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ラストノートを求めて私達は。

最後のnote、なんて不吉な話ではなくて。私とはまったく無縁の香水の話です。ちなみにいかにも知ってそうに書いていますが、全て今調べながら書いているので完全に無知です。あしからず。


さて、香水はアルコールに色んな香料を混ぜて作ります。そこに閉じ込められていた香りが、アルコールの揮発にともなって徐々に香っていきます。その経過を大きく三段階に分けて、トップノート、ミドルノート、そしてラストノートという表現をして、香りが変わっていくのを楽しめるようになっています。

ところで、このラストノートという言葉の意味、少し気になりますよね。ならない?

英語でlast noteと表記します。ノートというのは、このnoteや文房具のように紙の束や文書をイメージしますが、そこに書きつけるのは情報です。ノートをとる、というのは情報をまとめるということですね。他には音や音符という意味もあります。これも音楽を構成する情報です。そうです、香水も香りの情報となりますので、このノートを当てます。香調という漢字ならなんとなく理解できるかと思います。

そして、lastは最後とか終わりとか、そういう意味合いをイメージされることも多いと思いますが、継続する、続いていく、というような意味もあります。語源は違うようですが、同じ表記な不思議な英単語です。

ん、じゃあどっちの意味のlastなの?
まあいいか。


前述の通り、香水には3段階の香りがあるわけですが、その香りをどのタイミングで香らせるかというのが腕の見せどころかもしれません。デートのシチュエーションがイメージしやすいので、それに沿ってちょっと考えてみましょう。ちなみにここは完全に私の主観です。

最初に香るトップノートは軽めだったり爽やかな柑橘系の香りが相性がよいらしいです。付けた瞬間すぐに香りますので、相手に会う直前につけてもいいかもしれませんね。華やぐ第一印象を際立たせるのはありだと思います。

トップノートの後のミドルノートが香水のメインです。この香りをどのタイミングで香らせることが出来るかがポイントなのかも。ふとした時に香りの印象が変わっていると相手はぐっと惹かれるかもしれませんね。

デートを終えて別れ際、距離を縮めたその時にそっと香るラストノートこそが、余韻であったり記憶に残る香りとなるのでしょう。それがいつまで経っても忘れられないものになったり昔の記憶を想起させたりするのは、少し前に流行った曲でも歌われていました。


香水の付け方、なんていうのは小説やドラマの中でも講釈を垂れるキャラがいたりします。やれ、腕の付け根につけろだの、首筋につけろだの。どれも間違いではないのでしょうが、香料の揮発により香ることと、それに段階がある知識さえあれば、これが絶対的な正解ではないことは分かります。同時に正解なんてないことも分かります。だって、わざと揮発を遅らせることだって出来るのです。コントロール出来るのです。ノート、情報をどれくらい提供するかということは。

これって、人間関係にも言えることなんです。人とのコミュニケーションにおいて、どれくらいの情報を出していくか、匂わせていくか、というのもコントロール出来ることですよね。

やはり影響が強いのは第一印象でしょう、そこから時間が経つことで自然と出していく情報が増えていく。あまりにもトップノートの時間が長いと、より本質に近づくミドルノート以降を香らせた時にその差に驚かれてしまうことだってあるでしょう。かといって、いきなり重く濃厚な香りを出すのも気に入ってもらえない可能性もあって抵抗があるものです。

人間関係の構築にも正解なんてありません。どのようにしていっても良いわけですが、ことネット上の関係性というのはトップノートの強くハッキリとした香りが求められがちな気がします。そして、その関係性を深めるのが速く終焉を迎えるのも早い傾向にあるのだとか。これはきっと、トップノートを香らせ続けるために何度も香水瓶を振り撒いてすぐに空っぽになってしまい、そして後に続く香りとの違和感がそうさせてしまうのでしょう。あるいは、その関係性に熱が無く、香りが変わっていかずに飽きてしまうか。いずれにせよ上手くコントロール出来ていなかった、ということかも知れません。

これは自分の香りを出すことの話ですが、コミュニケーションは双方向なものですから、相手の香りを嗅ぐことについても同様ですね。

ラストノート、別名ベースノートは時間経過でしか香りません。インスタントでファストな人間関係では、せいぜい刺激が強いトップノートくらいしか嗅ぐことは出来ないでしょう。また、そこに熱の伴わない冷めた関係では揮発は進まず、いつまで経っても変わりばえはしないでしょう。

最後に香るその人の本当の香りを知りたい私達は、何時までも漂う残り香を求める私達は、丁寧に時間をかけてその思いを熱に変えて、その温度をもってゆるやかに揮発し香る、その豊かな調べにこそ満たされるのでしょう。


だからもっとあなたのnoteを。



記事を書くきっかけになった曲です。透明感のある声と穏やかでいて力強いメロディと余韻に惹かれました。気に入っていただければ。


余談。
文章における余韻の表現の一つに文末の省略があります。読み手が好きに文章を補うわけなので人によって感じ方が異なり。うん、それはとても趣深い。



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