになった時には「減点方式」になっていきます。
私はどれだけ行っても100点のサンプルは世の中には存在しないと思っています。(もちろんそれを追い求めていきますが)

そしてビギナーの方に多いのは95点くらいを合格点にしてしまって、結果として商品が完成しない、もしくは修正を繰り返してしまいます。

私としては65点くらいを合格点にしてまずは商品を完成させることが重要だと思います。
そして次のシーズンでは70点、その次は80点と精度を上げていくイメージです。

スケジュールに余裕を持つこと

あとはシンプルにスケジュールに余裕を持つことです。
もちろんスケジュールを決めることは重要です。
しかし全てがうまくいく前提でスケジュールを組んでしまうことでそれが遅れた時それ以外の宣伝や集客など全てに影響を与え金銭的なダメージを負うこともあるでしょう。
そのためスケジュールには余裕を持つことをお勧めします。

ビギナーの場合だと

サンプル作り2.5-3ヶ月
量産 60-75日
を持っていると余裕を持って動けるのではないでしょうか。

どうしてそんなに時間がかかるのか?というと
実際に弊社ではサンプルは2週間、量産は45日で納品しています。
しかし、ファスナーの手配が遅れてファスナーの納期に1ヶ月かかることもザラにあります。
量産しようとしたら微修正が入って着手が遅れることもあります。
スケジュールには全体的に余裕を持ちましょう。

微細な修正が原因で大幅にズレることも

本当に些細な修正が原因で納期が大幅にズレることもあります。
例えば「襟ぐりを少しだけ修正したい」というオーダーがあったとします。

修正作業自体は2-3時間程度で済むようなものです。
しかしプロジェクトの裏側では他のプロジェクトが複数動いています。

パタンナーのスケジュールも埋まっているので順番待ちの最後に修正スケジュールを入れます。
すると本来数時間でできる修正が1週間後に完成するということが起こるわけです。
そして同時にそのパターンを待っていた裁断や縫製も全て一旦スケジュールを解除します。

そしてパターンが完成したら改めてスケジュールをおさえていくので裁断着手自体がさらに1週間遅れたりします。
同じことが「パターン」「裁断」「縫製」「検品」「出荷」などで起こっていきます。
全てのスケジュールの最後に回されていくのです。

もちろん現場もそれをなんとかしようと差し込んで早く生産しようとはしますが繁忙期でこれ以上スケジュールを動かせない!という場合は些細な修正が大きなスケジュールの変更を生む場合があるのです。

完璧を求めず、全体最適していく

このようにイメージ通りのものがイメージするスピード感で作られるのはとてもテクニックが必要です。

しかし、そんなことを言っていてはファッションビジネスが成立していきません。
先も書いているようにまずは65点くらいを合格点にして、完成させて売るところまでをやってみる必要があります。

もちろん趣味であれば100点を追い求めてもいいでしょう、しかし少なくとも服作りを通じてお金を稼ぎたいとか生業にしたいと思うのであれば、

コスト、時間、クオリティのバランスなど全体最適を見ながら前に進むことをお勧めします。

ヴァレイでは服づくりの相談の他にも経営やマーケティングなどの相談もお受けしております。
ぜひお困りの方はこちらの相談フォームよりスケジュールを確保していただけますと20分間の無料相談を受けていただけます。

https://app.spirinc.com/patterns/availability-sharing/4fRgJ-UJ4Tc4EBhbD99nU/confirm

ぜひ皆様の服作りやものづくりがうまくいきますように。


HOPE

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