メイもケンもリュウもテレビを観なくなって久しい。
テレビといえば、その昔は家族団欒の象徴だったけど我が家には今も昔も「団欒」はない。
幼い頃は「ポケモン」を子どもたち３人が並んで観ていたが、そんな微笑ましい後ろ姿ももう見ることはない。
それぞれの部屋にこもってそれぞれが何かを観ている。

月に１度、私はケンの通院に付きそう。
車で片道30分、往復の1時間はケンとたっぷり会話をする時間になる。行きも帰りもケンが隣で爆睡している日もあるが、今回の通院道中は話がはずんだ。テレビを全く観ないケンだが時事ニュースは私よりも詳しい。支持政党の話もする。
突然、
「母さんがもし政党をたちあげるとしたら、なんていう名前にする？」
と聞かれた。しかし、ありきたりな名前しか思いつかなかった。困った私が
「ケンはどういう名前にするの？」
と聞いたら、待ってましたとばかりに

「当たり前のことを普通にする政治を目指して

＜いいんだよ、こういうので党＞

と笑いながら答えた。なかなか「当たり前のことを普通にする」のが難しいことを身に染みていそうなのに、そんなこと考えているんだと私も釣られてしばらく２人で笑った。笑いながら
「いいんだよ、こういうので。」
とケンが言って、また笑った。

ニート政治家の話が終わった後に
「YouTubeでは最近何が面白いの？」
と聞いてみたら
「にじさんじを観てる」
と教えてくれた。
「にじさんじ」はヒカキンさんのような生身の人間ではなくビジュアル設定されたキャラクターが配信する、いわゆる「Vチューバー」と言われるものだということは、私も知ってる。観たことはないけど、主にゲーム配信などしながら雑談してるというイメージがある。
過去に、King Gnuの井口さんが有名なVチューバーと一緒にゲーム配信をしているのを視聴したことがある。ゲーム内容はわからなくても、ゲームを真剣にしながら雑談するという「素がでる」シチュエーションが面白いのは、昭和の私でもわかった。
Vチューバーも人気がある人はゲームは上手いわしゃべりは面白いわビジュアルキャラクターは美しいわで、なかなかの職業とお見受けした。中には歌も上手い絵も上手いと何足ものわらじを履いて活躍している人もいる。

ケンの言う「にじさんじ」には、たくさんのVチューバーがいる。
「誰が好きなの？」
と聞いたら
「アンジュ」
と教えてくれた。
「女の子？」
「うん、アンジュ・カトリーナっていう子」
「どんな子？」
「ショートヘアで声が低い」

そうか、初めてケンの好きな女性のタイプを聞いたような気がした。
さらに
「俺、声が低くて背が高い女の子が好きなんだよ」
と続いた。
　
「うわーーーっ！お父さんと一緒だぁぁぁぁーーっ！！」
驚きを隠せない。こんなところにもDNA。（妻の私は中肉中背だが）

「大学生の時、俺が１度だけ告白した女の子がいたんだけど覚えてる？」