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第96回米アカデミー賞授賞式/感想文②:難しいテーマへの挑戦

記憶が鮮明なうちに感想文の後半を書いておこうと思います!


視覚効果賞!「ゴジラー1.0」おめでとう!

今年のアカデミー賞での話題と言ったら、まずはこれ!「ゴジラー1.0」のVFX部門受賞の快挙👏

この部門の過去の受賞作品がすごい。スターウォーズ、スーパーマン、エイリアン、ET、ターミネーター、ジュラシックパーク、タイタニック、マトリックス、ロードオブザリング、アバター!

そこに日本制作の「ゴジラ」が並んだ!!!本当にすごい事です。

私もノミネートが発表された時、YouTubeでのライブ配信で見て大興奮!
それ以降も、候補者たちが集まる昼食会や、部門ごとの候補者のショーケースを動画で見ました。

同じ候補作の中で、優勢と言われていた「The Creator」も見ました。

こちらは渡辺謙さんが大事な役どころで出演されていて、大変すばらしい映像だったと思います。特にヒューマノイドの姿がインパクトありました。

だけどストーリーの掘り下げ方にどうにも納得できず(敵に狙われるのが分かり切っているAIの姿を子供にするなんて残酷だし、創造者の本拠地がチベット仏教の寺院みたいなのも意味不明だし、最後に敵に打ち勝ったけどそれだけで何ひとつ問題解決に向かっていないし)一つ一つの設定が安易すぎる気がして、これがアカデミーで受賞したら、ちょっとガッカリだなぁと・・・

それに対して「ゴジラ-1.0」は戦争直後の日本を舞台にしたところがすごく斬新で、そんな厳しい中で必死に戦う人々の姿に日本人らしさが色濃く感じられたし。何よりVFXが当時の日本を見事に再現し、ゴジラのリアリティにも凄みを与え、観客を物語の中に没入させる素晴らしい効果を生み出していました。
海外の多くの人たちが熱狂したのも納得で、アカデミー賞を受賞するにふさわしい作品だったと思います。

なので授賞式でシュワちゃんが「ゴジラ」って口にした瞬間、私も画面の前で飛び上がるくらい嬉しかったです。
山崎監督、阿部プロデューサー、白組のみなさん、出演者・スタッフのみなさん、本当におめでとうございます。

長編アニメ映画賞!「君たちはどう生きるか」おめでとう!

今回の宮崎監督の復帰作は、私の勝手な想像ですが、これまで”少女"の物語が多かったので、"少年"の物語も一つしっかり作っておきたい、というお気持ちがあったのでは・・・なんて思っています。

米津玄師さんの作られた主題歌「地球儀」も素晴らしくて大好きです。

前作の「風たちぬ」で堀辰雄の同名の小説と、堀越二郎の半生、2つを絡み合わせていたように、「君たちはどう生きるか」でも吉野源三郎の同名小説と、ジョン・コナリー作の「失われたものたちの本」の2つを絡み合わせていて、なかなか難解な物語。これが海外の観客にどう見えたのかなぁと気になるところではあります。

なんとなくですが、先人が作った理想の塔をぶち壊し、あえて困難な世界を選んで、未来を自分自身で築き上げていくことを決意する少年の話、みたいな感じでしょうか。ナウシカの原作漫画の結末に似た印象を受けますね。

二人の母親との関係性という面においても、深いものがありました。同時に、ジブリの過去作品へのオマージュと思われる映像表現も多々あって、今回は特に「宮崎監督のルーツと集大成が描かれている」と、海外の人たちも感じ取ったかもしれないです。

NHKの番組「プロフェッショナル」では、主人公の大叔父が高畑監督であり、青サギは鈴木プロデューサー、主人公が宮崎監督、という裏設定だったと語られていて、宮崎監督の私的な側面が色濃く投影されたストーリーであるとのことでした。とは言え、宮崎監督の他の作品もそうであるように、"人生の中の一つの通過点"を描いているなぁという風に見えて、それは普遍的なテーマに思えました。

こんな映画を作られてしまったら、他のどんな作品も、かなわないと思います。制作に7年かけたと宮崎監督が言ってましたが、まさにそのままの迫力がありました。

宮崎監督、鈴木プロデューサー、ジブリのみなさん、声優・スタッフのみなさん、おめでとうございます!

国際長編映画賞へのノミネート!「Perfect days」

米アカデミー賞の場合、ノミネートだけでも価値があります。
日本大好きなヴェンダース監督と、役所さんをはじめとする素晴らしい日本の俳優のかたがたによって作られたこの作品が、高い評価を受けたことは純粋に嬉しいです!

主人公の平山は、華やかな世界に背を向け、社会の底辺に近い質素でささやかな生活の中に身を置いています。そこでなら自分は完璧な幸せを見出せると考えていましたが、しかし欲を抑えた善良な暮らしにも、自分の思い通りにならない事象は起こり、怒りやイライラの感情が芽生えてしまう。
どんなに経験を重ね、多くを諦め、全てを達観できたと思っていても、自分の愚かな感情を取り払うことはできない。初老を迎えようとする男性の、そんなもどかしい心の葛藤が描かれているように感じました。

難しいテーマへの挑戦

今回の米アカデミー賞のノミネート作や受賞作を見ていくと、「難しいテーマへの挑戦」が、評価されていると感じました。

ノーラン監督の「オッペンハイマー」や、スコセッシ監督の「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」はまさにそう。「関心領域」「落下の解剖学」「アメリカン・フィクション」は、テーマへの切り込み方が鋭かった。「哀れなるものたち」は斬新な設定と世界観の見せ方が素晴らしかったです。

そんな良作が肩を並べる中、日本の「ゴジラ-1.0」と「君たちはどう生きるか」が受賞できたということは、素晴らしい快挙だと思います。

ちなみに「マエストロ」は世界的なメイクアップアーチストのカズ・ヒロさんも参加されていて私も注目していたのですが、その高度なメイク技術でバーンスタインの風貌を再現しすぎてしまったかもしれないですね・・・
「バービー」は2023年最大のヒット作でしたが、今回の他作品の重厚さに圧倒されてしまいました。

I'm just KEN!

そんな中、今年のアカデミー賞授賞式のステージを盛り上げたのは、なんといってもライアン・ゴズリングの「I'm just KEN」のパフォーマンスでした!

特にラ・ラ・ランドで共演したエマ・ストーンのところへ行って一緒に歌うシーンが、とっても好きでした。

この時のピンクのキラキラな衣装は、グッチの特注スーツだったそうです。

映画「バービー」のケン役がライアン・ゴズリングに決まった時、オリバー・ストーン監督が「彼はもっとシリアスな映画に出るべきだ!」とコメントしたと話題になったけど、ライアンは見事にその役を演じ切り、主役を食う勢いで一番の見どころを作り上げました。その後、ストーン監督も作品を見て、自分のコメントについての謝罪をしたとのこと。

まさに難役をこなしたライアン・ゴズリングの評価が、ここで爆上がりしたことは間違いありません。

美しいドレス

女性目線の話をすると、「哀れなるものたち」の中のエマ・ストーンのコスチュームもどれも美しくて、目を奪われました。今回、ホリー・ウォディントンが衣装デザイン賞を受賞。

私はあらすじを読んで、その内容の過激さにこの映画を見れずにいるのですが、でもコスチュームは見たいので、配信が始まったら勇気を出して見ようと思っています。(写真を貼り付けていて思い出したんですが、息子の小学校の時のクラスメイトの女の子が、Poor thingsのエマ・ストーンによく似てました。笑)

それからアカデミー賞授賞式の会場では、アニャ・テイラー・ジョイのクリスチャン・ディオールのドレス姿が、素晴らしかったです。クリス・ヘムズワースにエスコートされての登場で、とっても豪華!

「いつかアカデミー賞授賞式に出席することが出来たらお父さんを連れてきてあげる」という約束をしていたそうで、こんな微笑ましい1コマも。

プレゼンターとして呼ばれる際に「ピーチ姫」と紹介された彼女。個人的に今回のベストドレッサー賞に選びたいと思います✨

良作揃いの授賞式

今年はとにかく良作揃いで、授賞式をすごく楽しく見ることが出来ました。
特に「オッペンハイマー」「関心領域」「ホールドオーバーズ」は観たいと思いました。あと「ラスト・リペア・ショップ」はディズニー+で既に配信されているので、観る予定です。

以上、96回米アカデミー賞授賞式の感想でした!

※「第96回米アカデミー賞授賞式/感想文①:進行が失敗したよね、と思う件」はこちら






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