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(50)強迫性障害の一例


最近、ケンが動くようになってきた。
「寒い寒い」と言いながら中庭を通って母屋と離れを行ったり来たりできるようになってきた。
そうなると、リュウとニアミスする危険も高まるがお互い相手の動向を遠くから観察しながら暗黙の了解で譲り合っている。
もはや、なんで顔を合わせられないのかわからないくらいに2人は気遣いあっている(笑)
 
強迫性障害のケンは自分のスマホを触れなくなって5、6年くらい経っている。その間に新機種に買い替えるという荒治療(?)にも挑戦していたが、新しい機種でも回復できず3年くらいは未使用のまま携帯代と通信契約料を払い続けていた(親が)。
それは大学生の時に通えていないのに授業料を払っているのと一緒で


突然通える日がくるかもしれないという本人の希望と親の淡い期待が交錯する地獄である。
ちなみにケンは大学の合格祝いに買ってもらったiMacが自室にあるがそれも触れないし、他の誰かが使うのも禁止にしている。とにかくいろいろ止まっている。
 
私の母が癌治療で自由に動けなかった時に、簡単なゲームをいくつかダウンロードした状態でタブレットをプレゼントしたことがあった。気分転換にでもなればと思ったが母には合わないようだった。もったいないからと返されたので、それをケンに使ってみるかダメ元で聞いてみた。なんと、ケンはあっさりと受け取って使い始めた。
 
その頃、私はまだケンの病状をよく理解できていなかった。ケンは、自分の大事なものを触れないが自分のものじゃなければ触れる。なのでリビングルームでおばあちゃん(私の母)のタブレットを使うのは全然問題ないようだった。

スマホもないPCもないネットの禁欲(?)生活からタブレットを手に入れたケンは水を得た魚のようにイキイキし始めた。とは言っても、ソファに寝そべっているだけの生活状態は変わらない。
ただ通院の日もタブレットのおかげで待ち時間のストレスはほぼ0になった。とてもいいことだ。そんな生活が1年ほど続いた後、そのタブレットにもケンの強迫観念が発動してしまった。
ネットができなくなったケンは鬱状態になり、見かねたダンナが自分のタブレットを差し出した。しかし、そのタブレットも数回使って強迫観念が発動してしまった。
 

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